中学年のブッククラブで読んだ本
中学年の子どもたちとブッククラブ(読書会)の授業をしました。1冊の本を数人で少しずつ読み、授業で感想を伝え合う学習です。ブッククラブで最も大事だと感じていることが選書です。今回は、選書でこだわっている点や、選んだ10冊についてご紹介します。ブッククラブ向けの本のリストとして参考にしていただくこともできますし、中学年向けのおすすめ本リストとして活用していただいてもよいと思います。
ブッククラブの実践については、こちらの本をご覧ください。
(こちらの本を参考に、自分流に変更して行っています。)
ブッククラブの選書について
ブッククラブでは、私がこのクラスの子どもたちに合わせて選んだ10冊を紹介し、アンケートで読みたい本を第三希望まで出してもらいました。そして3~4人になるように割り振りします。子どもの読書の力と本の難易度や内容を考えてグループ分けします。
1冊の本を数回に分けて読むため、お話の展開が単調なものや、終わりが簡単に見通せるものは避けるようにしています。『読書家の時間』の本では、どこまで読むかの区切り方は子どもたちで決めますが、今回は3年生で行うということや、初めてのブッククラブだったということもあり、私の方で読み方の区切りを決めました。
私がブッククラブで扱う本を選ぶ基準は
(1)子どもたちに取って適度な長さの本
(2)先が気になるような展開になっている本
(3)読み終わった後も、終わり方や教訓などについて話したくなる本
この3つです。
私が選んだ10冊
①『クツカタッポと三つのねがいごと』
(エミリーロッダ・作/さくまゆみこ・訳/たしろちさと・絵 あすなろ書房 2009)
初めてのブッククラブに最適な本だと思います。お話の展開が予想外であることと、お話が5つに分かれているというところがポイント。(私は1冊の本を5回に分けて読む授業にしているため。)教科書が読める子なら、この本は読めるはずです。読書が苦手な子も楽しめるおすすめ本です。
※ただ、今回のブッククラブでは、この本を選ぶ子がいなかったので、使用しませんでした。
②『なんでももってる(?)男の子』
(イアン・ホワイブラウ・著/石垣賀子・訳/すぎはらともこ・絵 徳間書店 2010)
お金持ちの何でも持っている男の子フライが、普通の子ビリーにいろんなことを自慢しようとするのですが、フライは逆にビリーのことがどんどんうらやましくなってしまうというお話の展開。お金持ちのフライの心が満たされないのはなぜなのか、子どもたちの間で話し合われます。お話が分かりやすく、主題も子どもたちに共感できるものなので、ブッククラブにぴったりの本でした。徳間書店の本はよい本がたくさんあります。他にもこの時期の子どもたちにおすすめしたいものがあるので、吟味していきたいです。
③『消えた時間割』
(西村友里・著/大庭賢哉・絵 学研プラス 2018)
最近知った本です。学校が舞台になったお話。こぼれた墨汁が時間割にかかってしまうのですが、それがきっかけで不思議なことが起こります。こどもたちは、この謎について疑問をもちながら読んでいきました。問いが、その謎だけになってしまうと話し合いが深まらないので、登場人物1人1人の心情や心の成長についても着目するよう、声かけをしながらブッククラブを行いました。
④『ココロ屋』
(梨屋 アリエ・作/ 菅野 由貴子 ・絵 文研出版 2011)
この本は、3年生のブッククラブに使ったのが2回目ですが、2回ともとても良かったです。子どもたちから問いが出てきやすいし、その問いが主題に迫るもので自然と読みが深まります。挿絵や表紙の絵に関する想像も広がって、教師の介入なしでも、ブッククラブがちゃんと成立します。すごい本だなあと思います。
⑤『そいつの名前はエメラルド』
(竹下文子・作/鈴木まもる・絵 金の星社 2008)
こちらもブッククラブ2回目の使用でした。こちらも、本当に良い話。そして、ブッククラブが盛り上がる本です。毎回、次はどうなるんだろうと読みたくなる展開で、話し合いのテーマも次々に子どもたちから出てきます。ラストが、ちょっと切ないところも魅力!
⑥『きまぐれロボット』
(星新一・著/和田誠・絵 理論社 1999)
このグループだけは、「ここまで読む」というルールではなく、1回目はこのお話、2回目はこのお話…というふうに5つのお話を選んで読む形式にしました。文章が短いのですぐに読み終わりますが、お話に込められたテーマやユーモアを読み取るには、読解力が必要なので、若干話し合いに難しさがあった様子でした。授業の組み方を考えなければ…と思います。でも、この本自体の魅力は子どもたちに伝わっていたようで、授業後、手に取っていた子がたくさんいました。
⑦『竜の巣』
(富安陽子・著/小松良佳 ポプラ社 2015)
タイトルから、「読みたい」と希望した子が多かった本です。竜やカエルの子、主人公の少年(おじいちゃん)の人物像や行動の理由などがグループで話し合われました。また、「自分ならどうする?」というキーワードも使って話し合いをしていました。文庫本ですが、気軽に読めるボリュームで、読書への自信がついたようです。
⑧『紳士とオバケ氏』
(たかどのほうこ・著/飯野和好 フレーベル館 2001)
たかどのほうこさんは、絵本ややさしいよみものでも人気の作家さんなので、リストに入れました。実際、アンケートでこの本を選んだ子は、たかどのほうこさんの絵本に親しんだ子どもたちでした。ただ、グループ編成の過程で、この本のグループが成立しなかったので、ブッククラブでは使用しませんでした。いつかこの本でブッククラブをしてみたいです。(本の装丁のイメージに比べて、文章量が多いです。)
⑨『びりっかすの神様』
(岡田淳・著 偕成社文庫 2006)
名作中の名作。岡田淳さんの本はブッククラブのリストに必ず入れたいと思っていました。教室が舞台になったお話だと子どもたちは読みやすいかなと思って、これにしました。深いテーマが含まれている本書。3年生の発達段階からすると、子どもだけで読み深める問いを見つけるのは少し難しそうでしたが、こちらから問いかけてあげることで、話し合いが活性化しました。
⑩『ハンカチの上の花畑』
(安房直子・作/岩淵 慶造・絵 あかね書房 1973)
これは、とてもブッククラブ向きでした。古くからある本ですが、ちっとも色褪せないというか、読者の心を捉えて離さない物語展開に改めて魅力を感じました。このグループの子どもたち、とても熱心に問いを出しながら読んでいましたし、話が絶えることがありませんでした。物語の終わり方についても、いろいろな意見が出ておもしろいブッククラブになりました。高学年のブッククラブでも使えそうだと思いました。
終わりに
ブッククラブの授業は、とても楽しかったです。この選書のために、年間300冊を目標にして児童書の読書をしています。そのせいもあって、今年度、読書会ができたことがとてもうれしいです。3学期も行う予定です。
子どもたちに良書を薦めてたいですね。そして、その本のおもしろさを味わってくれたらとてもうれしいなあと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。