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参加型・イマーシブ・即興沼の世界
最近話題の「イマーシブ」
平たく言えば「参加して当事者として楽しむ」こと。
「演劇」は第三者として眺めているだけだけど、「イマーシブ」はその世界にひとりの登場人物として存在することが出来るんだ。
どう? 想像したらわくわくしない?
私が初めて体験した「参加型舞台」は、人狼TLPTこと、人狼ザ・ライブ・プレイング・シアター。
カードゲームの人狼を実際にカードを引いておいて舞台上でプレイするんだけど、ひとりひとりに「人格=キャラクター」や「人生=設定」が乗っている。
だから愛するひとを疑わなくてはならなかったり、仲間同士で殺し合わなくてはならなかったりして、壮大なドラマが生まれるんだ。
役職がカードで決められる人狼ゲームだから、オープニング以外は全て即興。
凄いと思わない? 90分~150分ほどの公演を、全て即興で演じきるんだ。
誰かがぽつりと言った言葉をみんなしっかり覚えていて、のちに広げたり伏線回収したりして、キャストさんのクレバーさに脱帽する。
そして参加するのは、あらかじめ配られている解答用紙に、人狼・狂陣・予言者・霊媒師・狩人などの予想を書くこと。
ただゲームを眺めるだけでなく、人物ひとりひとりの言動を舞台上と同じように観察・推理することで、楽しみは何倍にもなる。
当たったら特別なグッズが貰えるよ。
観客は公演ごとに微妙に違うけど「墓トモ」と呼ばれ、先輩幽霊の設定で夜の間、処刑されたキャストのフリートーク「幽霊タイム」を楽しむことが出来る。
台詞を言ったり役者さんと対峙する必要がないから、参加型としてのハードルは低いと思う。
参加型初めてのひとにお勧めだ。
公式HP:https://oracleknights.co.jp/jinrou-tlpt/
そして最近にわかに注目されているのが「イマーシブ」
その言葉がまだメジャーになる前、東京ワンピースタワーでイマーシブシアターを観たよ。
正直、「没入型舞台」と言われても体験するまではよく分からなかった。
始まると、キャラクターがキャラクターとしてあちこちに点在する。
私はゾロが一番好きだから、一生懸命ゾロを探したよ。見付けると、ゾロらしく昼寝してた。
そこにサンジがやってきて……という感じに、フロア内をキャラクターが自由に歩き回ってストーリーが展開していく。
観客も自由に歩き回っていい。カジノや遊びなど、突発的に発生するゲーム的要素に参加してもいい。
私はゾロを追いかけた。距離一メートルのところをゾロが歩き、ひとつの部屋に入って刀の修行をしたりする。サンジと、おなじみの喧嘩をしたりもする。
楽しい! 客席と舞台の境目がなく、至近距離で物語が観られるのがとてつもなく楽しかった。
ゲーム的要素には参加せず他の方がやっているのを眺めて楽しんでいたが、サンジがひとくちで食べられる軽食をトレイに乗せて配り始めたので、せっかくだからとひとつ貰って頬張った。美味しかった!
ところが遅れてルフィがやってきて、トレイが空なのを見て怒り、お前が食べたんだなーっ! と私を指差した。
台詞はなくサイレントなので、私も思わずサイレントで首をぶんぶんと横に振って慌てて否定した笑
まんまと参加させられてしまった訳だが、必要以上に絡みに来ることもなく、ちょうどいい参加感だった。
初めてのイマーシブは大好きな世界観だったこともあって、いっぺんに「イマーシブ」の虜になった。
この公演はダンスカンパニーDAZZLEのプロデュースで、DAZZLEでは今でも常設でイマーシブシアターをやっているから、昔からやっていた本物の「イマーシブシアター」に興味のあるひとにはお勧めだ。
公式HP:https://dazzle-tokyo.com/
そして今話題なのが「イマーシブ」フォート東京。
凄く! 楽しい!
パーク内はイタリアの港街という設定で、住民(キャラクター)がおかえり! と待ってくれている。※この住民は居なくなるらしい。残念。
パーク内を巡回するだけでも、住民による突発イベントが頻繁に起こって楽しめた。
特に好きだったのは人質になったり人質を救出したりするイベントや、レストラン襲撃。
ゲストがマフィアや軍隊にスカウトされて、レストランを襲撃する側と取り締まる側に分かれてレストランに集結する。
なにも知らずにレストランで食事をしていたひとは、それに巻き込まれて肝を冷やすという寸法だ。
個人的には、軍隊の訓練に参加したのが面白かった。
麗しい女性隊長の号令のもと、走らされたりトレーニングをさせられる。
いい歳なので目を盗んでは適度にサボったが、結構よく見ていてバレると細い棒状のムチ(痛くない)でぺちぺちされてハッパをかけられたりする。
ドMのひとは開眼してしまうかもしれない笑
特に優秀だった者には星形のバッジが配られるのだが、いい歳なのにがんばったのが評価されたのか、若い子たちに交じって壇上で貰ってしまった。
このバッジが訓練生の中でも優秀な者の証というのは街のみんな(キャストさん)が知っていて、その日は何処に行っても「街の平和を守ってください!」と頼られて年甲斐もなく嬉しかった。
キャラクターの中には陽気なゲイバーの店主も居て、行く度にバーに何回も寄るのだが、レアキャラらしくて会うことは叶わなかった。
もし会えてお話し出来たら、こんな相談がしたかった。
「好きなひとが居るんですけど……気が付いて貰えなくて。どうしたらいいと思います?」
散々相談したあげく、こう告白する。
「その好きなひとは……あなたです!」
でも店主はゲイなので叶わぬ恋なのだ。一体どう返事をしてくれるかなと楽しみにしていたものだった。
有料アトラクション(イマーシブ体験)もとんでもなく楽しいが、入るときに「内容を口外しない」という誓約書にサインさせられてしまうので、中身は内緒。
ただ何回同じアトラクションに行っても、イマーシブ体験の数は百以上と記載されていたかな、行く度に違う体験が待っている。
「最近流行りのイマーシブとやらを体験してみたい」と思っているなら、イマーシブ・フォート東京が一番のお勧めだ。
公式HP:https://immersivefort.com/
この沼は深い。
なにしろ何回行っても絶対「参加」出来て「没入(イマーシブ)」出来て「即興」だから毎回違う体験が味わえる。
演劇と違って「一回観たからいいや」とはならない。
慣れてきたらキャストに、設定に沿った質問をしたり、世間話をしてみるのもいい。
その度にまた違った体験が出来るのだ。
大人しくしていても充分に楽しめるけど、積極的になればなるほど楽しめる。それがイマーシブ沼。
一回行ってみて。試しに。騙されたと思って。
しめしめ。いや、ごほん。
共に沼に沈もうではありませんか。こんな楽しい沼はなかなかありませんよ!
圭琴子(けいことこ) #ハマった沼を語らせて