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天井の向こう

私は建物に興味があって特に天井を見上げるのが好きです。
ヨーロッパの荘厳な寺院や日本の神社仏閣のそれはここまで凝らさなくともと思うくらい隅々にわたって素晴らしい細工が施されています。

それはあたかもその向こうに神がおわす、新しい世界が広がっているのではないかと感じるものが多くあります。

その場所に佇んで見上げることは自身の中の一本の栓と繋がって時にはそのまま一本の糸で引き上げられるかのような錯覚が起こることさえあります。

歴史と一体になる。そこには私の知らない多くの物語、人々が生きてきた時代の集約。

深い考えはないのですが、ついつい天井を見上げることがあります。
由緒正しい建物以外にも駅の、古い学校の、田舎の民家にも…。

神戸には古い建物が多く残っています。それぞれが大事に保存されています。一つずつが全く違う外見。その通りを散策することはちょっとした森林浴にも似て心が落ち着きます。

この夏訪れた東京。50年前、その地で住んでアパートへの帰り道。少し遠回りですがただその駅舎を見に行くことがありました。

まだまだ世間知らず、東京の大きな渦に飲み込まれそうになるもその空間だけは別世界。周りには大勢の人が行きかう改札口なのに。不思議と無音。

初めて見上げた時の感動は今も鮮明です。
何十年も経っているのにそこはあの時の気持ちが蘇るには十分な美しさと優しさがありました。

しばし見上げているお上りさんのような私を迎えに来た娘が手を振ります。
ふと我にかえってちょっと照れ笑い。駅舎の外には想像をはるかに超える近代的なビル群。皇居の緑はそのままに感動することが少なくなった私の心臓をチクリと刺しました。

その摩天楼の街にそれぞれの故郷に繋がる駅舎は人の心に温かい明かりをきっと灯してくれているのでしょう。

何枚もスマホに入っている写真はたくさんの天井!
人に見せると笑われそうですが、私には大満足の小旅行でした。

今日は朝から曇り空、あまり散歩に乗り気でないニケは雨が落ちるのを待っているように空を見上げています。
「ね!やっぱり降ったでしょ。だから今朝は行かない。」と思っているのかどうか…。

涼しくなったらゆっくり北野辺りを散歩したくなりました。
今日もいい日にしましょう!



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