【読書記録】サキの忘れ物
おすすめ度 ★★★★★
大好きな津村記久子さんの短編集である。
津村さんが紹介していた「サキ短編集」が面白かったので「津村記久子 サキ」で検索したらこの本が引っかかった。
些細なことをじっと見つめて緻密に描き切るテイストが、サキと津村さんは似ていると思う。
特に好きだったものを紹介する。
サキの忘れ物
サキ短編集を喫茶店に忘れるお話。話に出てくるサキの話が「あー!あの話ね」「読んだ読んだ!」ってなる謎の優越感があった。主人公がいい子なので、話としてはそんなに。私、もっと性格悪いのが好き。
王国
津村作品ではいろんな人が主人公になるけど、幼稚園生とは。津村さん、あなた幼稚園生にもなれるんですか。膝のケガに王国を見る、描写のどっぷり感がたまらない。幼稚園生の時は、いろんな王国があった気がする。
喫茶店の周波数
喫茶店で隣の会話を聞くという趣味のよくない話。切れ味よく心の中で悪態を吐く主人公が大好き。
喫茶店でこういう客を観察してる人じゃないと書けない描写に、つい笑ってしまう。
行列
無料で「あれ」を見るたびにただ行列に並ぶ話。行列で起きることが絶妙に不可解で、不快で、モヤモヤする。ありそうなのに、絶対ない。なのに、わかる気がする。狭い空間に見知らぬ人と並ぶと起こりそうなことをよくぞここまで描き切れるなぁ。
河川敷のガゼル
突如ガゼルが河川敷に現れる。ありえないのに、もしそうなったらこうなるだろう描写がすごい。行政やSNSの動きが大ごとすぎず、絶妙。
脳内どうなってるんだろう。ガゼルおるんちゃう。
隣のビル
津村さんの十八番、仕事モノ。すごく嫌な上司からの逃避の仕方が「隣のビルに飛び移る」なの、どういうこと?なのにやっぱりわかる気がする。
読後やさしい余韻が残るのも良い。
真夜中をさまようゲームブック
一番度肝抜かれた。ゲームブック形式になっているのだ。津村さんやりたい放題すぎて、もうめっちゃ好き。冒頭の解説だけ引用しますね。
ちなみに私はまだ3〜4回目だけど、本当にすぐ捕まるし、死ぬ。くやしいのでこれから紙と鉛筆を持って、本気で望もうと思う。
※後日、本気で臨んでやっとクリアできました。何度も死にながら、物語が繋がってく感覚がすごい。面倒臭がらず、でも首を突っ込みすぎないことが大事。人生はゲームブックみたいに些細な選択肢の繰り返しなんだと思う。引き返せないだけで。
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