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白髪も悪くない
湯川学に恋をしていたわけではないけど(福山湯川ではない)好きな小説の主人公が、年を重ねている、ってなんか生々しい。はじめて会った彼は「探偵ガリレオ」で34歳ぐらいだったんじゃないかな。今回は、帝都大学の優秀卒業研究発表会から30年ほど経っている、とのことだから50歳ぐらいだろうか。しかも!白髪だなんて!「探偵ガリレオ」から23年だもの。しょうがないけど、ショック。(白髪だらけ という文章があった)
若い主人公ならば成長だけど、湯川は一緒に歩んでくれている。私たちも年を重ね、親の介護があったり、家族のしがらみがあったり。
冷静な物理学者の湯川が、人間臭くって近く感じてしまい、ある意味せつなくなってしまった。湯川学なのか、加賀恭一郎なのか。
透明な螺旋 東野圭吾
プロローグの冒頭の1行ですでにやられてしまった。
『戦争が終わって丸三年が過ぎた頃、秋田県にある小さな村で、一人の女児が生まれた』
夫と同年代だから惹かれた。戦後3年生まれ。
彼女がこの物語のどこかにいる、彼女は誰なんだろう。
愛する人を守ることは罪なのか。房総沖で男性の遺体が見つかった。失踪した恋人の行方をたどると、関係者とし天才物理学者の名が。草薙は、横須賀の両親のもとに滞在する湯川学を訪ねる。
失踪した園香の事件の螺旋(DNA)と、湯川の螺旋がどこかで交わっている。交わりつながっていることって、せつない。
中学2年生の湯川は
『本物のものなんか何もない、人間はみんなひとりぼっち』と言っていたけど、白髪だらけになった湯川が『人は誰もひとりでは生きられない。今の僕があるのは、多くの人たちのおかげです』と言えるのは、時と年を重ねていったからであろう。
白髪も悪くないな、と思える。
実はガリレオシリーズ、『真夏の方程式』までしか読んでいないので他のも読んでみたいな。
『天空の蜂』『秘密』『白夜行』『幻夜』『流星の絆』路線が好み。