「アレルギー反応。」/ショートストーリー
アパートを出た途端。
「ハッ。ハックション。」
ものすごいクシャミをしてしまった。
誰もいなくて良かったと安心する。
百年の恋も冷めるようなクシャミだもの。
もう。
そんな時期かと思う。
今年は早い気がするのだけれど。
とにかく年に数回。
そういう憂鬱な時期がある。
これはどうも母方からの遺伝らしい。
わたしはまだましな方で母と姉はひどい。
二人とも家を出たがらない。
ということで、実家にいた時はそういう時期になるとわたしと父が買い物係を仰せつかっていた。
就職してわたしが実家から離れると弟がわたしの代わりになった。
弟ときたら、そこは少しも遺伝しなかったらしい。
まあ。
顔からして父にそっくりだものね。
今は、ネットで買い物できるし、スーパーでも配達料金さえ払えばその日の夕方には家に届けてくれる。
本当に便利な世の中になったものだわ。
だから。
弟が実家を出ても心配はなかったようだ。
いつも。
大量の買い物に辟易していた父もお役御免でほっとしたらしい。
今日は気を引き締めていかなければならない。
わたしはお寺から頂いた清め塩を振りかけた。
特別なお塩なので多分一日は大丈夫だろう。
念のため、精麻で編んだブレスレットを着ける。
帰宅したら、日本酒を入れた塩風呂に入って。。。
と考えていたら姉からlineがはいった。
「桃を送ったから、しばらく夕食後に食べて。今年はちょっとやばい。」
そうそう。桃は相当効くんだよね。
わたしの大好物だけれど高価なので、なかなか買えない。
今夜届くであろう甘い桃を考えていたら、またクシャミが出そうになる。
姉の言う通り、今年はなんか違うのだろう。
清め塩をもう少し多く振りかけておけば良かった。
電車の中でクシャミなんかしたら、このご時世白い目で見られる。
わたしの場合、病気とかではなくて。
ただ、霊に反応してクシャミが出るだけなんですと言ってまわるわけにもいかないしね。
帰宅すると見計らったように桃が届いた。
ジューシーで甘い大きな桃。
桃を食べていたら実家の大型冷蔵庫と冷凍庫が頭に浮かんでくる。
お盆の時期。
巫女体質の母と姉がいる実家はまた大量にネットで買い物をするのだろう。
流行り病のせいで帰省できないからまた桃を送ってもらおう。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?