西脇健三郎(ニーケン)

精神科医/食べ歩き、読書、映画鑑賞/好き本:ちょっとピンぼけ(ロバート・キャパ)、黄昏流星群/最悪を覚悟して最善を尽くす/2009年~2014年までブログやっていましたが、古希を過ぎてまた始めます。

西脇健三郎(ニーケン)

精神科医/食べ歩き、読書、映画鑑賞/好き本:ちょっとピンぼけ(ロバート・キャパ)、黄昏流星群/最悪を覚悟して最善を尽くす/2009年~2014年までブログやっていましたが、古希を過ぎてまた始めます。

最近の記事

これからの精神科医に求めること

上野 修一日本精神神経学会理事は、精神神経学会誌2024年9号、巻頭言「121回学術総会について考える~これからの精神科医に求めること~」の中で「~社会的弱者であり発言力の弱い精神的ハンディキャップをもつ者の代わりとなり、発信を続けなければならない」と述べている。分からないでもない。だが、それが今日の精神科疾病構造の変化の中で大丈夫なの?出来るかな?といった危うさを感じる。 ★2022年6月9日、厚生労働省の「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制実現に向けた検討会」報

    • 社会的入院を強いられてきたのは統合失調症者(精神障害者)だけではなかった。

      ①警察からの要請▼患者の引き渡しを拒む 父の逝去後に精神病院を継承して3年あまり(1985年ごろ)経った年の暮れの出来事である。 知人数名に伴われて、私と同世代の男性が西脇病院に連れてこられた。薬物依存症であった。覚せい剤を常用し、被害・関係妄想が出現、身重の妻に暴力をふるい、妻の両親が警察に通報していた。しかし、知人が治療を優先させたいとして、私の病院に連れてきたのだった。 当時は、まだ、精神衛生法の時代であったから、任意入院なる入院形態は存在しなかったが、本人も覚せい

      • 精神科病院の使い方

        「病床減」と「なぜ削除」を考察 我が国も感情労働の増加に伴いいわゆるメンタルヘルス疾患も増加の一途である。 しかし、国はその具体策を示せていない。   そこで、今回はメンタルヘルス疾患のための精神科病院の使い方をご紹介しよう。 ★労働を強く意識して罹る精神疾患の方(メンタルヘルス疾患)の入院処遇について よくある質問 Q&A 【Q】労働を強く意識して罹る精神疾患の方は、精神科救急(24時間365日)の非自発的入院の対象となりますか? 【A】原則・対象ではありません。

        • えっ!なぜ削除ですか??

          ★施設基準満たすための医療保護入院の存在明らかに 精神科の入院医療で「モラルハザード」か、厚労省検討会 CBnewsマネジメント2024年8月7日19:40発信 『 本来、任意入院で受け入れるべき患者を、診療報酬の施設基準を満たすために本人の同意なく入院させる医療保護入院として入院させるケースがある~~』と、厚生労働省が7日に開催した「精神保健医療福祉に関する検討会」で、一人の構成員(国立・・・研究センター所属)が明かした。 近年の精神科医療関連の報道の中では久々に筋の通

          結びに再び私ごと、と・・・

          『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より 国の方針に従い、約40年余りの年月をかけ、利用病床300床越を実働病床200床前後へと約3分の1に減床した。その理由とは、1)多くの入院患者を管理するのが面倒だった。2)同世代(昭和の精神科医)が取り組んでいた「社会復帰、開放化」には興味と関心がもてなかつた。3)ただ、精神科疾病構造の変化に目聡かった。つまり「精神病院はいらない」ではなく、「精神科病院の使い方」にこだわってきた、とでもしておこう。

          結びに再び私ごと、と・・・

          精神科疾病構造の変化

          『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より 確かに、以前からすると統合失調症の初発患者の受診、入院は減少している(図①)(*1)。また厚生労働省も近年、長期在院患者の地域移行から多様な精神疾患の対応へと舵を切り替え始めたようだ。だからなんだろうか「精神科スーパー救急病棟」に勤務する看護スタッフが色んな学会、研究会の発表内容の中で、「3ヵ月以内」ではなく「3ヵ月の縛り」といった表現をしている。そして、そんな症例の「3ヵ月の縛り」を要する問題行

          精神科疾病構造の変化

          付属池田小学校事件とスーパー救急病棟

          『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より 付属池田小学校事件は、2001年におきている。犯人は措置入院歴があったが、起訴された上で死刑となった。そして、2016年におきた相模原障害者施設殺傷事件も然りだ(死刑が確定)。加えて、加害者は措置入院時に「大麻精神病」、「薬物精神病」と診断されている。その根拠は「大麻による脱抑制」だそうだ。となると、同じ抑制系薬物のアルコールによる酩酊状態「脱抑制」時の飲酒運転の検挙者は、全て措置入院該当か?これ

          付属池田小学校事件とスーパー救急病棟

          ライシャワー事件とその後

          『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より 1964年(昭和39年)当時のライシャワー駐日アメリカ合衆国大使が精神障害者に襲われる事件が発生した。エドウィン・O・ライシャワーは、幼いころ日本で暮らし、戦前より知日家として知られ、戦後、日本占領政策とその後の復興にも影響を与えた人物だ。当時の日本の為政者には衝撃だったはずだ。その事件後、1965年(昭和40年)、改正精神衛生法が施行され、精神衛生センターの設置、通院医療費公費負担制度が新設され

          ライシャワー事件とその後

          精神衛生法

          『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より 1950年(昭和25年)精神衛生法が施行された。 当時の日本の精神科医療の状況を朝日新聞記者・橋本聡は次のように書き記している。 この「肩代わり」の民間病院の開設は、多くの復員軍医の新たな職場でもあった。彼らは復員後、数年間医学部附属病院の精神神経科医局に所属し、精神鑑定医(現在の精神保健指定医)の資格を取得し、全国各地に精神病院を開設している。だから、精神医療に専門性が高い医師が開設者、病院長

          やはり、「死亡者増(人口減)の前倒し」が影響しているのか⁉

          図表①をご覧いただきたい。2022年、2023年の年間死亡者数は10年以上前倒しになっている。 しかし、この原因について国は明らかにしていない。私的には過剰なCOVID19対策(自粛等)による、高齢者、病弱者の身体面のフレール、加えて精神的には長期間孤独、孤立な環境下に身を置かざるを得なかったため?と勝手に思っている。 ★その影響だろうか?日本精神科病院協会誌2024年8月号で以下の特集を組んでいる。 特集:入院患者数減少の中で積極的に経営転換を進めた病院 巻頭では「長期入

          やはり、「死亡者増(人口減)の前倒し」が影響しているのか⁉

          「レガシー」とやらについて③

          ◎レガシー(legacy)「遺産」、「伝統」、そして「次の時代に受け継がれていくもの」を指す。 ▼断酒会との出会い★長崎市保健所にて 1970年代、久里浜研修に出かける前だったような・・・。あの日のことは、しっかりと覚えている。 「あっ、西脇先生ですね。お忙しい中、私どもの例会に出席いただきありがとうございます」とネクタイをきっちりと締めた、スーツ姿の恰幅のいい中年男性が、笑みをたたえて私を迎え入れてくれた。そして、名刺を差し出して「私は長崎断酒友の会の福川と申します。よ

          「レガシー」とやらについて③

          「レガシー」とやらについて②

          ◎レガシー(legacy)「遺産」、「伝統」、そして「次の時代に受け継がれていくもの」を指す。 ▶次の世代に伝えておきたい物語▼これが依存症治療事始めかな ●ある夜の当直で・・・・・・ 「先生、昨日入院した患者さんが眠れなくて、落ち着かないのです」と、西脇病院の当直室で休んでいた私に、夜勤の看護師がその患者の診察を求めてきた。1972(昭和47)年の寒い師走の夜であった。寝ついたばかりの私はしぶしぶ起き上がり、パジャマの上にそのままズボンとセーター、そして白衣を身に着け

          「レガシー」とやらについて②

          「レガシー」とやらについて①

          ◎レガシー(legacy)「遺産」、「伝統」、そして「次の時代に受け継がれていくもの」を指す。 “ギャンブル依存症対策の今後は?”と読売新聞2024年6月5日付長崎版で大きく紙面をさいて報じていた。これは、2024年ギャンブル等依存症問題啓発週間(5月14日~5月20日)期間中、5月19日(日曜日)に(公社)ギャンブル依存症問題を考える会、並びにNPO法人全国ギャンブル依存症家族の会からの依頼に応じ当院で開催されたセミナーを取材しにきた記者が書いたものだ。掲載のセミナー会場

          「レガシー」とやらについて①

          続2024年精神保健福祉法改正も、やはり時代遅れ

          「精神保健福祉法、改正後初の検討会がスタート 厚生労働省」CBnews 2024年5月20日付。 厚生労働省は20日、精神保健医療福祉の今後の政策推進に関する検討会の初会合を開催した。(略)改正法施行後・・・(略)・・・効果検証を行うとともに、特定の検討課題を設けるのでなく、今後の精神保健医療福祉の課題について幅広く議論を行う。」と・・・早! 確か法改正の施行は2024年4月だったはずだが・・・、効果検証しながらですか!すごいね。 ★「精神科病院への入院形態は、医療保護入院

          続2024年精神保健福祉法改正も、やはり時代遅れ

          どうする依存症対策③

          精神科病院へのよくある質問依存症の入院処遇について Q:依存症は、精神科救急(24時間365日)の非自発的入院の対象となりますか? A:原則・対象ではありません。 但し、うつ病の強い自殺念慮、妄想、双極性感情障害の躁状態による離脱等の場合は、非自発的入院となります。ただ、2023年10月16日、日本精神科救急学会より以下の声明文が出されています。「~人権擁護を基調としており、一定割合の非自発入院を要件とするケアシステムは許容されない。」、「~ケア対象に一定の重症(略)を求め

          どうする依存症対策③

          どうする依存症対策②

          私が依存症研修会で学んだこと ★久里浜にて *1976年、今から半世紀近く前、私は、三浦半島の先っぽの久里浜の海岸を一人の中年男性と歩いていた。今も続いているアルコール依存症研修会の第1回目にどういうわけか私は参加していた。当時、アルコール依存症の治療援助に関心、興味があったわけでもないし、志なるものなどカケラもなかった。とにかくその私とは研修会プログラムの「行軍」に参加している29歳の私だ。「この行軍は堀内(なだいなだ)先生が戦時中在学しておられた陸軍幼年学校の体験から始め

          どうする依存症対策②