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【読書記録】猫を棄てる 父親について語るとき

おすすめ度 ★★★☆☆

年末に読んだ本。書く時間がなかったので年が明けてしまった。


村上春樹が父親について語るというのは初めてらしいので、さてどんな重い話なのかと思っていたら、とても飄々・淡々としたエッセイだった。

確かに村上春樹の文章だけど、若い時のようなザスザスした感じ、アクの強さ、書かねばならぬとせき立てられるような切迫感みたいなものがない。
毒気がないぶん、読みやすいぶん、ツッコミどころもなく、スルッと通り過ぎていく。
でも、綺麗な文章なので読後感がよい。挿絵もよかった。

なんでしょね、とても高級な雑味のないお茶をいただいたような。
ああ、村上春樹も年齢を積み重ねて、色々あったんだろうな、と感慨深くなった。

あれだけの有名作家でも、お父さんがいて、子供時代があって、それを振り返って色々想う時間がある。過去を振り返りながら、生きている。
当たり前だろといわれたらその通りだけど、なぜかホッとする。
村上春樹でもそうなんだから、私だってそれでいいじゃんね。


父について作家が語る作品は、星新一の「明治・父・アメリカ」でも読んだ。これはなかなかインパクトの大きい作品で、明治に生きた人間の強さに圧倒されっぱなしだった。

親が亡くなると、親について書きたくなるという気持ちは、わかるような気もする。

私も父が死んで数年後に、父のことを書いた。
定期的に「私が忘れてしまう前に残しておかなきゃ」という気持ちがやってくるのだ。

逆にいうと、親が生きているうちは、書きにくい。
私のように親にも知らせずにひっそりnoteに書いている分にはいいかもしれないが、出版する作家は違う。気恥ずかしいし、親になんか言われたら面倒だし、感情が整理しづらい。

年末に母に会いに行って、思うところ、書いて吐き出したいことがたくさんある。けどなかなか書けない。感情がまぜこぜになりすぎる。
私も、いつか淡々と飄々と、母について書ける日が来るんだろうか。

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