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『「トラベル・ディバイド」の考察』のまとめ

「トラベル・ディバイド」は、シニア層、障がい者、乳幼児を連れ家族など特定のグループの旅行回数が大幅に減少する現象を指します。このシリーズでは、「トラベル・ディバイド」の背景、その影響、および解消のための戦略を考察してきました。


「トラベル・ディバイド」の原因はお金や時間ではなかった

2019年のデータでは、70歳以上の国内旅行が34%、海外旅行が72%減少。障がい者と乳幼児連れ家族の海外旅行回数も大幅に減少しています。旅行の減少理由は何でしょうか。

出所:JTB旅行年報2020、Tourism Academy、Wheelchair Travel
出所:JTB旅行年報2020

2018年の観光庁調査によると、旅行をしない主な理由は「時間の不足」と「家計の制約」でした。しかし、余暇時間と海外旅行回数、純貯蓄額と海外旅行回数にはそれぞれ0.82、0.87の逆相関があります。

重い荷物が旅行回数減少の原因だった

一方、スポーツ庁の「体力・運動能力調査」から算出される「体力テスト」と海外旅行回数は0.78の高い相関となりました。つまり、重い荷物を運ぶ能力の低下が旅行回数減少の大きな要因と考えられます。これは荷物を運ぶ必要がないクルーズ船旅行に多くのシニア層が参加することに繋がっていますが、クルーズ船や港湾設備の供給能力には限界があります。

注:「体力テスト」は全ての年齢層(6歳から79歳)で共通して行われる「握力」、「上体起こし」、「長座体前屈」の年代別数値を指数化
出所:スポーツ庁「 2022年度体力・運動能力調査」、JTB旅行年報2020

旅行回数減少により、認知症リスクが低下。社会的コスト減少に加え、大きな経済効果も。

東北大学とクラブツーリズムの共同研究は、「旅行に頻繁に行く人は幸福度が高まり、認知症リスクが低下する」という興味深い結果を示しています。認知症の社会的コストは日本で14.5兆円(2014年調査)、世界で2兆ドル(2030年予想)と巨額であり、旅行回数の増加はこのコスト削減につながる可能性があります。

出所:「Curiosity–tourism interaction promotes subjective wellbeing among older adults in Japan」

SDGs「誰一人取り残さない」理念を旅行業界で実現

また、シニア層の旅行回数増加は膨大な経済効果が見込まれます。70歳代以上の国内旅行回数が30%増加すると4,505億円、50歳代以上のインバウンド旅行客が30%増加すると2,422億円の経済効果をもたらす計算となります。

結論として、「トラベル・ディバイド」の解消は、シニア層の幸福感向上、認知症リスク低減、経済効果増大と社会的コスト低減につながります。また、シニア層や障がい者や乳幼児連れの家族だけでなく、全ての人が旅行しやすくなることにより旅行業界全体の発展に繋がります。旅行者用衣類レンタルの普及は、荷物を軽減し、旅行しやすい環境を提供することで、「トラベル・ディバイド」の解消のための効果的な方法の一つとなります。これは、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念にも貢献します。

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100歳になっても旅行をする方法 「トラベル・ディバイド」の考察①

旅行回数減少の理由はお金か、時間か「トラベル・ディバイド」の考察②

旅行回数減少の理由はアレだった「トラベル・ディバイド」の考察③

旅行をしたくないから旅行回数が減るのか「トラベル・ディバイド」の考察④

旅行回数が増えると幸せになり認知症が減少する「トラベル・ディバイド」の考察⑤

シニアの旅行回数増加による経済効果は大きい「トラベル・ディバイド」の考察⑥

シニアのインバウンド客増加による経済効果「トラベル・ディバイド」の考察⑦

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