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「老人:人手不足の未来」

老人マシーン

朝4時、この時期はもう明るい。
起き上がりたい気持ちはある。
けど私は布団から起きれない
体のあちこちが痛む。
目が霞んで天井もぼんやりとしか見えない。

私は来月、85歳。
まだ
働いてる。
年金受給開始まであと5年。
きつい。


家族はいない。
最初から独り身。
今の時代そんな者はそこらじゅうにいる。
私の住んでるこのアパートもほとんど高齢者だ。

高齢者は介護される。
国民総介護法が制定された。
けど、2024年頃の介護とはまるきり別モノだ。
介護を必要とする高齢者を支援し、
さらに働けるよう手助けし社会に半強制的に送り出すことを意味する。


朝になると介護施設から職員がやってくる。

「おはようございます。
具合はいかがですか?
ああそうですか。
では薬を多めに入れておきますね。
さあ、今日も働きましょう」

介護職員が私の関節やら首筋やらいたるところに
良く分からない薬を打つ。
その注射さえ打てばたとえ腕がひきちぎられようがたいした痛みはないという。

確かに痛みが和らいでいく。


職員は寝ている私の体のいたるところに器具を装着していく。
私の腰はひびがはいっている。
それをサポートする補助機器を装着。
ただの補助具ではない。
AI回路が埋め込まれたメカニカルな補助具だ。
おそろしい力を発揮することさえ可能。
・・・
連動する補助具を腕や膝、首のあたりにも取り付け完了。

「さあ
労働に行きましょか?」

布団から起き上がる。
「そういえば
目が霞んでよく見えないんだが」
・・・
「困ったね!?水晶体交換やる~?」
施設職員がバックに手をかける。

「いや、、今日はやめておくよ・・
なんだか怖い。
いつものレンズで補強をお願いします」

何をされるかわかったもんじゃない。
布団から起き上がる。
補強器具を使い強引に動いてるのだ。
薬と補助器具のメカニカルな補助により痛みを感じることはない。

働かなければならない。
働く意思がある高齢者が介護施設に

登録できる

働く意思がないものは
持ち物を没収され、住む場所を追われ
特別な場所に収監される。
ホームと呼ばれる場所。


けれどもそこにはいったら、いよいよ終わりを迎えるのを待つだけだ。そのような処置がされる。
円形状に何段にも円をつくり寝ている意思なき高齢者。
その真ん中には集団墓地が設置されている。
いやもっと雑なのかもしれない。
大型の骨壺。


どうして高齢者がサイボーグのようになってまで仕事に従事するかといえば、労働者人口の激減でエッセンシャルワーカーが不足しているからだ。

街のゴミ収集、物流ドライバーなど、高齢者が補助器具を装着し職務についている。
いくら補助具が優秀であってもサイボーグのような体の芯になってる部分は、痛んでどうしようもなくなった老人の体。
感覚を麻痺させて働いてる。
しかし補助具さえあれば腕がちぎれていようが足がなくても

働くことが可能

先日超高齢トラックドライバーが走行中、脳梗塞を起こした。
けれども事前に回路がそれを察知し介護施設に連絡。ドライバーの目のあたりにつけられたカメラと強制的に稼働する補助具の力もあり、トラックは道路わきに停車した。
気絶しても運転姿勢は補助具で保たれるのだ。
もちろんさらに車自体の自動運転も働いている。


死の直前までとりこぼしなく労働に従事させられる。

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