斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』の感想~タバスコの神髄を見た…!
Twitterで書くには少し長くなりすぎたので、noteでまとめてみました。
※ネタバレは、クリティカルなものはないですが、前半の展開には触れています。
【1】読んだきっかけは、ひすまこタバスコ
Twitterスペースの『ひすまこタバスコ〜ひすまこVS妖怪タバスコ女〜』が、この本を読むきっかけでした。
スペースは、2023/4/17時点ではまだ残っているようです。
https://twitter.com/sakomoko/status/1629813698893352960
ミステリ作家の集まったこのスペースの中で、ひすまこ(相沢沙呼先生の城塚翡翠シリーズ)のSS(ショートショート)ネタを考えようというコーナーがあったのですが、そこで容赦なく!料理にタバスコをぶっかけるがごとく!死ネタを叩き込んできたのが、斜線堂先生…!
SSネタで「弔辞」って…!
他人の小説の登場人物を死なせるとは、なんてひどいことを…と最初は思ったのですが、聞いているうちに意外とアリかも?と思えてくる、不思議に魅力的なSSプレゼンでした。
斜線堂先生すごいな~、何か一冊読んでみようかな~と思って、本屋で目に付いたのが『楽園とは探偵の不在なり』でした。
【2】タバスコの神髄を見た…!
『楽園とは探偵の不在なり』は、裏表紙の説明によると、二人以上殺した者は「天使」によって即座に地獄に堕とされる(二人以上殺せない)という特殊設定ミステリのようです。
ということは、AさんがBさんを殺して、CさんがAさんを殺して……みたいなパズル的なミステリかな?と思って読み進めていったら、さっそく出ましたタバスコ!
ミステリを本格的に展開させる前に、まずは死ネタを叩き込むスタイル!
先にあのスペースを聞いていただけに、このお方はもう根っから、あのまんまなお方だったのだなと、衝撃を受けました…!
序盤から語られる、過去の死別エピソード。主人公がつらみのどん底に落とされていることが読者にも分かります…。
過去の死別エピソードが主人公の心に大きな影を落としているという所が、ストーリーにがっつり利いていて(タバスコががっつり利いていて)ムチャクチャ面白かったです。
死ネタが生み出すキャラクター造形、すごいですね…。読んでいて「性癖が炸裂しているッ…!」と心の中で叫びましたw
パズル的なミステリ部分も面白かったですが、つらみのどん底に落とされた主人公の再起の物語として、存分に楽しみました。
いやぁ、タバスコの神髄を見ました。タバスコ教に入ってしまいそうです…。
【3】余談:なんとなく感じたゲームっぽさ
これは著者が狙ったものかどうかは不明で、私が勝手に感じただけかもしれませんが、探偵ゲームっぽいノリがあってそこも好きでした。
主人公の探偵に対して、探偵助手に立候補してくるキャラが複数いるのですが、これって誰を選ぶか(あるいは誰も選ばないか)でルート分岐するみたいなやつか…!?と、探偵ゲーム(あるいはノベルゲーム)的なノリを感じて面白かったです。
あと、館の中で凶器に使えそうな物を処分しようかと検討されるシーンがあるのですが、『雨格子の館』みを勝手に感じましたw
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