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自分の癖に気づこう〜小説のちょっとしたコツ
崖っぷち作家のニジマルカです。
小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。
今回は「自分の癖に気づこう」です。
癖は気づきにくい
何作か書いて書き慣れてくると、次第に手癖が出るようになってきます。
いつもどおりの表現や慣れたやり方で書くようになるのですね。
そういった癖がすべて悪いわけではありませんが、癖は気づきにくいので、あまりよくない癖でもそのままにしてしまう場合があります。
基本的に文章はプレーンな方がいいと知っておきましょう。
プレーンな文章とは、読者の記憶に残らない文章だと考えればいいです。
読んで意味がわかったあとは、文章の印象を忘れてしまう感じです。
文章は意味を伝える道具であり、道具はできるだけ透明な方がいいのです。
癖を個性と勘違いしている
たいていの人は、癖を個性と勘違いしています。
もちろん癖や味が個性になることはありますが、最初はごく普通のプレーンな文章を目指した方がいいでしょう。
たとえれば、プレーンな文章は出汁みたいなものです。
出汁が基本であり、味付けは後でいくらでもできます。
個性ばかりを考えているのは、出汁もないのに味だけつけているようなものです。
味噌や醤油をお湯で溶いただけでも見た目はそれっぽいものになりますが、出汁がなければ美味しくならないのはわかると思います。
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癖の例
ところで、癖といってもどういうものかわかりにくいと思います。
私が気づいた自分の癖を例としてあげてみましょう。
プレーンな文章から離れた表現(悪い意味で記憶に残る表現)を何度も使っているなら、それが癖だと考えるといいです。
私の癖はこんな感じです。↓
文章
体言止めを使いすぎる
……、――を使いすぎる
短い主語に読点を打ってしまう
表記のゆれに無頓着
漢字を開きがち
文末を、〜した、〜する、〜した、と過去→現在→過去と順番にする
表現
描写が視覚描写ばかりになる
地の文に心情を書きすぎて、普通の文章なのか心情なのかとっさに区別がつきにくい
視点人物からカメラを離しすぎることがある
主語を使い分けしすぎる(代名詞、名前、役職名などを使う)
登場人物が頻繁に同じ動作をする(息をついたり、歯を食いしばりがち)
複数の人物が同じ言い回しを使うことがある
シーン
シーンの最初がセリフで始まりがち
アクションシーンが長すぎる
章・全体
最終章が長くなりすぎる
設定していないのに伏線ぽいことを書いてしまう
おそらく自分では気づかない癖がまだあるはずです。
自覚しない限り、癖は絶対に直せないとわかっておきましょう。
癖に気づくには
自分の手癖に気づく体系的な方法があるかと言われると、これは難しいです。
常識的には以下のような方法があるでしょう。
プロ作家の小説を模写してみる
信頼できる人に指摘してもらう
(番外)プロの場合はコメントを拾い読みする
1.プロ作家の小説を模写してみる
セルフチェックとしてはこの方法が簡単です。
個性が強い作家さんではなく、文章の癖があまりない作家さんの文章を模写してみるといいでしょう。
あるいは模写までしなくても、作品内のシーンを自分が書くとしたらどう書くだろうか、と考えてみるだけでも妙な癖に気づけるかもしれません。
ただこれはかなり難しいので、できれば次の方法がいいでしょう。
2.信頼できる人に指摘してもらう
信頼できる人が近くにいれば、読んでもらうのが最善です。
小説教室などがあれば、一度行ってみるのもいいですね。
先生に文章のおかしなところを指摘してもらうといいと思います。
小説教室では、他の人の作品も読めるはずです。
少し批判的に読んでみると、文章のアラがすぐに見つかるでしょう。
その部分が自分にも当てはまらないかと考えてみると勉強になります。
同じ人の作品を何度も読んでいると、その人の癖に気づくものです。
互いに指摘しあえると、学びが深まるでしょう。
可能なら、一緒に勉強していける仲間ができるといいですね。
3.(番外)プロの場合はコメントを拾い読みする
プロになると、担当さんはもう文章については指摘してくれません。
ですので、プロになってから癖を直すのはけっこう難しいです。
そういう場合は、アマゾンや読書メーターなどでコメントを読んでみると気づきがあることがあります。
ネガティブなコメントに動揺しないようにして、文章についての指摘がないか拾い読みするといいでしょう。
その指摘をそのまま信じることはありませんが、そういう意見を持つ人がいるのは確かなことです。
自分でも納得できるなら直していきましょう。
素直に直す気がしなくても、時間が経てば「確かにそうだな…」と思えたりするものです。
最終的にはプレーンな文章に戻っていく
文章については、だいたいこんな感じで進むと思います。↓
初心者 :何もわからないので自覚もできない
中級者 :手癖が出たり、文章を工夫し始める
上級者 :普通の文章に戻っていく
私もいろいろ工夫していましたが、結局は普通の文章がもっとも読みやすいのでそこに戻ってきました。
特にアクションシーンの書き方を工夫していたのですが、たぶん、読者にとっては読みにくかったと思います。
おそらく「自分らしく表現しなければ!」みたいに力が入っていたのでしょうね。
プロになると、自分のことより読者のことを考えるので、自然に「普通の文章の方がいいんだな」とわかってきます。
もちろん、中には独自の文体を作って、評価される作家さんもいます。
ですが、そういう人は天才なので、あまり参考になりません。
天才でないなら、文体を作ろうとかそういうことを考えるまえに、ごくごく普通の文章で読者をいかに楽しませるかを考えましょう。
それが健全な考え方です。
今回のまとめ
小説のちょっとしたコツ「自分の癖に気づこう」でした。
癖のない文章とは読者の記憶に残らない文章
まずはプレーンな文章を目指す
癖に気づくには、誰かに指摘してもらうのが最善
プロの場合はコメントを読むと気づきがある
天才でない限り、プレーンな文章で十分
たまには自分の文章を見直して、メンテナンスするのはいいことだと思います。
小説教室が近くにあるなら、上手く利用するといいですね。
それではまたくまー。