第34回: 重油船座礁事故のモーリシャスは「アハ体験」の宝庫だった?! 七色の大地に海中の滝、 ファンタジーすぎる神秘を解剖する
SF/ファンタジーのジャンルを愛するものは大きく二つに区分される。「フィクションだから良い」派と「ぜひ現実にも同じ技術や世界を創ってほしい」派である。
私個人は完全に後者だが、もしあなたが前者かつ過激派であるならば、この記事は読まない方が良いだろう。なぜなら、本記事はこの地球に実在するあまりにファンタジーすぎる場所について書かれているからだ。現実を捨てきれない諸君には刺激が強い。十分に気をつけたまえ。
⬛️ そもそも「アハ体験」とは何か?
本記事のタイトルには「アハ体験」という言葉が含まれている。聞いたことのある者は多いだろうが、その正確な定義については自信を持って説明できないのではないだろうか。
日本において「アハ体験」は、脳科学者である茂木健一郎氏によって、広く認知されるようになったと言っていい。日本テレビ「世界一受けたい授業」などでたびたび披露される"アハ体験の体験"は読者の諸君も楽しんだのではないだろうか。
(写真: 左・茂木健一郎氏, 右・引き合いに出されがちな騙し絵)
茂木氏のアハ体験は動画内で変化するものを見つける、間違い探し的な文脈で用いられている。しかし、これはテレビ用にデフォルメされたものであると言っていい。
真なるアハ体験の意義を紹介するとき、よく引き合いに出されるのがニュートンである。彼は落ちたリンゴを見て、万有引力の法則に気づいた。このような「知覚」(落ちたリンゴを見る)から突飛に、「ひらめき」(万有引力)へジャンプアップすることを「アハ体験」という。そして、これに脳細胞を活性化させる働きがあるのだ。
⬛️ 七色の大地が現実世界に?!
インド洋に浮かぶ神秘の島・モーリシャス。
日本では、悲しいことに重油の一件でその存在が広く知られるようになった国だ。しかし実のところ、そのモーリシャスはアハ体験の種、つまり一度見ただけでは理解できないような神秘で溢れている。
読者諸君には、これから紹介するスポットを見て、その仕組みを閃くことができるか挑戦してみてほしい。
一つ目は「七色の大地」。おそらく言葉で説明しても理解できないので、とりあえず写真を見てほしい。
大空の遥か向こうにしかないと思っていた虹色が、こんなにも間近でみることができる。この景色は、かつて大天使ガブリエルが地上に降り立ったことを思わせる。それほどの絶景だ。
この七色の大地はセブンカラードアース(Seven Coloured Earths)とも呼ばれ、観光大国モーリシャスの目玉スポットの一つである。
さて、本題はここから。ただ単にこの情報を取り入れても、記事を読み終わった数分後には忘れてしまっていては意味がない。
ぜひ、読者諸君にはなぜこのような絶景が生まれたのかを考えてみてほしい。もし、閃いたならばそれはあなたにとって最良のアハ体験となろう。
ヒントは・・・「火山」
さあ、閃くことができただろうか。
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正解は「酸化した鉄とアルミニウム」
火山島であるモーリシャスは、その大地の多くが火山的鉱山資源により構成される。そして鉄は赤系の暖色を、アルミニウムは青系の寒色を発する。これらの混ざり度合い、酸化度合い、光の当たり度合いが複雑に絡み合うことで、この神なる絶景が生まれたのだ。
どうだろう。閃くことはできただろうか。理系的な知識だが、その分野の叡智の方々には赤子の手を捻るが如くの簡単さだったかもしれない。
⬛️ 海の中に滝がある?!
「滝」という言葉を辞書で引くと、『懸崖からほぼ垂直方向に落下する水の流れ』と書いてある。
落下するという言葉がある時点で、それは地上にあるべきだと我々は思い込んでしまうが、その常識をモーリシャスは簡単に打ち壊してしまう。
この写真を見てほしい。
モーリシャスの美しき海。
そして、驚くなかれ、海の中には滝があるではないか。両端から真ん中の深い渓谷へ、勢いよく水が流れ落ちていく様が確認できる。にわかに信じがたい光景だ。
さあ、先ほど閃いた者は二連勝を、できなかった者はリベンジをかけて、是非この謎の解明に取り組んでほしい。健闘を祈る。
ヒントは・・・「本記事のこれまでの内容」
さあ、閃きの女神はあなたに微笑んだであろうか。
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正解は「光による騙し絵」
この記事の冒頭で、茂木流アハ体験の例として、とある女性の騙し絵を挙げた。そう、実はこの海中の滝は騙し絵ならぬ「騙し景色」なのである。
あの写真の場所には滝など存在しない。砂より小さい堆積物が海流により、あちこちに積み重なり、それが光の屈折を発生させる。そのため、我々にはまるで海の中に滝があるかのように思える。勿論、あの場所を船で通っても落下することはないので安心していただきたい。
本記事の冒頭では「騙し絵」の話を、前項目では「"光"による七色の大地」を紹介した。実はこれらは「海中の滝」の謎を解くヒントであったのだが、おそらく伝わってはいまい。それに、ヒントありきの閃きは、純粋なアハ体験に劣る。やはり、あなた自身の力で掴み取ることが何よりも重要なのだ。
⬛️ むすびにかえて
ここまでモーリシャスの不思議な絶景についてみてきたが、どうだっただろうか。
私、仁大噺志が運営するWEBメディア・Willy Nillyは「ランダムこそ教養の真髄」がモットーである。日々、何の気なしに出会う情報を蓄積しておける人物こそが、教養深い者なのだ。それゆえに私は毎回ランダムなテーマで記事を書いている。
しかし、一方的な知識の提供は、やはり、皆が嫌う旧式(あるいは進行形)の学校教育を思わせるようで、どこか受け入れがたい。今回の記事はその点において斬新だったのではないだろうか。
読者は単に記事を読み進めるだけでなく、アハ体験のための思考活動が求められる。仮に閃くことができなかったとしても、主体的に取り組んだ知識は比較的、その記憶が長続きしやすい。
そうした意味でも、受動的でなく、主体的に思考する教育が必要なのである。世界的にこの動きが広まっていたなら、Wi-Fiを求めて座礁(真偽不明)、重油を流出させ、美しきモーリシャスの自然を汚す事故などは起きなかっただろう。
思考を放棄することは自分だけでなく、他者の不幸をも招くことを忘れてはならない。
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最後まで読んでいただき、誠に有難うございます。
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【本日のランダム記事テーマ】
「アハ体験」の種に溢れた「モーリシャス」のお話でございました。
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参考文献
- 雑踏子猫: 『アハ体験の本当の意味とは』, 徒然なる猫日記, 2010年4月4日, https://zattou.exblog.jp/13096441/
- LIFE HOLDINGS: 『インド洋に浮かぶ険しくも美しい孤島モーリシャスとレユニオン 2島物語 8日間』, https://cruise.t-life.co.jp/column/mauritius_reunion/
- Earth Porm: 『Absolutely Stunning Illusion of an Underwater Waterfall in Mauritius』, Nov 17 2020, http://earthporm.com/absolutely-stunning-illusion-underwater-waterfall-mauritius/