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2019年夏、浜通り取材 東電ヒルズ

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田村市のずさんな管理状態のフレコン置場に溜息をつきながら、国道288号を抜け県道35号を通り、大熊町役場へ。今年4月に役場周辺の避難指示が解除されたばかりだ。

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役場前では復興住宅が建設中。一体どれだけの人が住むのだろうか。

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総合案内板。「授乳室・おむかえ室」とあるが、ここで授乳するのは東電社員の家族だけだと思う。

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富岡駅と大熊町役場はバスで繋がっている。いつかこの周辺を歩いてみようかと思った。フレコン置場も移動され、特に見る場所もないと聞くが。

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本当にいい天気で、山も美しい。しかしそれは放射能が見えないからだ。ただ、切ない。

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立派な役場だ。違和感ばかり。この役場の建設に27億かかったという。建物の中は、新築の家の匂いがした。

避難指示解除され新しい役場は出来たが、線量の高い場所で働きたくないと何人もの若い職員が辞めたと聞く。この役場自体は新設だし除染もされてるので線量は0.1〜0.2μSv/h程度だが、この周辺が問題だ。

「放射能安全」な人たちは避難指示解除を手放しで喜ぶし、解除=安全と勘違いしてまるでそれだけで復興したかのように騒ぐが、僕は見切り発車としか思わないし、新たな線引きは新たな分断を生むだけだ。避難者への住宅手当の打ち切りなどが加速するキッカケにもなり、精神的にも追い込むことになる。

地震で壊れてもいない家や先祖代々の土地を原発事故で突然失い、大切な家族やペットを関連死という形で失った人もいるだろう。避難先では後ろ指を指され肩身の狭い思いをしてきた人もいるはずだ。そんな人をさらに「賠償金でパチンコやって」「立派な家建てやがって」「とっとと自立しろ」等々、同じ福島県民がセカンドレイプする。複雑な思いがあることは僕も話を聞いて知っているが、この話を聞いた僕の絵描き仲間は、とてもシンプルな答えを返した。

「被害者の人が何をしようと勝手じゃん。だって家をなくしたんだよ? そんな人にブツブツ妬みみたいなこと言って、バカじゃないの!?」

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役場前に整備された芝生。福島第一原発からは今も震災前の1ヶ月分以上の放射性物質が1日で出続けていることを知っているので、僕はあそこに寝転がろうとは思わない。

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役場内には町の模型があった。これを見ると、新庁舎は町の中心部とはかけ離れた場所に作られたことがわかる。

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役場を出て東電ヒルズを横目に大熊食堂へ向かう。

東電ヒルズとは、避難指示解除前から特別に東電社員だけが暮らしていた社宅のことだ。

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役場前に建設中だった復興住宅と比較して、明らかに豪華な家屋。地元の人に言わせれば、ここに住む人は「生贄」だという。豪華な家に住まわせて、生贄のご機嫌をとる。

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大熊食堂。立派な建物だ。

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値段も安く、少し食べてみたいと思ったが、結局やめた。東電の社員が何人も食事に来ていた。

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イノシシ注意!

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複雑な気持ちで大熊を後にする。なんか疲れたよ

ちなみに、役場周辺には飲食店は大熊食堂のみ、買い物はプレハブのコンビニだけ。医療機関はどこにもない。

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これで復興したとかスタートラインに立ったとかいう人は、まずお前が住んでから言えと思う。

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富岡漁港へ。観光操業が再開されたとニュースになった。つまり海釣りをする人だけ、船に乗せて出港する。釣った魚は食べるのだろうか?

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絶景。だからこそ「海を返せ」と言いたくなる。

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漁港から北の眺め。

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漁港から南の眺め。福島第二原発がくっきり見える。これも廃炉。何年かかるだろうか。

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この後、Sさんにリクエストして、再び6国を北上して帰還困難区域に入った。

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この場所はいつも1.998μSv/hと表示されている。何回通ってもいつも同じだ。ちゃんと測ってるのか? 噂では、電光掲示板がある場所(空中)の空間線量が表示されていると言われているが。

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数秒のタイムラグがあるとは言え、車内ではこの数値。その電光掲示板は信用しない方がいいと思った。

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双葉厚生病院。この近くには特養もある。避難は辛酸を舐めたことだろう。

ちなみに、避難の過程で多くの死者を出した双葉病院は別の病院のこと。

ここまでで折り返し、大熊町長者原の福島第一原発が最も良く見える場所へ戻ることにする。

<続く>

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