失敗事例2 分け合うことを強制するより分け合う喜びを教えたい
とある夕方。
息子とおままごとをしていた。
息子はフライパンからすくったおたまを私の口に運び、自分の口に運び、それを繰り返した。
ふと、分け合うって発想がもうあるんだなと思って我が子を誇らしく思った。
夫とのすれ違いから学ぶ
一つ私と夫の話をしたい。
学生時代コンビニに立ち寄りアイスを買って外で並んで食べたりした。
私より奨学金をもらっていて金銭的に困窮しているわけではないのに、彼はよく一つのアイスを2人で分けようとした。
パピコや雪見だいふくやピノを2人で分けたことが何度かあるが、正直私は嫌だった。
高額な楽器は買えるのに私と過ごす時間にはお金を使いたくない。
そう言われてるようで惨めだった。
でもそんなこと言う女は小さいかなという気もしてなかなか言い出せなかった。
結婚してから夫がパピコを買ったのを見て思い出し、実は分けるのは嫌だったんだよねと軽い感じで話した。
過去を掘り返す完全に小さい女だった。
夫は私がそんなことを考えていたなんて思いもしなかったと言った。
夫の言い分はこうだった。
昔からたくさん食べられる家ではなかったから、兄弟で分け合ってきたし、その量で満足できるのだと
夫にとってアイスを分けることが普通だったのだ。
私は違っていた。
たまにしか食べられないからこそゆっくり堪能したいし何より誰かの好みに縛られず好きに選びたかった。
夫の家では箱入りのアイスキャンディーは1日一本と決められており、兄弟もみんな律儀に守っていたと言う。
一方私の育った家は早い者勝ちで、明日もあると思うなとよく言われていた。
同じ貧困育ち、兄弟が多い私たちでもこんなに相違があるのだから、人間社会は奥深くて面白い。
人と分け合うのが嫌いだったもう一つの理由
私が分け合うことに抵抗があったのはもう一つ理由があった。
実家に住んでいた頃は障害年金だけで通信制の大学に通っていた上、月に30000円+携帯代を親に支払わなければ家に住まわせないと言われていてかなり貧しかった。
そんな中、たまの贅沢でコンビニのアイスやデザートを買うことがあった。
本当にたまに。
すると父が言うのだ。
「自分だけ買うなんて冷たい。家族全員に買ってあげなさい。」と。
今となっては学費すら出してくれない、障害者の学生に生活費を要求するような親に従う必要はなかったと思えるのだが、当時はそれができなかった。
ここで買わなかったらまたケチだのなんだのと親に言われ続けるのが目に見えて耐えられなかった。
自分がどうしてもハーゲンダッツを食べたかった時、仕方なく全員分買ったことがあった。
しかし誰も喜ばなかった。聞こえてきたのは、甘すぎる、好きじゃないなどの否定的な感想だった。
こんなことなら自分で大事に使いたかったと思った。
母も父もことあるごとに、「あんたは人のためにお金を使えない」と私に言ったけど、たまに何かを買って行っても感謝されたことも喜ばれたこともほとんどないのだ。
否定ばかりする親に育てられたんだから兄弟が私の手土産に文句しか言わなくてもまあ仕方ないのかなと今は思う。
どうしてか私だけ食の好みも好きなものも趣味も家族と合わないのでそれも気に入らないのだろう。
母の日の贈り物なんかも自分の好きなもの以外には容赦なく文句を言われたものだ。
そんな経験を重ねるうちに、どうせ喜ばれないのなら、好みが違うのなら、分け与えるのはもったいないと考えるようになった。
今変われたのはなぜか
でも今は人とものをシェアするのが好きだ。
物自体ではなく、くれたことや気持ちが嬉しいと言ってくれる人が周りにいるからだ。
たとえば私の場合、フルーツの加工品が苦手なのだがそういうお菓子をもらうこともある。
いちいち、これ嫌いなのになんて思わないし言わない。
選んで買ってきてくれたこと自体が嬉しいしありがたいと感じるからだ。
夫がフルーツ好きなので彼も喜ぶだろうな、くらいにしか思わない。
好みじゃないものをもらってわざわざ否定的な感想を突き返してきたり喜びも感謝も表さなかったりする実家の人々がおかしかっただけなのだ。それを知れてよかったなと思う。
私があげるものを喜んでくれるみなさん、こちらこそ喜んでくれてありがとう。
教訓
息子はどんな風に育つだろうか。
今は親のご飯を強奪しに来たり、自分の食事を親に食べさせてきたりする。
先日保育園でもらってきたうまい棒風のお菓子を食べていたら途中から交互に食べようぜ!と私の口元にも差し出してくれた。
ストローマグでお茶飲んでる時も私の口に突っ込んでくる。
風邪の際はやめていただきたいが、美味しいものを共有してくれるのはとても優しくて誇らしい。
このまま優しく育ってほしいから私は必ず喜んだ。
風邪菌まみれのストローにも、涎でふやけたお菓子にも。
ただし息子は自分が大好きなものは絶対に分けてくれないし、食べてないよな?と定期的に私の口を開けて覗いてくる。
それがまた人間らしくて良い。
大好きなものは独り占めして楽しんだらいいと私は思う。もちろん人のものまでとるのは論外として。
なんでもかんでも仲良く分け合えなんて私は子供が増えても言わない。
余裕のある時だけ、分けてもいいものだけ分けたらいい。
それが一番人間らしい答えだ。
余談
ちなみに夫は未だにパピコを2日に分けて食べている。
分けるのが当たり前でその量で満足できるというのは本心だったのだと納得するほかない。
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