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早朝を味わう
朝6時半
通勤のため外に出る
冬のこの時間はまだ真っ暗だ
朝だというのに電気をつけなければ何も見えないほどの暗闇
これから仕事。今日も忙しいのか…と少し憂鬱な気持ちも相まって
その暗闇が一層濃く感じる
ある日の早朝
今季最大の寒波といわれるような気温の中外へ出る
これまで真っ暗だった早朝もほんのり明るみを帯びてきた
気温とは関係なく日の出は早くなり
一刻一刻春が近づいてきている
それをわかっているのか
少し前まで聞こえなかった鳥たちの鳴き声が聞こえるようになった
その日は雲一つないきれいな空だった
そびえたつ大きな山々の向こうに太陽が隠れているのだろう
東の空はだんだんと黄味がかり
黄色と濃い青色とのぼんやりとした境界が高く昇っていく
西へ方向転換すると
満月がまだ夜のごとく爛々と輝いている
太陽の代わりにこの世界を照らしている
美しく黄色く輝く月
この世界唯一のその光になんだか吸い込まれそうになる
もうすぐあの東の山から太陽の日差しがばっと差し込むだろう
太陽の光がこの世界を照らす瞬間を
月の光が役目を終えたかのように白くなる瞬間を
この目で…
あぁ
あと何分待てばこの目で見られるだろう
もし許されるのであればこのままじっと待って
その瞬間をこの目に入れたかった