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読書|一穂ミチ 「ツミデミック」

単行本:276ページ
読了までにかかった時間:135分

 夜の雑踏のただ中にいる時、死後の世界ってこういう感じかな、とぼんやり考える。朝では駄目だ。会社なり学校なり、人々の「目的」があまりにもはっきりと見えすぎて空想が働かない。街灯やネオン看板に見下ろされながら人波に抗わずただ揉まれ、流されするうちに自分というものがどんどんなくなっていく気がする。見知らぬ誰かとすれ違い、ぶつかり、触れるたびかつお節のようにうっすら削られて記憶も自我も散り散りになる。

一穂ミチ 『ツミデミック「違う羽の鳥」』

全6話からなる、コロナ禍を背景とした犯罪短編集。まるで落語のように小気味良く話が展開していく。

様々な脅威や不安はあれど、やっぱりこの世で一番恐ろしいのは人間で、その狂気が顕になった時普段見えている部分との落差が大きければ大きいほど、恐怖が増す。と同時に、救いの手を差し伸べてくれるのも人間だったりする。そんなことを思わせるような作品でした。

概要を知らずに読み始めたからか、それとも単に私の勘が鈍いだけなのか、タイトルの意味に全然気が付かなくて、「積み木✖️パンデミック」?どういうこと?と思ってたけど‥「罪」ですね、罪。分かってすっきりしました。タイトルも内容も面白かったです。

一穂ミチ 「ツミデミック」
光文社 2023年11月22日発売

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