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【読んだ】ケーキの切れない非行少年たち

おすすめ度 ★★★☆☆

漫画もおすすめ

漫画の「ケーキの切れない非行少年たち」はすごくよかった。
説明臭くない淡々としたストーリーなのに、単純にわかったつもりになれない様々な問題を認識させてくれる。
ノンフィクションなのでスッキリ展開ばかりではないが、漫画の読みやすさで実態が知れるのはすごいことだと思う。

もう少し深く知りたくて、原作(?)も読んでみることにした。

認知の歪み、とはなにか

医療少年院という特殊な環境で、精神科医として関わってきた著者の宮口さん。
本では、個々のケースについて語るというよりは、「認知能力」がメインに書かれている。
タイトルにある、丸いケーキを3分割できないというのも認知の歪みの一例だ。

ケーキが切れないのは、単純に「頭が悪い」ではなく、「世の中の全てが歪んで見えている」可能性があるということだ。
例えば人の話を聞き取れなかったり、図形を認識できず書き写せない。
または、相手の表情が読み取れず、「あいつが俺をバカにして睨んできた」と思い込んで暴行する。

実は、少年院には「自分は優しい」という子どもが約8割いるらしい。

「どんなところがやさしいのか?」と尋ねてみると「小さい子供やお年寄りにやさしい」「友達からもやさしいって言われる」と答えたりするのです。
(中略)「君は〇〇して、人が亡くなったけどそれは殺人ですね。それでも君はやさしい人間なの?」と聞いてみますと、そこではじめて「あー、やさしくないです」と答えるのです。
逆に言うと”そこまで言わないと気づかない”のです。

第二章 「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年

その歪んだ認知のまま、矯正プログラムをおこなっても効果はない。
再犯してまた少年院に戻ってきてしまうこともある。

学校では社会性を教えない

ハッとしたのは、実は学校では社会面の支援を体系的に行っていない、という話だ。

宮口さんは、複数の小中学校でコンサルティングを行っているが、子どもの支援には「学習面」「身体面」「社会面」の3つがあるという。

この中で、最も重要なのは?と聞くとほとんどの教員が「社会面」だと答えるそうだ。

しかし、「社会面の支援について、系統的にどんな教育をされてますか?」と聞くと、ほとんど「何もしていない」という答えが返ってくる。

確かに、国語算数など教科教育はコマ数まで決められ、細かい学習要項もある。
しかし、社会性を身につけるための教育、といえば道徳くらいか。系統だった知識も、学習要項も、ノウハウも殆どない。

社会性は、集団生活の中で自然と身につけられる能力と思われていたのかもしれない。私もそう思っていた。
でも、知的な遅れがあったり、認知機能が低い子どもにとっては「自然に身につける」が難しいのだ。

学校が砦なのはわかる…けど

医療少年院に来る少年の多くは、社会面の能力(社会性)を正しく身につけられていない。
その問題は、小学校低学年の段階ですでに現れている場合が多い。

少年院に勤めてきた著者が、もっと早い段階で適切な支援が得られれば…という想いを抱くのも無理はない。

とはいえ、全てを学校教育でカバーするのは無理がある。日本の教員は忙しすぎる。

できることは何か

そこで著者は、独自に開発した認知機能向上トレーニング「コグトレ」を提案している。

面白いのは、これらのトレーニングは「認知機能の低さを測るテスト」ではなく「機能を向上するワーク」を目的にしていることだ。
WISCやIQテストとは異なり、社会面の支援にダイレクトに繋がる。
しかも朝の会などの5分間を使ってできるような教材になっているという。

いいな。これだったら、超忙しい先生でも実践できそう。
広がるといいな。

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