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精子と卵子には、宿命的ともいえる大きな違いがあります。 ひと言でいえば、「精子は年をとらないが、卵子は年をとる」ということです。 しかし、このことを知らない女性がとても多いのです。 女性は生まれたときから、左右の卵巣あわせて200〜300万個の原始卵胞と呼ばれる、卵のもとのような細胞を持っています。 その数は出生時より、母親の体内にいる胎生期8カ月頃が一番多いともいわれています。 そして生まれたときから、その原始卵胞の数は、時間とともに確実に減少していくのです。
卵子は、卵管の途中に位置する卵管膨大部という場所で、精子との出会いを待っています。 卵子の近くまで辿り着ける精子は数百程度。 ところが、卵子という本丸を守るべく、まわりを「顆粒膜細胞」という細胞が幾重にも取り囲んでいます。 そしていわば最後の闘いともいえる、この顆粒膜細胞の間をかいくぐって、最初に辿り着いた精子のみが卵子と出会うことになるのです。 数億の精子から最後のたった1匹の精子が生き残るという、熾烈なサバイバルレースが、女性の体内で展開されているわけです。 精
妊娠とはどういう現象なのか、少し詳しく説明してみます。 私達は結婚して避妊をしなければ、そのうち妊娠する、そうしたことを当然のことと思っていますし、多くの人は実際そのようになっています。 しかし実は女性の体の中で、神秘的というか奇跡的な出来事の連続の結果として妊娠に至っているのです。 妊娠するためには、精子と卵子が出会うことが前提となります。 それは男女がセックスを交わすことによって可能となります。 通常1回のセックスで、女性の膣の中に1〜3億という精子が放出されま
ノベルジンというお薬を使いだしてから、「不妊ルーム」で妊娠される方がとても増えています。 そのお話をしたいと思います。 ノベルジンは亜鉛製剤で、体内の亜鉛を増やすお薬です。 この薬はウィルソン病という遺伝性疾患しか使用が認められていませんでした。 2年前に、「低亜鉛血症をともなう不妊症」に適用が拡大されました。 私は内科医ですので、早速そのことに注目し、「不妊ルーム」に通院されている方の血中亜鉛の濃度を調べてみたところ、とても低亜鉛血症の方が多いことに驚きました。
セックスが成立しないことには、自然妊娠はあり得ません。 カップルが子どもを望んでいても、たとえば夫婦関係自体はなんら問題がないのに、セックスそのものに興味を失って、セックスレスになっているカップルも少なくありません。 また、セックスは成立しても、射精に至らなければやはり妊娠に至りませんので、こうしたカップルの悩みは深刻だと思います。 私は、このような悩みで相談にこられるカップルには、人工授精を積極的に取り入れるようアドバイスしています。 なぜならこうした状況の場合、セ
前回、前々回と「不妊ルーム」でおこなっている”卵巣セラピー”について書いてきました。 こうした卵巣のコントロールがうまくいっている方が、体外受精にトライすると、よく妊娠されます。 不妊治療の先生は、女性の卵巣・子宮よりも、卵巣の中の卵胞、そして卵子にのみ目がいっているように思うのです。 不妊治療、とりわけ体外受精をはじめとする高度生殖医療は、私の目から見ると、”木を見て森を見ず”の医療になっているような気がしてなりません。 体外受精は高額な医療であるにもかかわらず、妊
不妊治療にエントリーして一番難しいのは、いつそれをやめるかということです。 おおまかな言い方をすれば、不妊治療に100人エントリーすれば、半数は一般的不妊治療(タイミング法〜人工授精)で妊娠できると思います。しかし、体外受精などの高度生殖医療に進んでも、赤ちゃんが授からなかったというカップルも多いのです。 私は、体外受精にエントリーして10回以上も体外受精をおこない、本当に大きなお金を使ってきたカップルをたくさん見てきました。中には「それでもあきらめきれない」というカップ
不妊治療のドアをノックしたカップルに、とても大切なアドバイスがあります。 不妊治療をはじめると、妊娠というものが不妊治療の延長線上にしかありえないと思ってしまいがちです。 しかしそれは、本当に誤った考えなのです。 両方の卵管が閉塞している、あるいは男性の側に重度の乏精子症、精子無力症があるなどという場合を除けば、多くの場合、不妊治療は自然妊娠の可能性を否定しません。 また、タイミング法であれ、人工授精であれ、体外受精であれ、それは妊娠の可能性を高める医療ではあっても、
「不妊ルーム」を開設して4〜5年を経たあたりから、第一子を授かった女性が、二人目を希望して来院するケースが増えはじめました。 しかし、一人目を20代で産んでいるのであれば、二人目で苦労するケースはそんなに多くないのですが、1人目を30代半ばで産んだ人が数年経ってから再度来院されると、苦労する「二人目不妊」が多いのです。 二人目不妊の原因① 卵子のエイジング 一人目が産まれると育児ということがはじまりますから、多くのカップルは二人目どころではなくなります。そして、子どもがヨ
不妊治療は、第1段階の「タイミング法」から、第2段階の「人工授精」そして、第3段階の「体外受精」というように階段を上っていく、ステップアップ療法が一般的です。 しかし、不妊治療をいったん休んでみる「ステップダウン」もまた、不妊治療です。 タイミング法から、第2段階の人工授精をスルーして体外受精に進んだり、不妊治療をいきなり体外受精からスタートすることを、私は「ジャンプアップ」と呼んでいます。そして、ジャンプアップということを私が提案するに至ったのには、根底に卵子のエイジン
政治の世界で、マニフェストという言葉が一般的になりました。 マニフェストは「宣言」と訳されます。そして私は、医療の世界においては不妊治療という分野が、マニフェストが最も必要とされると痛感しています。 医療機関に限らず、多くの会社、お店など職種を問わず、ホームページを持つことが当たり前になっています。不妊治療をおこなっている施設は、ほとんどすべての医療機関がホームページを持っていると思います。 一般に、ホームページは専門の業者さんに依頼して、大きなお金をかけて作りますから
妊活サポート医師がそっと教える「妊娠のコツ」。 第2回は不妊治療をはじめる前に必要な準備についてです。 不妊治療にエントリーするなら、2〜3カ月間の基礎体温表をつけて、それを医療機関に持参することが必要不可欠です。それだけでも医師側に多くの情報を提供できるからです。 では、次に何をするべきでしょうか? インターネットに釘付けになって、情報収集をすることでしょうか? それとも家の近所、職場の近所の婦人科をとりあえずノックしてみることでしょうか? 私は、どちらもおすすめし
妊活サポート医師がそっと教える「妊娠のコツ」。 第1回のテーマは【妊娠に関する情報収集のコツ】です。 妊娠に取り組む時、男性と女性には、それぞれの役回りがあるように思えます。妊娠を考えはじめると、女性は情報収集に走りやすく、あっという間に頭の中が妊娠に関する情報で一杯になりがちです。インターネットが広く普及している今日では、こうした情報の収集は以前に比べて、格段に集めやすくなっています。しかし、このインターネットには大きな落とし穴があります。 それは、インターネット上の情