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和製英語の功罪〜ことばの歴史

                              加藤 麻子

カタカナ語
外国から新しいモノやコトや概念が輸入されると、日本語はそれを外国由来と分かるように「カタカナ」で採り入れてきた。そこからさらに派生して違う意味の言葉になったり、「カタカナ語」を組み合わせる等して「和製英語」が生み出された。そのおかげで、元来日本で使われていた「和語」(漢語が輸入される前に使われていた大和ことば)の表現が大変豊かのものに発展していき、「カタカナ語」は今や立派な日本語の一部となったのである。

こういった言葉の変遷は、何も日本語に限ったことではない。英語の歴史を見てみると、非常に多くの言語に由来していることに気づく。学生時代に英語史を学んだことがあるが、今でも覚えているのが11世紀のNorman Conquest(フランスのノルマン人によるイギリスの征服)により大量のフランス語が英語に入ってきたと言う史実。被征服者である牛飼いは牛をcowと呼ぶが、食卓でそれを食する支配者層はフランス系なので beefと呼ぶといった具合だ。現在の英語は「5世紀から11世紀の間にアングロサクソン人のゲルマン語が母体となって、ラテン語、フランス語、古ノルド語の影響を受けてでき上がっていった」(出典: Wikipedia)とされている。グローバル化の進む現代においては、影響力の大きな国や人や業界から次々と新しい言葉やコンセプトが入ってきて、定着したり消えたりしていく運命にある。

百年後の日本語
和製英語について興味深い特徴の一つに、英語の品詞を自在に変化させて日本語に採り入れてしまう手法がある。例えば、英語の creative という言葉は「創造的な」という形容詞であるが、日本の広告業界で日常的に使われている「クリエイティブ」は名詞として確立している日本語だ。クリエイターによって考案、計画、制作されたコンテンツのことである。高齢化社会の日本で最近よく耳にする「フレイル」もそうだ。英語のfrailは「虚弱な」と言う形容詞だが、医学用語 フレイルは frailtyの訳語として名詞の形で一般にも定着しつつある。フレイルとは、高齢者が健常から要介護へ移行する中間の段階のことだ。生演奏の「ライブ」やホテルの「フロント」も英語では形容詞だが、日本語の名詞として定着して久しい。

英語でも日本語でも、名詞を動詞化するのはよくある話で、最近では "Google it."「ググろう。」と言ったりする。個人的には、こちらはそれほど違和感は感じないのだが、形容詞の名詞化はなかなか慣れない。しかし、言葉は生き物だから使い手によって変化していくのは自然な流れなのかもしれない。100年後の日本語を想像してみると、今私たちが使っている日本語が、明治時代の日本語のように感じられることは間違いない。昔、Googleという会社があったので、ネット検索することをgoogleという、という語源解説がなされるのかもしれない。これからも永遠に続く言葉と文化の交易を楽しみたい。

            (2021年6月11日)

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