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LAを愛した天才、リンチ監督の訃報

(※ネルソンによる2025年1月19日配信のニュースレター記事です)

また偉大なアーティストが亡くなりました。

アメリカンシュルレアリスムの巨匠、デヴィッド・リンチが先日、2025年1月15日に78歳で逝去されました。その死因はまだ発表されてませんが、本人は2024年8月に長年の喫煙が原因で肺気腫を患っていることを明かして、酸素吸入が必要な状態だったそうです。

超ヘビースモーカーとしても有名でした。それでも78歳まで生きるって結構長生きしてくれました。

やっぱり悲しいですね。彼の独特なストーリーテリング術は本当にオンリーワンでした。真似したくても真似ができないような滅多に現れない真のアーティスト。

デヴィッド・リンチは1946年、モンタナ州ミズーラに生まれ、お父さんの仕事でアメリカを転々とする生活を送り、大学時代にフィラデルフィア美術館で培った独特の視覚感覚が後の映像表現につながります。

ティム・バートンのように、幼少期の経験が作品に大きく影響を与えて、アメリカの郊外生活の中に潜む奇妙さや不気味さが持ち味の一つです。

リンチの最大の魅力は、夢のような世界観を具現化する能力にあると思います。現実と幻想が曖昧で、視聴者は不安と魅惑が妙に交差する世界に吸い込まれていきます。

皆さんもご存知かと思いますが、デヴィッド・リンチの代表作といえばこちらです。

『イレイザーヘッド』(1977年)

リンチの長編デビュー作であり、モノクロの超現実的ホラー。難解でシュールな映像表現が特徴的。

『ブルーベルベット』(1986年)

一見平穏な田舎町の裏に潜む暗黒世界を描いたミステリースリラー。リンチの作風が広く認知されるきっかけとなった作品。

『ツイン・ピークス』(1990年-1991年)

小さな町ツイン・ピークスで起こった殺人事件を巡るテレビシリーズ。独特の世界観とキャラクターは後のテレビドラマに多大な影響を与えました。

『マルホランド・ドライブ』(2001年)

ハリウッドを舞台に、記憶を失った女性と新人女優が織りなすミステリースリラー。その複雑なストーリーにはいろんな解釈があり、何度見ても圧倒される傑作。

最後に、デヴィッド・リンチがロサンゼルスの好きな理由を述べた文章をシェアします。

I came to Los Angeles from Philadelphia, where I had lived for five years, attending art school. Philadelphia is known as the City of Brotherly Love, but when I was there, it was a hellhole. There wasn’t a lot of love in that city.
私はフィラデルフィアからロサンゼルスにやってきました。フィラデルフィアでは5年間、アートスクールに通いながら暮らしていました。フィラデルフィアは『兄弟愛の街』として知られていますが、私がそこにいたときは地獄のようでした。そこには愛などほとんど感じられませんでした。

I arrived in L.A. at night, so it wasn’t until the next morning, when I stepped out of a small apartment on San Vicente Boulevard, that I saw this light. And it thrilled my soul. I feel lucky to live with that light.
ロサンゼルスに着いたのは夜で、翌朝、サンビセンテ通りの小さなアパートを出たときに初めて、この光を目にしました。その光は私の魂を震わせました。この光と共に生きられることを幸運に思います

I love Los Angeles. I know a lot of people go there and they see just a huge sprawl of sameness. But when you’re there for a while, you realize that each section has its own mood. The golden age of cinema is still alive there, in the smell of jasmine at night and the beautiful weather. And the light is inspiring and energizing.
私はロサンゼルスが大好きです。多くの人がロサンゼルスを訪れて、ただの広大で単調な街だと思うかもしれません。でも、そこにしばらくいると、それぞれのエリアに独自の雰囲気があることに気づきます。夜のジャスミンの香り、美しい天気、そのすべてに黄金時代の映画の精神がまだ息づいています。そして、その光はインスピレーションと活力を与えてくれます。

Even with smog, there’s something about that light that’s not harsh, but bright and smooth. It fills me with the feeling that all possibilities are available. I don’t know why. It’s different from the light in other places. The light in Philadelphia, even in the summer, is not nearly as bright. It was the light that brought everybody to L.A. to make films in the early days. It’s still a beautiful place.
スモッグがあっても、その光には厳しさはなく、明るくて柔らかな何かがあるんです。その光は、すべてが可能であるという感覚で私を満たしてくれます。それがなぜなのかはわかりません。でも、他の場所の光とは違うんです。フィラデルフィアの光は、夏でさえそれほど明るくありませんでした。ロサンゼルスの光こそが、初期の時代に多くの人々を映画制作のためにこの街に引き寄せた理由なんです。そして今でも、この街は美しい場所です。

歴史的な山火事のタイミングで亡くなるのも、なんだか意味を感じるものがあります。

Rest in peace, David Lynch.

今日は『ブルー・ベルベット』を見よう。


今回掲載の無料記事は2025年1月19日に配信されたニュースレターの一部です。『日本語JōZUですね!』ポッドキャストのパトレオン有料会員向けに毎週日曜日にニュースレターを配信!気になる方は是非パトレオンをチェックしてください♪

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