現代版隠し神 雨童様
現代版隠し神 雨童様(あめわらしさま)
雨が降るとは。
実に忌々しいこと、何故なら。
陽の光を遮り、陰の気で包んでしまう。
つまりは、一種の結界、或いは、別世界と変わる。
雨が煩わしいと思わせれば、それはもう雨に憑かれているということ。
雨が、よく降る地域では、必ず雨にまつわる言い伝えがある。
消えた少年
激しい雨が、一晩中降り続いた。
翌朝、一人の少年が、子供部屋から消えた。
寝ていたベットは、水浸しになっており。
部屋の中は中から閉じまりがされており、密室だった。
警察が連日捜索しても見つからない。
近所の年配の一人が、「神隠し、雨童様の仕業だ。」と騒ぎ始めた。
「雨童様、あめわらしさま、雨が降った夜に、悪い子や要らない子を自分の住みかに連れ去ってしまう、住みかとは川の底だ。」
実は、これにはちゃんとした裏付け話があって、良く聞くと思うが、むかしは満足に農作物が収穫出来なかったり、流行り病があったりすると子沢山の家は食うものに困り、遂には自分の子供を間引くという選択をとるのが日本中どこでも行われていた。
この地では、雨が降る日に雨さらいと名乗る人物にその間引く子供も僅かな食料と引き換えに渡してしまうのだ。
雨さらいは。その子供を大水で溢れて返った川投げ込むと言われていたが。
いろんな説があって、雨さらいが首を絞めて殺して喰ってしまうとか。
色々な憶測が噂になったが、公にするような話で無いのは皆解っていたので、この地に住む人の心の奥にこの事実は禁忌として隠して、語るものは居なくなっていった。
いつしか雨の降る夜に子供が消えると言う事件が起きた、その家のものが言うには、
雨さらいが連れ去った子供が家恋しさに化けてでて残った兄弟や友達を連れに来たと言うでないか。
中には、こんなこと言うものも出て来た。
貧しい家族が困り果て、雨の晩に毎度祈ったそうだどうかうちの子をひとり拐って行ってくれと。
雨拐い様、雨さらい様、どうか連れ去って行って下さいますと。
すると、本当にその家の生まれついての体の弱い末の子が居なくなってしまったと言う。
朝、その子の寝床には水溜まりが出来るぐらいびっしょりと濡れており家のどこにもその子は居なくなっていた。
それからというもの、この地では
悪さをする子や要らない子は大雨が降ると雨拐い様がやって来て拐って行ってしまうと言われるようになり。
雨さらい様が言いにくいので呼びやすいようにあめわらしさま、雨童様と呼んで畏れるようになった。
今回、姿を消した少年は、学校でいじめっ子だったらしい。
いじめられていた少年が、雨童様にお願いしたのではないかともっぱらの噂だ。
何故なら、そのいじめられていた少年は、近くの河川で水死体で発見され、遺書があり、自分と一緒にいじめた少年を雨童様に連れて行ってもらうよう願う内容だった。
昔は、近所で仲良かったらしいが、いつしか、いじめる側といじめられる側になり、それでも、本当は仲良くしていたかった願いが一緒に死ぬことで叶えようという寂しい結末。
実際に、雨童という妖怪を信じるのは、あなた次第です。
終わり
後書き
今回の雨童様は、私の創作で、別の小説のネタでしたが、なかなか日の目を見ないので人さらいの怪異は他にも沢山いること、神隠しネタとして共通する油取りを前回の記事で書いて思ったのは、日本各地でこのような話があり、それに合わして沢山の妖怪や伝説が作られていった、背景には、神隠しにあった子供忘れないためでもあり、また、妖怪の仕業でごまかそうとする人間の後ろめたさも感じるのが、どの神隠しにも通じる感想です。
少し前に、日本の行方不明者は年間8万人もいるという記事を読みました。
問題は、事故、犯罪、夜逃げ、本人の意思による失踪があるとしても、本当に神隠しにあった例があってもおかしくない数字です。
10年で80万人です、途方もない数です。
私は、時間をかけて実際どうなのかを調べると無数の怖い話が見つかるのではないかと、不謹慎な妄想を持っています。
警察が、本気で探していないと噂される行方不明者を探すことは、どうして商売になっていないのか、探偵も探すことはあるでしょうが、数に対して見つかったという情報があまりにも少ないのは、日本のタブーに関わるのかもしれません。
神隠しの正体をいつか、小説や、記事にしたいものです。
終わり
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