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【読書記録】ピンヒールははかない
おすすめ度 ★★★☆☆
以前佐久間裕美子さんが書いた児童書が面白かったので借りてみた。
長年ニューヨークに住む著者が、自分と周りの女性たちの生き方について書いたエッセイ。2017年に書かれたものなので、今読むと目新しさはあまりないが、それだけこの数年で女性の生き方が見直されてきたということなんだろう。
良いことなのだと思う。
大人として扱われるために、なめられないためにヒールをはいていた自分も、いつしかスニーカーを履いていてもなめられなくなった。肩の力を抜いている時の自分を好きだと思ってくれる人間じゃなかったら、付き合うのはしんどいと感じるようになった。必要とあれば走ったり、自転車に乗ったりすることが可能なスタイルでいたい。そして、ごくたまに特別な日。特別な気分になりたければヒールをはけばいい。
THEニューヨークの女性
エッセイには、佐久間さんの周りの女性、友人や仕事仲間などの話がたくさん出てくる。
複数のボーイフレンドと交際しつつ、自立してシングル生活を楽しむ女性、
元々レズビアンではなかったが、女性に恋をして幸せに生きる子持ちの女性、若い頃はドラッグやアルコールに溺れ、今はモデルでアーティストで母親をしている女性。
…ニューヨークやなぁと思う。
みんな映画に出てきそう。そういう喋り方で書かれているし、どこもかしこもイメージ通り!という感じがした。
自由で、雑多で、ちょっと危険で、適度な距離感で、おしゃれなバーとか屋上でちょっとした会話にも人生のウィットがはさみこまれているような感じ。
そういう生き方は日本とは全然違うから、カッコよくて憧れてしまう。
日本もこうなったらいい!と思うのだけど、実際はどうだろう。
佐久間さんのエッセイは、美しく強くかっこいい面だけでなく、女性の苦悩や閉塞感、偏見が描かれている。これ、日本の話じゃないの?と思うこともある。そういうものはどこの世界にも共通するらしい。
欧米は考え方が進んでいるイメージがあるけれど、むしろカトリックの思想はドン引きするほど女性の自立に否定的で驚く。
しかもドラッグや犯罪が日本より近いところにあるので、危険度は高い。
その中で強く生きることは簡単でも単純でもない。
ママの世界に共通するもの
いうて、ニューヨークは多様性の街なので、あまり人と比べるという文化がないという。
ニューヨークで自分の周りを見回すと、みんなが選ぶ人生が多様すぎて、比較しようにもしづらいから、こういう気持ちとは無縁で生きることができる。
なるほどそういうことなのね。羨ましい話だし、小さな島国の日本では環境的にそうならないのもわかる。
でもときどき子供を育てている友人に「ママの世界にはあるんだよ」と言われてハッとなるのだった。
母親、という新しい自分の役割に向き合う過程で、子供を産んだ人間は、いつもハッピーに振る舞わないといけない。そういう社会のプレッシャーを感じた。
アメリカにもあるのか、とショックを受けた。日本にもある。私の中にもある。ずっとある。
話をしながらちょっと前に日本で目にして衝撃を受けた女性誌の特集のコピーを思い出した。
「幸せだって思われたい」
自分の心と付き合っていくだけでも大変なのに、その幸せが他人に紐づいているなんて、なんて恐ろしいことだろう。
他の本でも同じ指摘を見たことがある。今ならその違和感に気づけるけど、多分少し前の自分は何も感じなかったと思う。
だってあらゆるところにそういうコピーがはびこっているから。
「幸せだって思われたい」他人から承認されたいという気持ちがあるのは、みんな、自分の選択が正しいのか不安だからだ。女として生きるということは、結婚する、しない、子供を持つ、もたない、仕事を続ける、辞めるといった選択肢の中から自分の道を選ぶということだ。
歳を重ねるたびに、正しさを他人の評価に求めるのは辛いことだとわかってきた。
ただ、わかっていても解放されているわけではない。
いつでも幸せハッピー最高!でいられるわけじゃない。
不安や悩みがあるときは特に誰かに「大丈夫」といって欲しくなる。
「子供がかわいそう」「親ならこうするべき」「ママになっても綺麗でいたい」「専業主婦は〇〇じゃない?」「ワーママって〇〇じゃない?」
はーめんどくさ。
はー無限にある。めんどくっさ!
こういうときは「くもをさがす」の言葉を思い出すようにしてる。
40年以上一生懸命生きてきたんやから、ええ加減好きな格好させてくれや
「格好」を「生き方」に変換してもいい。
結論はいつも同じ。
私たちはもっとずっと、好きに生きていい。
(今見返したら、雑誌のタイトルの話「くもをさがす」にあったわ)
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