最後の冬
来春引っ越す予定なので、この家で過ごす最後の冬。暖炉も七輪ももう使えないのでできるだけ火を囲んで過ごそうとBBQ。
昭和23年に生まれた夫にとって火は生活に欠かせないものでした。その頃があるから渇望するように火を、食を、お酒を求めているような気がします。
藁でご飯を炊いていた小学生の夫。ひとつの形に留まらない火は生きる力で、軌跡で。
爆ぜる音も色も匂いも形も、最後の冬。
子ども時代にクリスマスがあったわたしと、なかった夫。
あったわたしは、それに渇望はない。
なかった夫のしあわせへの夢だ。
いい時間とお酒と火と大好きな人。
暖炉とイルミネーションとはお別れだけど、
いい時間とお酒と大好きな人はこれかもずっと続いていく。
火は彼の中で燃えている。
まだ灰にはならない。