#ボクシング
追憶【ショートストーリー】
拳の記憶よりも、愛の追憶は遥か深い。
ボクシング世界タイトルマッチで僅か1R59秒で惨敗を喫した松下タツヤは絶望の淵にいた。
古びた病院の個室にはユリがずっと付き添っている。両親のいない彼はユリ無しでは生きられない。この試合に勝てばプロポーズをするつもりだったのだ。そんな絵に描いたような幸せを目前にしたまさかの出来事・・・一命は取り留めたが、医師からは引退勧告を受けざるを得なかった。
「タ
幻の陰影【掌編小説】
※本編3,494字。
「元 日本バンタム級一位がボクシングを教えます!」
こんな触れ込みのチラシを見て、広志は父に懇願した。一位の人にボクシングを習いたい、と。
父の章司は正直なところ、殴る蹴るのスポーツでは無く、野球やサッカーといった球技をして欲しいと思っていた。だが、最後は息子のしつこさに根負けした。入会するかどうかを約束はしなかったが、一日体験会に参加することにした。
二年前に父