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大阪PYNT|町工場の技術と設計者の視点で「ゴムとものづくり」の新たな可能性を開く

福山 久美子
日建設計 コーポレート部門 広報室
アソシエイト

オープンイノベーションを支援する共創プラットフォーム日建設計「PYNT」、大阪へ展開

日建設計は2023年4月、東京オフィスのリ・デザインを皮切りに、各拠点の刷新にあわせた新たなワークプレイスの実証的取り組みを開始しました。東京本社ビルの3階には、社外の共創パートナーとのオープンイノベーションにより、複雑な社会課題の解決を目指し、まちの未来に新しい選択肢をつくる共創の場として「PYNT(ピント)」が新設されました。オープン以降、100件を超えるワークショップやイベントが開催されており、様々な専門性や課題意識を持つゲストと建築や都市の専門家など、社内外の人をつなぐコミュニティチームと共創プロジェクトを生むきっかけをつくるイノベーションデザインセンターのチームが一丸となって、新たな事業や仕組みをつくる一歩を支援しています。

図1 東京本社ビル3F「PYNT」Floor Map

東京本社ビル3階で展開されている共創プラットフォーム「PYNT」。その「共創」活動を大阪地区にも展開する取り組みとして、日建設計大阪のものづくりに対する強い想いと 大阪のものづくり文化に着目し、共創活動をものづくりで始めることとし、共創活動「大阪PYNT」が2024年5月に始まりました。

共創活動「大阪PYNT」の具体化に向けた出会い

大阪の町工場はものづくりの現場を開く「オープンファクトリー」の活動を全国の中でも盛んに行っており、分野の異なる専門家やスタートアップとのコラボレーションなど、様々な共創の取り組みを行っています。まずは、そんな町工場と日建設計大阪のメンバーが出会い、ものづくりの現場を知る機会をつくるところから始めていきました。今回はゴム製品の製造・販売を展開する錦城護謨株式会社を含め、大阪府八尾市に工場がある4社のファクトリーツアーを5月末に行い、その中でも、普段触れる機会が少ないゴム製品の特性に惹かれた設計者が多く、錦城護謨のみなさまとのコラボレーションを模索してみたい!と、このプロジェクトがスタートしました。工場見学の中で見たゴム製品の用途に合わせた材料提案、製品開発と日常のあらゆるプロダクトを補助する機能部品を高精度で製造する技術、そして、さまざまな場面や用途でゴムが使われていることに一同驚愕。また、さまざまな製品を実際に手に触れてみることで、これからの共創活動のアイデアのヒントが見つかるきっかけになりました。

図2

愛おしいモノを作ってから、そのモノの使い方を考える

図3

早速、6月に共創のものづくりに向けたワークショップを行い、ゴムについて理解を深め、学びながら議論を重ねました。さらに、プロダクト開発を実際に行うため、日建メンバーと錦城護謨メンバーの合同チームを7月に結成し、どんなものを作りたいか、8月からざっくばらんな意見交換のミーティングがスタートしました。

写真1

過去のワークショップで、ゴムは資源循環(リサイクル等)が難しい素材であることを知ったので、廃棄物にならない仕組みを川上から作るべきだと考えました。廃棄物にならない=物理的耐久性以上に精神的耐久性(愛着)を持てる、また使う役割が変幻自在でずっと使えるものなどと考えを巡らせる中、「機能や意味はモノの魅力から後追いで発生するようなものを目指してみませんか?」と日建メンバーから錦城護謨メンバーへコンセプトを提案しました。
そこでたどり着いたのが、通称「ぽよ」と呼んでいる特殊な釣鐘型のゴムです。この意味を持たないものが、日常の中で色々な役割を持ち、みんなの暮らしを豊かにし、みんなの気持ちを優しくしてくれるのではないか?人は使い方を自分で思いついた時に「愛着」がさらに湧くのではないか?そんな想いを錦城護謨メンバーとともに形へしていきます。

図4

NIKKENで作成した「ぽよ」の図面を元に、9月から10月にかけて錦城護謨メンバーが成形用の金型を作成し、試作を作ってゴムの硬度、色の調整を繰り返しました。成形がなかなか上手くいかず何度も微調竪。今回は試作なので、3分割して接着することで、金型コストを下げる工夫もして、成形された「ぽよ」部品たちをNIKKENメンバーでひたすら接着成形する。できあがったものは何ともいえず可愛らしい「ぽよ」たち。組み立て作業は難しかったけれど、いい感じに仕上がりました。

図5

イケフェス大阪2024で「ぽよ」の試作品をお披露目展示

毎年秋の週末2日間を中心に大阪の魅力的な建築を一斉に公開する、日本最大級の建築イベント「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2024」(略称:イケフェス大阪2024)が、10月26日(土)、27日(日)に開催され、日建設計は今年も参加しました。スタディ模型や完成模型、モックアップ、材料、サンプルボード、スケッチ等、手触り感のある「リアルなモノ」を展示し、普段みる事のできない、日建設計のものづくりの雰囲気を体験できます。

写真2 日建設計大阪オフィス イケフェス大阪2024展示風景

ここで、いよいよ「ぽよ」のお披露目です。開催期間の2日間で1400人以上の来場者があり、様々な展示をじっくりと回りながら鑑賞を楽しんでいました。大阪PYNTのパネルと「ぽよ」の展示の周りも多くの人で賑わい、「ぼよ」を見て触れた人々から様々な感想が聞こえてきました。ある人には「ぼよ」は玉ねぎやにんにくに見え、別のカップルにはクラゲのように見えるなど、見る人によって変化する「生きもの」のようでした。興味深いことに、誰もに共通していたことが「かわいい、癒される」や「ほしい、触っていたい」という言葉でした。

写真3

展示の横のボードにはポストイットが貼られ、見学された方々から「ぽよ」についての感想や色々な使い方のアイデアが寄せられていました。「ぼよ」のワークショップで日建設計メンバーが感じたゴムの柔らかさ=建材にない感触。使い方を知らなくても、言葉では表現できない良さがあり、愛着を持てる。「ぽよ」に出会った人たちは同様な感覚を抱いたようです。そして、コンセプトである「愛着」とはどこに発生するのか。先になんとなく愛おしいモノを作ってから、そのモノの使い方を考えることです。ゴムはリサイクルが難しい。なら、使い続ける。使う役割を変幻自在にして、ずっと使えるものとして循環し続ける。ペン立てから花瓶、アロマディフューザー、照明、その後は?と「ぽよ」は愛着とともに生き続けます。まだまだコンセプトのプロトタイプ段階ではありますが、試行錯誤の途中段階を含め、生の声を聞くことができた展示を終えて、これからどのように展開し、社会課題の解決や新しい仕組みづくりにつなげるか、共創活動のJourneyは続きます。

写真4

共創アイデアの種が大阪PYNTから広がっていきます
アイデアの種が人々の心に届くと、新しい発想や創造が芽生え、やがて大きな成果を生むことがあります。タンポポの種が大地に根を張り、美しい花を咲かせるように、アイデアの種もまた、豊かな未来を築く力を秘めています。東京PYNTから大阪PYNT、共創アイデアの種が様々な出会い、活動、プロジェクトやコラボレーションを通じて広がっていきます。

福山 久美子
日建設計 広報室
アソシエイト
米国フロリダ州で大学を卒業後、フロリダ州で不動産コンサルタントや美術館のキュレーターアシスタントとしてのキャリアを積み、帰国後、日建設計に入社し、以来国内外の広報を担当。

<協力>
錦城護謨メンバー:鈴木宏昭、五百川義弘、小山健一、水田竜平
日建設計メンバー:中川雄輔、眞庭綾、浅田翔太、奥村拓哉
日建設計PYNTチーム:赤木建一、冨木昌史、吉備友理恵

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