投資部 #2 キャッシュフロー計算書
今回は、キャッシュフロー計算書 (以下、C/S: Cashflow Statement) のチェックポイントを深掘りします。
[お断り事項]
※ WIP としている項目は、作成中のため追って編集します
そもそもキャッシュフロー計算書って何?
保有するキャッシュ (カネ資産) が、決算期間でどれだけ増減したかを示す計算書類です。
資産を大別すると 「カネ資産」 と 「モノ資産」 があります。
財務三表で資産全体を見るには B/S を確認しますが、カネ資産に特化したのが C/S で、キャッシュ以外の資産の増減を一切無視して作成する計算書類です。
キャッシュの定義
キャッシュとは下記の 3つを言います。
現金
いつでも払い戻すことができる預金
当座預金、普通預金、通知預金など要求払い預金
まもなく満期をむかえる定期預金
満期まで 3か月以内のものに限る
なんで重要視されているの?
デフレにより、カネ資産の重要性が増したことが大きな要因といえます。
高度経済成長期、バブル期の不動産投資の過熱ぶりを思い浮かべてください。
いわゆる好景気で、モノの価値がどんどん上がり、カネの価値が相対的にどんどん下がるインフレの状態です。
このような状況下では、価値のあがるモノ資産として運用せずに、ただカネ資産のまま保持すると、資産は相対的に目減りしてしまいますよね。
好景気でインフレになっている時は、カネを 「これから価値が上がるモノ」 に変換して運用することが、資産拡大につながります。
なので、あくまでも返済能力の範囲内でどんどん借りて、価値があがるモノ資産に変換するのは当然の流れで、財テクが流行りました。
逆にデフレでは、モノの価値が一向に上がらず、どころか下がり、カネ資産の価値は相対的に高くなります。
このような時代に、モノ資産取得のためにカネ資産を借金で賄うのは、返済の負担が大きいし、モノの価値は下がるどころか経年劣化もしていき、そういったリスクを高く抱えることになります。
なので、経営がデフレ時に問われるのは、キャッシュを自前で高い水準に保つ手腕ともいえます。
また、不景気、デフレ経済になって久しい日本では、不況にあえぐ企業による粉飾決算も度々ニュースを賑わせてきました。
C/S は、キャッシュという明確なファクトに裏付けられることから、P/L にくらべて嘘のつきにくい資料です。
つまり、P/L よりも経営状況を正直に語る資料です。
ということで、C/S は日本では 2000年に制度化されました。
中世ヨーロッパの商人が編み出した T字フォームの試算表にもとづく B/S、P/L に比べれば相当に歴史の浅い計算書類ですが、瞬く間に B/S、P/L と肩を並べ財務三表として重要視されるようになったのには、こういう背景があります。
きっと、投資先でのキャッシュの動きが知りたくなってきましたよね。
これを知るための資料、キャッシュの動きに特化した確認書類が C/S です。
キャッシュフロー計算書の構成
C/S には 「営業活動によるキャッシュフロー (以下、営業CF)」 「投資活動によるキャッシュフロー (以下、投資CF)」 「財務活動によるキャッシュフロー (以下、財務CF)」 の 3つの項目があります。
営業活動: 当期の利益を獲得するための活動
投資活動: 将来の利益を獲得するための活動
財務活動: 不足するキャッシュを補うための活動
これら 3つを合算して、キャッシュの増減を知るための書類が C/S です。
額面年収 600万円 (手取りは 8 掛け想定、480万) の家計をイメージしたのが下図です。個人におき直すとワガコトとしてイメージしやすいかと思うのでどんなストーリーが背景にあるか想像してみてください。
記載のルール
「直接法」 と 「間接法」 があり、日本の会計基準ではどちらを採用してもよいルールです。ただし IFRS が直接法なので、推奨されているのは直接法です。
直接法
収支の全貌が把握しやすく見やすいという特徴があります。
また、今後のキャッシュフローを予測するのに便利という利点もあります。
間接法
現在のところ日本の企業で多く採用されているのは間接法です。
作成が容易なので、実務的にも低コストで済むという側面があります。
その他の優れた点として、まず P/L にある 「税金等調整前当期純利益」 の記載があり、続けて減価償却費や引当金の増減額といった 「調整項目」 が並ぶため、P/L と C/S と乖離している原因が一目瞭然です。
営業CF の最上段にある税引前利益が黒字なのに、営業CF が赤字になっている様な場合は、どこの項目が原因になっているのかが重要ですが、これを掴みやすいのです。
減価償却費の扱い
減価償却費は、営業CF を計算する上では加算項目となっています。P/L で減算されることの調整なので P/L とは逆の動きになることがポイントです。
減価償却費
有形固定資産 (建物、機械装置など) を使用したことで生じる費用です。
たとえば 10年の期間で廃棄処分される 10百万円の機械装置が合った場合、毎年 1百万円ずつ資産が徐々に費用に転化していき、その機械装置が廃棄処分される頃には資産額がゼロになっているということです。
これによって計上された費用が減価償却費です。
P/L 上は、収益から減価償却費を引いて利益を計算するので節税効果があります。
これは固定資産つまりモノの減少を意味しており、実際にキャッシュは減少するものではありません。
よって営業CF の計算では、調整するために加算することになるのです。
これが、P/L は黒字なのに C/S は赤字、P/L が赤字なのに C/S が黒字になる理由です。
棚卸資産
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キャッシュフロー計算書で見るべきポイント
まず見るべき点は、たったの 2箇所です
営業CF
投資CF
上記 2つを合算したフリーキャッシュフローがプラスかマイナスかを確認し、マイナスである場合は、その原因が何かを探ることも重要です。
フリーキャッシュフロー (以下、フリーCF)
資金力の強弱を示す用語です
会社が自分で稼いだお金のうち、自由に使えるものなので、大きければ大きいほどその会社はお金を稼ぐ力が強いとみなせます
フリーCF がプラスの会社は、有利子負債の返済原資ができるということなので、借金の重さを軽減していけます
逆に、フリーCF がマイナスの会社は 「事業で稼ぐお金よりも、事業を維持するために出ていくお金のほうが大きい」 会社です
失ったキャッシュを 「財務活動」 によって補わないといけない状況に陥ります
この状態がつづくと、いずれ会社経営が行き詰まってしまいます
デフレ期においてフリーCF がマイナスの会社は不利です
計算方法は何種類かの方法があり、統一はされていません
実務上もっとも簡便なのは、営業CF と投資CF の合算値をフリーCF とみます
(フリーCF = 営業CF + 投資CF)
とにかく試算表や、B/S、P/L でもお伝えしたように、細目は後回しし、目立つ内容から見ていくのが決算書を見るコツです。
経営状況が健全かどうかの判別ポイント
営業CF がプラス
投資CF はマイナス
ただし、営業CF を帳消しにしない範囲に収まる
つまり、フリーCF がプラスである
財務CF はマイナス
フリーキャッシュフローがマイナスになる原因
営業CF が赤字である
まず普通に考えられるのは、P/L の利益が赤字だから 営業CF がマイナスで、結果としてフリーCF もマイナス
P/L は赤字でも、営業CF、フリーCF が黒字というケースもありえます (たとえば、減価償却費が大きい場合)
要注意なのは、P/L が黒字にもかかわらず、C/S では赤字になっているケースです (たとえば、棚卸資産、仕掛品が多い場合)
P/L と C/S で差がある場合は、C/S の方で判断する方がいいです
なぜなら、C/S はキャッシュという明確なファクトであるカネ資産に裏付けされるために嘘をつくのが難しい一方で、 P/L は帳簿上で操作できるために 「循環取引」 など粉飾による黒字の可能性があるからです
厳しい競争にさらされており、マイペースに経営できない
営業CF がプラスなのに、投資CF が大きくマイナスとなった結果としてフリーCF がマイナスとなっているケースならば、事業の競争がきわめて激しい可能性があります
もしかすると、競争力をもつためには、ムリをしてでも設備投資をせざるを得ない状況に追い込まれている可能性が考えられます
投資活動については、経営者によって意思決定できるものなので、極端な話、投資をしたくなければ一切投資をしないという選択もできるにもかかわらず、借金をしてでも投資活動を行う場合は、それなりの事情があると見ることができる
今回のまとめ
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今回は以上です。
(最終更新: 2023/3/16、WIP の挿絵など順次差し替えていきます)
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