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シングルマザーの読書ノート 9月

先日、ベランダから奇妙な一羽のカラスを見た。
そのカラス、くちばしをずっと開けたまま、じっとしているのである。
(普通、鳴く時以外は閉じているはず)
どこか悪いのか、羽に艶も無い。
この容赦なく照りつける太陽、さぞ、真っ黒いカラダにはこたえるだろう。
その翌日も同じカラスと思われる一羽を見つけた。
やはり、くちばしを半開きにしたまま、しばらくじっとしていたかと思えば、力無くどこかへ飛んで行った。

カラスにとっても、人間にとっても、一日も早く、秋らしい每日になることを願った。

さて、元気を出して、今月読んだ本を紹介したいと思う。

①「私の盲端」  朝比奈 秋 著
②「ヨーロッパ退屈日記」
         伊丹 十三 著
③「読み解き『般若心経』」
         伊藤 比呂美 著
④「悲しみの秘義」
         若松 英輔 著

朝比奈さんは、「サンショウウオの四十九日」で、第171回芥川賞を受賞された今注目の作家さんだから、ご存知の方は多いと思う。
現役の医師でもある視点から描く世界は、真実と説得力に満ち、読者を引き付けて止まない。


伊丹さんは、亡くなられて、はや26年くらいになるか。
映画監督、俳優、デザイナー、エッセイストなど多岐に渡って活躍。
この文庫本のカバー装画や挿絵も作者本人が手掛けたそうで、実に多才で天才肌だったことがうかがえる。


伊藤さんの「般若心経」は、ものすごく面白かった。
本文に「あたしは、宗教的でない家に育った。父も母も、戦争ですっかり信心をなくし、高度成長期に消費主義に染まり、自分しか信じなくなり、都会の片隅で、お寺やお墓とは、とんとかかわりなく生きてきた。」と、ある。

私も全く同じである。
無宗教の私だが、このエッセイ+お経の現代訳には、ものすごく共感し、慰められ、元気をもらった。
何度でも読み返したい大切な一冊となった。


「悲しみの秘義」は、Eテレ「理想的本箱」の中で紹介されたのを観て読んでみたのだが、期待以上に、美しく、哀しく、心に沁みる一冊だった。
哲学的でありながら、決して難しくなく、スーッと心の奥底に溶け込んで、癒してくれる…そんな薬箱のような本だ。
生きづらい現代社会の中で、悩み傷ついている人に、ぜひ読んでもらいたい。


私もあのカラスのように、口が半開きになってやしないか?時々、不安になる今日この頃だ。
では、また、次回。お元気で…。




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