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【読書記録】人類の物語 ヒトはこうして地球の支配者になった
おすすめ度 ★★★☆☆
あの「サピエンス全史」の著者が子ども向けに書いた物語で、子どもに読ませてみたいと思って借りた。
「サピエンス全史」読んでないのだけど、なるほどこういう思想なのねという入門書として良いと思う。
ただ、子どもに理解できるかは疑問、というか多分無理。
単純に人間の歴史ではなく、宗教や社会思想の話が根底にあるので、読むことはできても理解するのは難しいと思う。
全編ふりがなは振ってあるけどね。
物語を作る力
この本の大きなテーマは、人間(サピエンス)は「物語を作る」力があったから地球の支配者になれた、というものだ。
「物語」というふんわり子ども向けの言葉が使われているから逆にわかりにくいが、神様やお金など何か共通のものを信じる力、と言い換えてもいい。
何かを想像する、創造する、信仰する。
「神様がこの一族を王にするべきだと決めた」とか「ネアンデルタール人を追い払うように望んでいる」とか、そういう物語を作って、信じた人たちが団結する。力を合わせることができる。
手先が器用だったとか、火を使うことができたとか、人間ならではのフィジカルなメリットももちろんあるけれど、複数いた人類の中でホモ・サピエンスだけが生き残ったのは、この「物語を作る力」によるのではないか。
(ネアンデルタール人はフィジカル面ではサピエンスよりよっぽど強かったらしい)
なるほどねー納得感がある。
チンパンジーに「お金は貴重なものだから、バナナと交換しよう」といっても無理だもんね。
脱線多すぎ
というわけで、概ね納得したが、話の構成というか持っていき方がイマイチピンとこなかった。
なんだろう、海外の作品によくある「ん?今なんの話はじまった?」みたいなのがちょいちょい入ってくる。
さっきまでネアンデルタール人の話してたのに、唐突に「マクドナルドという会社も物語なんだ」という話になるとか。
話がつながれば、「あーなるほど、信用と物語の概念をつなげるための話なのね」と理解できるけど、小中学生にはキョトンなんじゃないかな。
そういった脱線や例え話が長くて、元の話がわかんなくなっちゃう。
海外の作品でよく感じる感覚だから、主題と補足の最適な分量って国によって違うんだと思う。
原語で読むとまた違うのかも?慣れも必要なのかも?
人類は残虐なのか?
サピエンスの大きな強みは、協力できること・一見危険な生き物に見えないこと・火を自在に操れることの3つだった。
この強みを活かして、多くの動物を絶滅させ、地球のほとんど全てを支配した。
といわれても、多くの人はピンとこないとおもう。
今の人類は動物愛護や絶滅危惧種の保護だって頑張ってるじゃないか。
知識がないと残酷になっちゃうのよね、くらいの。
しかし著者は、当時の人類が特別残酷だったのではない、という。
例えば体の大きなマンモスなどは繁殖に時間がかかる。年に数頭ずつ殺しても絶滅するには何世紀もかかるので、何が起きているかを俯瞰して見れる人は誰もいなかった。
「ワシが子どもの頃は周りにいっぱいマンモスがいたもんじゃが…」みたいなおじいちゃんがいただろう。
サピエンスは、そんなことが起きていることを少しも知らなかった。
サピエンスの問題点は、特に悪意があって何かをしたというわけではなく、何かをするのが、とても上手だったんだ。サピエンスがマンモスの狩りを始めるとあまりにも手際良くできたから、生き残れたマンモスは一頭もいなかった。
歴史上ほとんど全ての島で、サピエンスが入ってきた途端にたくさんの動物が絶滅させられたことが書かれている。
いわゆる農耕とか文字の発明とか、私たちが歴史で学ぶ人類らしい歴史が始まるずっと前に、人類は大型動物のおよそ半分を殺してしまった。
悪意も自覚もないままに。
今でも私たちはきっと同じことをしている。
自分の子供の頃を思い出しても、夏は長く暑くなっているし、大雨の災害の頻度も多いように感じる。どこか遠くの国で、島が沈んでしまうと訴えている大統領のニュースも見たことがある。
だけど私たちに悪意はない。
暑いからエアコンをつける。出かけるために車に乗る。スーパーで買い物をする。それが俯瞰で見てどういうことなのかは、わからない。
わかる人はいない。
当時のサピエンスと何が違うだろう。
この本の原題は”Unstoppable Us”だ。
私たちは本当に止まることができないんだろうか。