独立器官/村上春樹
大雑把にあらすじ⬇️
男性である1人の医師の、恋の物語。
本当に人を好きになった事がなくふらふらと遊んでいたが、ある時1人の女性に恋をする。
今まで体験した事がない感情に振り回され、自分の存在意義に疑問を持つようになる。
最終的には、その人に浮気をされ餓死する事を選ぶ。
そんな物語。
感想(分析的な思考は野暮に感じるが)👇🏻
奇を衒った発言に感じた言葉も、伏線になるように繋げている事に感嘆した。
初めて真剣に付き合った女性に、蔑ろに扱われていた事を知ったら非常にキツいだろう。
同性(友達)にされても、私ならとてつもなくショックをうける。それほど信頼しているからだ。
本当に人を好きになった事で、自分の価値について考え始めている。
肩書き全てが影響しなくなる関係では、ほとんど何も残ら無い自分に落胆していた。
ここで私と違う所が浮き彫りになっている。
本文中にもあるように、私は何も無かった状態から、知識や経験を蓄積して今の自分を作っていると認識している。
よって自分の社会的地位(これは殆ど無いが)や能力値が成長していくこと自体に喜びを感じている。
しかしこの男性は違う。
全てをそれなりに仕上げてから、自分を振り返っている事より、人生においての自分をデザインする快感を持ち合わせていない。
向上心や知的好奇心(情報濃度が濃い知識)に対して、私と温度差がある。
普段からあまり哲学的な事を考えない様は、
「誤解を呼び込むスペース」をそれほど潤沢に持ち合わせていないという表現にピッタリだ。
話を戻そう。
先程にも述べたように、彼は初めて恋をするという経験をした。
今までは自分の思いどうりに、技巧的に全てをこなしていく事ができ、それを当たり前だと思っていた。出来すぎていたのだ。
しかし自分では制御できないものを目の当たりにし、それに悩み、それ自体にも魅了されていっているようにも感じる。
彼の言葉を借りると、それこそが独立器官だ。
脳の指令には支配されない。
最後に彼は自分が何者であるか理解出来たのだろうか。
この答えに私は、何者にもなりたくないという結論に達したと感じる。
現状で何者であると決定すると、私ではない独立した器官によって生かされるという彼の中で非自然的なものに、心を落とす事になる。
それを彼は認めたくないのだ。
いささか彼には酷すぎた。
よって何者かになる前に、全てをゼロに近似させたかったのではないだろうか。
だから自分の生活に欠かせなかったものや大事な事を伝える事で、自分の所有権を放棄した。
彼は他人の独立器官に殺されてしまった。
時に他人は虐殺器官になりうるのだ。
他にも⬇️
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