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2023年7月の記事一覧
ショートストーリー「元・世界一位」
親戚の宇宙(ひろし)おじさんは元世界一位らしい。その正式な称号が世界第一位なのか、はたまた世界チャンピオンなのかはハッキリと分からない。
去年夏に勇気を振り絞って訊いてみた。
「おじさんって何の世界一位なの?」
おじさんは怪訝な顔をした。
「紳助君知りたい?」
僕は目を輝かせてうなずいた。
「・・・おじさんは何の世界第一位か忘れたよ」
こう言うと頭をポリポリと掻いて、苦笑いをした。
幻の陰影【掌編小説】
※本編3,494字。
「元 日本バンタム級一位がボクシングを教えます!」
こんな触れ込みのチラシを見て、広志は父に懇願した。一位の人にボクシングを習いたい、と。
父の章司は正直なところ、殴る蹴るのスポーツでは無く、野球やサッカーといった球技をして欲しいと思っていた。だが、最後は息子のしつこさに根負けした。入会するかどうかを約束はしなかったが、一日体験会に参加することにした。
二年前に父