2019年4月富岡浪江取材 なかったことにされないように<終>
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<続き>
夜ノ森の桜まつりの会場は、僕にとっては堪え難い空間だった。福島県内に住む人にとっては、「もう8年も経ったのに、いつまで放射能言ってんだ」と思うのかもしれない。しかし東電福島原発事故は全く収束の目処は立っていないし、周辺の汚染も酷いものだ。そして、その原発事故ゆえに他の東北の被災地と比べて圧倒的に何も進んでいない。こんな状況で、1年に1度だけだからと言って、震災直後のままの 体育館を片付けもせずにただ荒らし、その脇で祭りに興じるなんて、僕にはその神経が理解できない。
今年度末の常磐線全線開通、それに併せた夜ノ森駅周辺の避難指示解除に向け、富岡第二中を始めとしていくつかの学校は取り壊されるという。最近のこの報道を目にして、なるほど、だからあの体育館はそのまま…というより遠慮なく荒らせたのか、と合点がいった。
ツイッターで目にしたが、今も週末は定期的に富岡第二中の校庭でイベントが催されているという。福島県外では立ち入り禁止になる空間線量のエリアに、老若男女が集い“復興”イベントごっこ。悪いことは見ないようにして、復興したふりをする。それが「富岡は負けん」なのか。僕には、負けて逃げ出したようにしか見えない。
すっかり心が折られて、今はなくなってしまった夜ノ森駅跡地を線路の反対側から見るのを忘れてしまった。時間があるにも関わらずさらに歩き回る気力もなく、なんとなく撮影しながらとぼとぼと駅へ向かっていった。
夜ノ森の喧騒をよそに、車は通っても町なかは人気もなく、廃墟と更地が並ぶ。人のいない農業の行われていない里山はただひたすら寂しい。
土を入れ替えて、問題なく農業再開!という人がいるけれど、話はそんな簡単じゃない。何十年もかけて培ってきた土が汚染され、全てはイチからやり直しになってしまった。
この家の人たちは帰還している。立て替えた様子もないけれど、屋内の空間線量はどうなってるんだろう。浪江の知人の家は、家の中でも0.5μSv/h以上あった。それは、放射線管理区域で寝泊まりするということだ。
(里山は美しいのに)
あの森の中の線量はどうなってるだろう。除染なんて出来ないはずだししていないはずだ。
1日目に引き続き、宝泉寺を再び訪れた。
優しい顔。ささくれ立った気持ちが少し癒された。
(鉄塔)
(鉄塔。福島で作った電気が首都圏に運ばれる)
(電線)
(置き去りにされた車。多摩ナンバーか…)
(家はしっかりしていても、こういうところで廃墟とわかる)
(ミラーが傾いたまま)
富岡川へ戻ってきた。桜は綺麗だけど、悲しいね。
「客神」お客様は神様か。しかしこの店に神様が来ることは、もうない。
(屋根が倒壊した家)
(廃墟越しに東電タワーを見る)
“復興”してますねえ!
“復興”してますねえ!
“復興”してますねえ!
“復興”してますねえ!
都合の悪いことはフレコンバッグに詰め込んで捨てちまえば復興さ。
誰もいない学校に桜が咲く。
富岡駅から。お土産を買ってさっさと帰ろ。
いわきから、いつもより一本早い特急に乗って帰る。
目の前には、南相馬で地震と津波と原発事故に被災した女性を垂らし込んで下半身までずっぽりハメ倒した元東電復興本社代表石崎氏が教鞭をとる、東日本国際大学の看板が見える。東電ブランドは何をしても許される。
「僕は邪魔者なのだな」
もう二度と、桜まつりを見に行くことはないだろう。なんだか今回は自分がとても惨めに見えた。そんな打ちのめされた気持ちさえも、しっかりアウトプットしたいと思った。
いつもより一本早い電車で、帰りは特急ひたちに乗って帰った。土産で買った酒が苦かった。
最近、「デマ特高警察」ともいうべき「放射能安全隊」が、富岡駅前でだけやっすいエアーカウンターSを引っ張り出して「0.05」という数値を撮影し、「富岡の空間線量は低い」「富岡は復興した」と意図的にデマを垂れ流している。ろくに自分の足でさくらモールとみおかまでの1km程度の距離を歩くこともなく、「デマバスターがデマ」を体現していて非常に滑稽だ。しかし、滑稽と笑っていられる問題ではない。そうやって虚偽の復興が強調されることで、未だ空間線量も下がらず、ろくにインフラ整備もされずに、帰ることを躊躇っている避難者に対してばかり余計なプレッシャーがかけられる。首都圏や関西、九州に住むような現場を見たことのないネットトロールによって避難者が不当に追い込まれるようなことなど起きてはならない。
僕はこれからも福島に足を運びそこで見たものを作品にしレポートをしできるだけ多くの人に伝え、“復興支援”をしていきたいと思う。
なかったことにされないように。
<終わり>
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