うろのなか
ちゃんと朝に起きたいなあ、と思う。なんかそういうのって普通らしくて、特に努力しなくても出来るものらしい。人それぞれとは言うけれど、社会がそうなってるのはそういうことが出来る人間が多いからで、薬を飲まなければ二十時間くらい起きっぱなし動きっぱなしってことはないらしい。いやあれよ、二十四時間なんていうのは勝手に昔の人が区切った区分のくせに、太陽が真上から降りてから起きる僕を指さして普通じゃないって言うなよ。
そんなこと言ったって、起きられるようになるわけもないんだけど。
喉を食事が通りません、意味分からんくらい頭が痛いです、前方不注意であちこちぶつかるから痣だらけ、真面に陽を浴びてないから血管が透けて見えそうな感じで。いいなあ、とか言うの、どうせ嘘だろ。(あなたは)(病気を理由に出来て)(努力しなくてもかわいそうがられて)いいなあ、ってことだろ。じゃあ交換してよ、この人生。
嘘だよ、嘘。お前の人生なんて欲しくないわ、願い下げ。
誰もどうせ幸福になんて生きられないって分かってるよ、みんながみんな、自分にあった不幸のかたちを愛している。こんな悩みは馬鹿らしいって、お前には努力が足りないんだって、うるせーよ、お前に何が分かるんだ。こっちはお前の何も分からないんだからお前もこっちのこと分からないだろ、そういうことにしておけよ。
海に行こうか、山に行こうか、人里に行こうか。やさしくされたい。どうでもいい見栄なんて関係なく、ただただやさしくされたい。意味のないやさしさをかっぱらって生きていきたい。あーあ、こんな人間になる予定はなかったよね、多分、なかったよ、なかったって言ってくれ。
氷みたいに冷たい日常が、また針をくるくる回す。もう使えないフィルムを弄びながら、明日もまた今日のように無駄になっていくのを待っている。