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歴史は繰り返す。デザインも繰り返す。レトロな広告『ホーロー看板』の魅力とは?
「撮り直せないのが逆に特別感がある。」
「アナログ感がエモい。」
デジタル化が声高に叫ばれる現代において、チェキが再流行している。iPhoneなどの本来はカメラ業界がそこまで警戒する相手でなかったはずの携帯電話に自らの領域を荒らされ、チェキなどのインスタントカメラ類は絶滅の一途を辿ると思われた。しかし、携帯のカメラにはない味と特別感がどうやら若者のお眼鏡にかなったらしい。
こうした歴史遡行的な動きは「広告・看板」の世界でも頻繁に見られるようになってきた。ホーロー看板。現代の街中ではそこら中にあるものとはお世辞にも言えないので、名称と物自体が合致しない人も多いかもしれない。ホーロー看板とは、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で描かれるような、どこか懐かしみ・親しみを覚えてしまうあの看板のことを指す。
写真: ホーロー看板
ホーロー看板はその全盛期に生きた者でなくとも、なぜか懐かしいと感じさせてしまう。そうした人々の感情に目をつけたのが「ボンカレー」でお馴染みの大塚食品である。今年3月に同社は、発売当時に使用されていたホーロー看板を新パッケージとして再現した。ボンカレーの顔・松山容子の破顔を中央に添えたそのデザインは人々の購買意欲をこれまでにない角度からくすぐる。
写真: 当時のホーロー看板を再現した新パッケージ
時代を超えて愛されるホーロー看板的デザインの源泉は何なのであろうか。本来であれば現代の若者たちがこういったデザインに心惹かれるいわれは無い。ただ、忘れてはいけないのが、既に我々はホーロー看板的デザインが懐かしく、親しみのある古き良き日本の象徴であると思い込まされる環境に生きているのである。
良き昭和時代を描く映像作品上で象徴的に用いられるホーロー看板。あるいは日本史の教科書にて当時の日本の文化的および経済的な活発性と華やかさを表すものとして取り上げられるホーロー看板的デザイン。我々は気づかぬうちに一つのデザインを「懐かしく、良い」と感じさせられてしまう社会に置かれているのである。
写真: 日本史資料集に掲載されている、ホーロー看板的デザインによって
慶賀性・正当性が強化された紀元2600年式典のポスター
かつて評価されていたものが再流行するという現象の背景には、人々への無意識的な刷り込みによって蓄積された集団好感度の爆発という大きな要因がある。この刷り込みが教育のプロセスに組み込まれてしまえば、その"もの"が流行していた時代に生きていたか、いないかという点はもはや関係がない。ここに謎の「懐かしさ」の原因がある。
ただ少し発想を変えると「昔に流行したものの図鑑」という側面において、歴史の教科書はこれ以上ないビジネスアイデアの宝庫かもしれない。
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【余禄】
今回のテーマは「ホーロー看板」と「まがい物」でした。大塚食品が昔のデザインを流用したパッケージを作っていたので、『ホーロー看板としての本物ではない』という点のみに注目して「まがい物」と捉えてしまいましたが、ちょっとまがい物というのは言い過ぎかもしれません。本家ですし。
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参考文献
- 黒田日出男: 『図説 日本史通覧』, 帝国書院
- J-CASTニュース: 『見たことある!あのホーロー看板を再現 「元祖ボンカレー」』, 2020年2月28日, https://www.j-cast.com/trend/2020/02/28380795.html