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【読書】非色 有吉佐和子著 小説であり歴史書

有吉佐和子さんの『非色』を読みました。
1964年に出版された作品の再文庫化されたものです。

色に非ずー。終戦直後黒人兵と結婚し、幼い子を連れニューヨークに渡った笑子だが、待っていたのは貧民街ハアレムでの半地下生活だった。
人種差別と偏見にあいながらも、「差別とは何か?」を問い続け、逞しく生き方を模索する。1964年、著者がニューヨーク留学後にアメリカの人種問題を内面から描いた渾身の傑作長編。

非色 有吉佐和子著 裏表紙



1964年、今から60年前に書かれた作品だとは思われないほど、今の時代でも古さを感じさせない内容だった。
小説のテーマは、『差別』。

主人公の笑子は黒人兵と結婚した戦争花嫁。
戦争花嫁という言葉自体がすでに差別している。
そして、黒人と結婚したことで、日本だけでなくアメリカに渡っても差別とぶつかる。

笑子は厳しい生活の中で、「本当に肌の色だけで、ひとくくりにされるものなのか」と、疑問を持つ。
自分は恥じることはないと。
それでも、なんども壁にぶつかる。
日本にいると遠いアメリカの現状など、知らずに過ごしていたこと、現実はこんなに厳しいのかと知る。

この作品が発表された時から60年経った今でも、黒人に対する差別・人種に対する偏見など、今なお問題として取り上げられ、差別廃止運動なども取り組まれている。

この作品を購入してから、数ヶ月読めずにいた。
人種差別に対する内容ということは知って購入していた。
内容が重いのではないか、自分はどんな答えを用意したらいいのか。
読むことに臆病になっていた。
400ページを超えるが、あっという間に読めてしまった。
テーマは差別だが、有吉佐和子の小説はやっぱり面白い。
小説の世界に引き込まれてしまう。

小説の中で使われる言葉が現代では、一部が不適切ということで重版未定になっていたようだが、内容が今でも重要な問題であるとして再文庫化されたそうだ。

この作品を読んで、当時の日本・日本女性・アメリカ社会での日本人妻について知ることができた。

アメリカに留学していた有吉佐和子が見て、感じた世界。

小説という形をとった、歴史書だ。

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