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「戻れなかった時間」🌟リフレムの秘密Ⅰ
深い森の奥に、ひっそりと佇む古い塔がある。そこには、ある不思議な魔法使いが住んでいる。名をリフレム。 彼は、炎を灯すでもなく、空を飛ぶでもなく——ものごとの見方を変えるリフレーミングの魔法の達人だった。
さて・・・。今日はどんな魔法が生まれるだろう?
🌿 リフレムの秘密
ハルカが塔を訪れたある日、リフレムはいつになく静かだった。 普段はどんな悩みにも穏やかに答えを示す彼が、今日に限っては窓の外をじっと見つめ、言葉少なだった。
「先生・・・どうしたんですか?」
ハルカがそっと声をかけると、リフレムはふっと微笑んだ。 「・・・ハルカ、君は ‘リフレーミングでは乗り越えられないもの’ があると思うかい?」
不意の問いかけに、ハルカは戸惑った。
「えっ? 先生の魔法なら、どんなものでも違う見方に変えられるんじゃ・・・?」
リフレムはかすかに首を振ると、部屋の奥に歩いていった。 ハルカは彼の後を追う。
🔮 塔の奥の秘密の部屋
塔の奥には、一度も入ったことのない部屋があった。 そこには、たくさんの本が並び、机の上にはひとつの古びた砂時計が置かれていた。
その砂時計は、どれほど時間が経っても、ひと粒の砂すら落ちることなく止まっていた。
「この砂時計だけは、私の魔法でも動かせない。」
リフレムは静かに言った。
「これは、私が ‘戻れなかった時間’ なんだ。」
「戻れなかった時間・・・。」ハルカは息をのんだ。
リフレムは砂時計を手に取り、目を細めた。
「昔、私は ‘何か’ を選ばなかった。 その選択をしなかったことで、私は今ここにいる。でも——時々、考えることがあるんだ。 あのとき、もし違う扉を開いていたら・・・ と。」
ハルカはそっとリフレムを見つめた。 「先生も、選ばなかったことを悔やむことがあるんですか?」
リフレムはゆっくりと頷いた。
「リフレーミングの魔法は ‘今’ の見方を変えるものだ。 でも ‘過去を変える’ ことはできない。 私は長い間、この砂時計を見つめてきた。 しかし、どれだけ魔法を使っても、この砂は動かない。」
🌱 ハルカの気づき
ハルカはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「・・・でも、先生。 その選ばなかった時間も、先生の一部なんですよね?」
リフレムは驚いたように目を細める。
「たしかに ‘あの時’ に戻ることはできない。 でも先生が今ここにいるのは、その時間もあったからこそ・・・。」
ハルカは砂時計をそっと撫でた。 「時間が止まったままなら、それを ‘抱えて生きる’ ことも一つの選択なのかもしれませんね。」
リフレムはハルカの言葉にしばし沈黙した。
そして、ふっと柔らかく微笑んだ。
「・・・そうか。そうかもしれないな。」
その瞬間、止まっていた砂時計の中の砂が、ひと粒だけ落ちた。
🔮 リフレムの新たな魔法
リフレムは静かに目を閉じた。 長い間、自分は導く者でなければならないと思っていた。 だからこそ、変えられない過去すら、変えなければならないと—— しかし今、ハルカの言葉が新しい光をもたらしていた。
「ありがとう、ハルカ。 リフレーミングは ‘見方を変えること’ だけではない。 時には ‘そのまま受け入れること’ もまた、魔法なのかもしれないな。」
ハルカは優しく微笑んだ。
窓の外には、深い森の緑が揺れていた。 その中で、塔の中の魔法使いは、ほんの少しだけ、新しい視点を手に入れたのだった。
今回の物語のように心が軽くなるリフレーミングについて、シリーズとして分かりやすく物語にしています。カウンセリングを受ける前に一度読んでみてください。それだけで心が楽になるかもしれません。
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