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勇人#6「俺は日本のスーパースター&ハリウッドのエージェント見習いについて」

皆さん、こんにちは。金曜日担当、ロサンゼルス在住の勇人です。

さて、前回はMBA受験についてお話しましたが、今回は無事MBAに合格したあと、UCLA Andersonにて自分をどうブランディングしていくべきかについて考えた結果、取った行動についてお話できればと思います。

今思い出しても胸が熱くなりますが、UCLAから合格通知メールがきた時、ちょうど会社にいたのですが、思わず大声を出してガッツポーズをしそうになりました。実際は声を出さず、ばれないように小さなガッツポーズをしましたが。

ま、それはともかく、ハリウッド進出に向けて、現実的な大きな一歩を踏み出したことへの興奮は計り知れなかったです。ちょうど映画「ラストサムライ」が日本で大ヒットし、渡辺謙さんがトム・クルーズと並んで存在感を存分に発揮し、日本人でもハリウッドで通用するんだと実感した時期でもありました。これからどんどんそういった流れを促進するため、当時は日本人役者とハリウッドをつなぐエージェント(日本でいうマネージャー、代理人)になりたいと思ってました。また機会があれば別途、ハリウッドのシステムについて詳しく記しますが、エージェントになるためにはまず、エージェンシー(日本でいう芸能事務所)のメール・ルームから始めなければいけないのです。このメール・ルームとは郵便部屋のことで、エージェンシーシステムの最下層にいるエージェント見習い達が集まる場所です。で、この見習い達の仕事はと言いますと、郵便物をエージェントに配る等の雑用で、今でも残っているハリウッドの昔ながらの徒弟制度なんです。メール・ルームからアシスタント、ジュニアエージェント、エージェント、シニアエージェント、デパートメントヘッド、パートナーという風に上がっていきます。

そんな最下層にいる見習い達はどんな人達かというと、ハーバードMBA保持者、元弁護士、元インベンストメントバンカー等、超絶エリートが多く、彼らは郵便物が入ったカゴを押しながら、エージェント達に郵便物を配ってまわるのです。彼らはスーパーエリートの道を捨て、最下層から這い上がるシビアな世界を選んだのです。それだけハリウッドのエンタメ業界には魔の魅力があるのです。

MBAからハリウッドのクリエィティブに行くなんて、ちょっと珍しくて重宝がられるんじゃない?と思ってた自分は甘く、アメリカの超エリート群が郵便物をエージェントに配る権利獲得のために熾烈に競い、ハリウッド業界の仲間入りをしようとしているのを目の当たりにし、MBAだけでは全く武器にならないと思い知らされました。ちなみに、エージェンシーの見習い達の中にはエリートの他に、トップエージェント、プロデューサー、スタジオ社長、有名監督等、ハリウッド業界の大物の「子供」も多く、この子達は基本的には皆お金持ちで、縁故採用で入った人たちなのです。超エリートか、超大物の子供か。そりゃ競争率高いわ!エージェントのアシスタントとして週五百ドルぐらいしかもらえないのに、高級スーツを毎日着なければならず、家賃や交通費等を考慮するとその給与だとマイナスになるため、お金持ちでないとこのポジションを続けられないという、独特な場所なんです。普通の人だったら、昇進するまでお金が持たないという。

ちなみに、エージェンシーではないのですが、ハリウッドのある制作会社でインターンをしていた時、たまたま扉が開いていたのでその部屋の中を覗くと、薄暗い部屋の中に人間が一人、ニヤニヤしながら机に向かって座っているではないですか。見るからにちょっと変わった若い人で、目が合ってしまいました。そのまま何事もなかったように廊下を歩き続けましたが、あとで聞いたら大物プロデューサーだか監督だかの子供で、預かってくれてと頼まれていたらしいのです。そして、仕事ができないので、適当な仕事を与えられているそうです。ちょっとかわいそうでした。

さて、話を戻しますと、エージェントの実際の仕事内容や、ストレスマックスの職場環境について知ってからは、自分はエージェントには向かないと気付いたので応募もしなかったのですが、今となって思えば、頑張ってエージェンシーでインターンでもすれば良かったなと思います。やらずに後悔よりやって後悔。でもやっぱ度胸がなかった。だって怖いんだもの。何が怖いかって、エージェントのアシスタント(メール・ルームの一つ上の仕事)というのは電話番が多く、一度に5回線から鳴る電話を全て取りながら対応し、どの電話をボスであるエージェントにまわし、どの電話をまわさないかを判断しなければいけないのです。あと、日によってその優先度が変わるという。例えば、ディカプリオとブラッド・ピットから同時に電話がかかってきたとしたら、どっちをエージェントにまわして、どっちを待たすか、あるいは折り返し電話するかをアシスタントが判断しなければいけないのです。で、判断基準は、その時どっちの方が人気なのかであり、それを瞬時に判断しないといけないのですが、そんな事できますか?ある日はディカプリオの方が上で、ある日はのブラピ方が上だったりするのです。もちろん間違えたらえらい事になり、常日頃プレッシャーに囲まれているエージェントは基本的にキレやすく、アシスタントにブチ切れたエージェントがメガホンを使ってアシスタントの耳元で怒鳴り散らす等の逸話ばかり聞いてたのでビビってしまったのですが、一度ぐらい経験しておけば良かったかなと。まぁ、応募したからといってなれるわけではないのですが、応募だけでもしておけば良かったかなと。ちなみにアメリカのエージェンシーではアシスタントはエージェントが電話で話している間、その会話を聞いてノートを取る必要があるので、ハリウッドで何が起こっているのか、どういうプロジェクトが動いているのか、誰と誰が仲が悪いのかまで、生の情報が入るので、かなりエキサイティングな仕事であることは間違いありません。肝っ玉が座っていれば、ぜひ!

こちらは、エージェンシーのメール・ルームやアシスタント業について簡単に説明してある記事です。興味があれば。

さて、話が本題からかなり逸れましたが
(今度またハリウッドシステム等について詳しくお話できればと思います)、MBA合格後の次の目標は、ビジネススクール入学に際して自分をブランディングする事でした。何故そう思ったのかは正直覚えてませんが、すごいパッションを持ってそうすべきだと確信してました。

で、出した結論は、「俺は日本のスーパースターなんだ」と思わせること。皆ほとんど、日本に行ったことがない人たちばっかだし、自分が日本でどういう人だったかなんて、誰も知らない。であれば自分が決めたイメージを植え付けることができるんじゃないかと思った次第です。

俺は日本のスーパースター!

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あ、何故そう思ったか、思い出しました。ハリウッドで描写される日本人男性のイメージでかっこいいというのはあまりなく、日本人女性は綺麗、という認識はあっても、日本人男性はかっこいい、というイメージはなかったので、これを覆してやろうと思った次第です。

なので、「俺はめっちゃクールでめっちゃモテてて、日本じゃすごかったんだぞ、アメリカの皆は知らないだろうけど。日本に戻ったら俺はスーパースターなんだぞ、アメリカの皆は知らないだろうけど。」というオーラを出しまくりました。自分で自分に言い聞かせました。俺はクールでかっこいい日本人男性。アメリカのMBAに殴り込みに来たぜ、みたいな。

パーティーでも日本人の飲みコールを紹介し、MBA生全員に「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!」と、ジャパニーズ・ドリンキング・コールを合唱させ、手拍子も揃え、かなり盛り上げました。完璧に日本人サラリーマンのノリでしたが、最終的に同級生に「ロック・スター」と呼ばれ、とりあえず掴みはオッケー。

日本の王様ゲームを教えるための準備

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まぁ、そういった数々の並みならぬ努力が報われ、MBA一年生終了時にはAnderson's Next Top Modelというコンテストで優勝することができました。これはAmerica's Next Top Modelという、「次のスーパーモデルを探せ」といったアメリカのリアリティー番組を真似たコンテストで、実際はルックスで選ぶというより、学校の人気投票みたいなものでした。日本人の私が優勝したのは正直びっくりしましたが、一年かけて実行した作戦が成功した証でもあったので、してやったり。優勝者は大学のファッションショーのランウェイを歩くことになっていたのですが、その時期、私はEntertainment Management Association (学校のエンタメクラブ)のメンバーとして、カンヌ映画祭に行くことになっていたのでファッションショーには参加できず、その事を運営メンバーに伝えると、ランウェイに優勝者が不在、という事を避けたいので、その年は優勝者を例外的に二人にし、そのうちの一人(2位)を歩かせたのです。あぁ、違う日程だったら絶対ランウェイ歩いてたのに。。。ちなみに私は二年目もAnderson's Next Top Modelに選ばれたらしいのですが、その年も同じ時期にカンヌに行くことが決まってたので、さすがに今年も優勝してファッションショーは欠席、というわけには行かず、その年の2位の人を優勝者にし、私は優勝してないことにしたそうです。でも運営者がこっそり、実は私が一位で、2位と大差で勝ってたんだよと教えてくれました。二年目はファッションショーに本当に出たかったのでどうするか悩みましたが、結局カンヌにいく事にしました。カンヌの話はまた別途

では、またVol. 7で!

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