見出し画像

#39 奥多摩ー鳩ノ巣

 猛暑が続き、夕立が降る毎日。夏らしい日々が続く。容赦なく照り付ける太陽の下でコンクリートを歩くことに疲れ、ふと木々に囲まれた土の上を歩き、水の音を聞きたくなった。東京でそうした場所は奥多摩しかない。そう思い立ち、中央線に乗り込み、奥多摩の「鳩ノ巣」を目指した。「奥多摩駅」から奥多摩湖を目指すことも頭をよぎったが、やはりコンクリートをあまり見たくないと思ったためここに決めた。

 駅を降りると案内マップがすぐ見つかる。素直に従い、鳩ノ巣渓谷を沿って古里駅へ行くことにした。渓谷には小川があるし、もとよりコンクリートがないだろう。

 風が心地よく、過ごしやすい。雨が降っていたからか、岩や木が少し濡れている。蒸し暑さよりも涼しさの方を体感する。


 道中、社もあり、古来よりこのルートが愛されていたことがわかる。

 獣道のような林を抜け、川の傍に降り立つ。ちょうど昼時。持参した弁当を広げ、おにぎりを片手に小川のせせらぎに耳をすませば、清涼感が身体いっぱいに澄み渡る。

 エアコンがない時代、涼しさを求めた人々は自然の力を借りた。滝のしぶきを感じたり、ひんやりした洞窟を訪ねたり。
 暑さと寄り添い、その中でささやかな涼を感じ取ろうとすること。いつから私たちはその心を忘れてしまったのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?