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今日は老後の日

登場モノ

自然薯トロロ:トロロの妖精、定年退職後バイト生活

自然薯念子:トロロの妖精、トロロの妻

雲一つない青空、カラッとした空気、ポカポカと日差しが差し込むベランダ。

自然薯トロロはそこにしゃがんで育てている唐辛子と茄子に虫が食ってやしないかと葉っぱの裏を丹念に調べている。

葉の裏に住みついた少しのアブラムシたちをちり紙で拭きとり、お手製の虫よけスプレーを噴霧する。

まだまだだと思っていた茄子に大きな紫色の花が咲いていた。

下向きに咲いた花を覗き込んでみると中央には黄色い雄しべ。

花びらの紫との調和が美しく、思わず、

下なんか向いてないで、もっと上を向きなよ。別嬪さん。と声をかけると、花びらが風に揺れて笑ったように見えた。

そこに念子がやって来たので二人してのんびりと植物たちを見る。

念子にも日が差してキラキラして見える。

茄子の花が咲いたよ。茄子は実も紫で花も紫で信用できるね。とトロロが言うと

念子はあきれたような顔をして、アラ、中は真っ白ですよ。

と白い歯を見せて笑う。

だって、唐辛子の花は赤いと思っていたら、真っ白で、食べたら辛いしで、気が許せないよ。

と言うとまた念子は微笑む。そして、茄子の花言葉はささやかな幸福ですって。

本当にそうですね。とまた優しい笑顔。

ああ、私は貧しいながらも健康な体と優しい妻を持ち、定年退職後もアルバイト、

川柳仲間の烏丸さんとも出会い、なんと幸福な晩年だろうかとトロロは思う。

一人にやにやしているとバサッ、と、なにかが頭の上に落ちてきた。彼は居間で居眠りをしてしまったらしい。

あの~、外は雨が降っているんですけど~、洗濯物はどなたの当番でしたっけ?

濡れたままにして自分はお昼寝とはたいそうなご身分ですわね!!

もう、一生、濡れた服でも着てろ!!

買い物から帰ってきた念子がベランダに干していた洗濯物を投げつけた

のだと理解するのに寝ぼけて10秒ほどかかった。

烈火のごとく、怒りまくっている仁王立ちの念子。

わ~ぎゃ~大騒ぎし、興奮のあまり入れ歯が外れてもフガフガ唾を飛ばして文句を言っている。

老後も碌でもなくご苦労さんなモノ生だなとまた悟り、洗濯物を黙々と洗い直すトロロであった。

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