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【読書記録】9割の社会問題はビジネスで解決できる

おすすめ度 ★★★★☆

パッと見は思いきりビジネス書だが、社会問題にアツく切り込んでいる良書だった。

「うまいことビジネスにしてやろう」ではなくて、とにかく真剣に社会問題と向き合っている。
なんとか解決したい、よりよい社会をつくりたいという想いがベースにあって、それを持続可能にするためにビジネスにしている。
いいわぁ〜これぞあるべき姿だ、と興奮しながら読んだ。

「ああ、よくある起業家のサクセスストーリー本ね」
そう思ってこの本を閉じようとした人がいたら、もう少しお付き合いください。

はじめに


著者が創業したボーダレス・ジャパンは、ソーシャルビジネスの会社だけが集まっているグループ会社だ。
1000人の社会起業家を生み出し、1000の社会問題を解決すること」を目標にしている。
貧困や難民、過疎化、差別、フードロスなどの社会問題は、基本的には「儲からない」。

誰かの不満や不便を解消するという意味では、どのビジネスもあてはまるけど、通常のビジネスは「そこにお金を払う人」がいないと成り立たない。
社会問題は、見過ごすことのできない課題ではあるが、大抵の場合、直接お金を払ってくれる人がすくない、つまりマーケットから取り残されている。

だから、こうした問題を解決するのは、政府や自治体、NPOなどになりがちである。
もちろんそれも重要だし、素晴らしいものだ。
でも著者は「社会問題がビジネスのあり方によって起きているのならば、ビジネスでこそ解決すべきだ」という。

効率を追求するあまり、取り残されてしまう人や地域がでてくるというビジネスのあり方こそが原因なのであれば、そのビジネスにおいて対策を講じることが本質的な解決策です。
すなわち、非効率も含めて経済が成り立つようにビジネスをリデザインすることです。

めちゃしびれる。いいわぁ!
このビジネスのリデザインの部分が、事細かく書かれているのだが、本当に画期的で目からウロコの連続だ。
目からウロコをだしながら、そうだそうだ、本当はビジネスというのはこうあるべきじゃないか、と思えるようになってくる。

どうして、途上国の児童労働を放置して、やっすいチョコレートが平気で売られているのか。
どうして、熱帯雨林をバサバサ切ってパームヤシを増やしてポテチ作ってるのか。
どうして、シングルマザーが正社員になれないのか。
どうして、外国人が部屋を借りるのが難しいのか。
どうして、エッセンシャルワーカーの給与が安いのか。

一度視点が変わると、いまの世の中のアンバランスさが気になって仕方なくなる。いや、私はもともとそういう本ばっかり読んでるから気になって仕方なかったんだけど、より一層厳しい視点でみるようになる。


中盤は実践本として、ボーダレス・ジャパンの創業の歴史や、ソーシャルビジネスの立ち上げ方ノウハウがこれでもかと詰め込まれている。
こんなにあけすけに書いてしまってよいんだろうかというほど、ノウハウダダ漏れだ。

そして、事業の立ち上げ方、資金計画、経営者間のコミュニケーション、全てにおいてブレがない。
社会問題を解決することをトップのコンセプトにしている。それがブレて、儲けを優先させたり、誰かの意向に縛られたり、破綻しないように別のことに手を出したらすぐにストップするように設計されている。

正直なところ、著者の田口さんがとてつもない人だから出来ることだとは思う。
表紙で見た感じも出来る人だし、実際の半生を読んでも、まあ〜〜〜〜とんでもなくパワフルでスマートでクレイジーな人だ。あまりに常人と違いすぎてちょっと引く。
切り込んで大胆に改革して、うまく組み立てていくのは情熱・頭脳・合理性あとなんだ、なんかもう諸々全部持ってる人だからできるんだろーさ、とひねくれて読む部分はあった。

ただ、田口さんが苦労したからこそ、後続が同じ苦労をしなくてすむように仕組み化をしたのだという。
同じ想いを持っている人が、このノウハウを引き継げば確かに起業のハードルは下がるだろう。
起業にまっっったく興味がなかった私ですら、「なんかちょっとできるかもな」と思ってしまった。

というわけで、ちょっと考えることにした。


前回書いたけれど、今私の中でホットなのは「日本語教師の収入少なすぎ」問題だ。
やりがいと情熱を持って多文化共生社会に貢献できる仕事が食っていけないような収入しか得られないのはおかしいだろうと思っている。

でも、色々考えていくと、問題はひとつじゃないと気づく。

日本語教師の収入が少ないのは、外国からの就労者の低賃金という問題につながっているし、
就労者の子どもが日本語の壁で学校についていけなくなる問題もなんとかしたい。
といって外国人ルーツの子どもも多種多様で、日本語を学びたい人もいれば、母国に戻る前提で母国語をしっかり学びたい人もいる。
あれ?私がなんとかしたい問題ってなんだ?フォーカスが定まらないぞ。

この本には、芯になる「ソーシャルコンセプト」(誰のどんな社会問題を、どのように解決して、どのような社会を実現していくのか)が最も重要だと書かれているが、身につまされる。
やっぱり思いつきでなんとかなるもんじゃない。そりゃそうだ。

下手にビジネス経験のある人ほど間違いがちです。ついついうまくいきそうなビジネスアイデアが先行してしまう。ビジネスアイデアが先にあって、それを後付けで社会問題にはめ込もうとするのです。(中略)
考えるのは「この社会問題が怒っている本質的な原因は何なのか」。

実現するのは難しいと思う。でも、私は時間もあってお金にも困ってなくて、そして当事者として日本語教育を取り巻く問題に足を突っ込んでいる。

なんか、考えたいな。まだモヤモヤの靄だけど。

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