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いざ勝負! わたしは 稀代のギャンブラー

こんにちは。

ギャンブルが苦手な、ギャンブラーアサです。

私は、これまで、およそギャンブルとは縁遠い暮らしをおくって参りました。

いわゆる公営ギャンブルの類もそうですけれど、
暮らしにおいてのあらゆる「新しい選択・変化」もそう。
ビビりで恐がりで、あたらしい選択を迫られることが苦手です。

そんな私が医療と関わるようになって、ギャンブラーにならざるを得なくなりました。

あなたは、今ちまたで大流行の
「治療ギャンブル」という言葉をご存知ですか?



ご存知ないでしょう。
私が今、つくった言葉です。

今、健康な人、闘病中の人、身近な人のお世話をしている人。

すべての人に、
わたしの周辺に起きた「3つの治療ギャンブル」を知って、
あなたならどちらに賭けるのか、考えてみてほしい。


え、こわいですって?


ううん、全然こわくはないの。

ただ、知らないでいることの方が、
「ずっとこわい」と断言しておくね。


これらは、いつか何らかのカタチで、あなた自身や、あなたの大切な人が、強制参加させられるかもしれないギャンブルなのです。
健康な人は、今のうちに「こういうモノか」と知っておけば、万が一のときのための、予習になると思う。

ちょっとだけ、読んでいきなはれ。

***


まず、ひとつ目は、私自身(40代)の治療ギャンブル。

私は乳がんに罹患したのですが、この5年、再発予防のため「女性ホルモン阻害剤」を毎日服用してきました。

乳がんの原因が、女性ホルモン由来の場合があるため、それを阻害しようというわけですね。

この薬は、実際に再発を予防する効果がありますが、しかし半分以上の人には、効果がない薬でもあります。


要するに、暗に、私は主治医から次のように言われたわけです。

この薬が、あなたに効果があるかないかは、わかりませんが服用してください。
ちなみに副作用として更年期障害の症状が出て、QOLは下がります。
そして、子宮体癌の確率が少し上がります。



ええええ???


なぜ、大事な女性ホルモンを、自分に効果があるか分からない薬によって、阻害されなきゃならないの? 
わざわざ 更年期障害をひどくして!?
そんで子宮体癌の確率が上がるって!?


なんじゃそりゃ……
私は当初、この非合理・理不尽なトレードに、悶々としていました。

効果があるなしに関わらず、
「薬を飲んだ方が安心。副作用がどんなにひどくても構わない」と割り切れる人なら、それでもいいのです。

もしくは医師に勧められても「効果が不明の薬なんて、私は絶対に飲まない!」と選択してもいいのです。

すべては、自分のカラダと一蓮托生。

私は、この「飲むか・飲まぬか」のギャンブルに、かなり迷っておりました。


ひとつだけはっきりしていることは、
薬を飲んでも飲まなくても、再発するときはするし、しないときはしないという事実(笑)


だが、「再発の可能性」を考えると、飲まないこともこわい……

……わかりましたよ、飲みますよ!!
飲んで、QOLを下げりゃいいんでしょっ!! 

そんで子宮体癌にでもなったら 、
それは自己責任ってわけですよね??
はいはいはい、そうでしょうとも。
わかってますよ


5年前、こうして私はしぶしぶ服用することに決めたのです。


服用を始めて、すぐにホットフラッシュが始まり、不眠になり、関節がロボットみたいに、ギシギシと言い始めました。
喫茶店などでしばらく座ったあと、トイレに行こうと思って立ち上がると、ロボットみたいにカラダが固まってしまって、脚が前に進めないのです。
薬によって、膀胱に尿を貯めておく機能まで下がるため、トイレまで間に合わずに、尿漏れを起こしてしまう始末……。

おいおい、
マジでQOLが下がるじゃねーか(笑)


そんな感じでイヤイヤ薬を飲んでいたんですけれど、でもまぁ、次第にそんな不具合にも、慣れてくるんですよね。
途中から、割と元気に暮らしてきました。

***

そうして、この度、無事に再発せずに5年が経過。
パチパチパチ


「よかったですね」

診察室で主治医と喜び合ったあと、例の薬について、このように言ってきました。

「規定の5年が経ったのでやめてもいいけれど、人によっては10年飲みます。どちらがいい?」


ええええーーー!

どっちも嫌なんですけどっ!!(笑)



乳がんのホルモン剤は、5年より10年服用した方が、再発予防効果が高まるというデータがはっきりしてきているのです。

しかし何度も書きますが、

この薬が私に効いているかは、わからない。
半分以上の人には、効果がないんですから

……つーか、薬をやめるのも恐いし、
もう5年飲むのもイヤだよ

あんなに飲むのを嫌がっていた薬を、いざやめるとなると、怖い。
「薬を飲んで、5年再発しなかった」という既成事実が作られたゆえに。

だが、もともと薬なんて服用しなくても再発しなかった可能性もあり、その場合、無駄な金を支払い、意味なくQOLを下げたという事実が残る。

もう5年薬を飲むべきなのか、ここで止めるのが正解なのか……こたえは永遠に闇の中。


私は未だに答えが出せぬまま、残っている薬を毎日飲んでいます。

***


ふたつ目のギャンブル例は、母(当時70代)の治療。

母の食道がんの際に、
医師から「化学療法」か「手術」かを選ぶよう迫られました。

※化学療法=「抗がん剤 & 放射線治療」


「医者の言う通りにしたい」と言う母でしたが、その医者が「判断できないから、どちらかを選べ」と言っておるぞ……


ひぃぃぃーーカイジかよ……

お医者さんよぉ!  
素人の、ビビりのわたしに、それを言ってくるんやね!!
あぁ、そうですかそうですか。
今はそういう時代ですもんね。
はいはい、決めますよ。
決めりゃ―いいんですねっ!!


医療知識のある医者が、なんでも分かると思ったら大間違い。
分からないもんは、分からない。


「分からない」と言ってくださり、ある意味、誠実ですよ。
だってあなたは外科医だから、本来なら「手術」の方にバイアスがかかるはずなんですよ。なおかつ、この巨大な大学病院の院長先生でもあられる あなたが「分からない」と口にされる……ふむふむ

「なかなか真摯で誠実な態度ですね、信頼します」と言いたいところです。

しかしそれによって、ギャンブルのルーレットが、こちらにまわってきちゃったよね。


はいはい、わかりましたよ!

世紀の一大ギャンブルに
母の命を賭けさせていただきますよっ!!


それから、夫も巻き込んでの、「本を読みまくり&ネットを調べまくり」の日々がはじまりました。

当初は「手術ができるなら手術をしたらよい」と考えていたのですが、
食道すべてを切り取って胃をひっぱり上げるという大きな手術。
高齢の母には負担がとても大きい。
では、化学療法を選んだほうがいいのか?   
でもそれで、ガンは本当に消えるのか? 圧倒的に不安が残る……

母が「化学療法」をして助かる。
母が「手術」をして助かる。
母が「化学療法」をしても助からない。
母が「手術」をしても助からない。

イヤ、花びら占いじゃないんだからさ……「スキ・キライ・スキ……」とかやってる場合じゃねぇのよ。

ちなみに「治る」と信じて、どちらかを選ぼうとしているんですけど、
「どちらを選んでも治らない」ってこともあるんですね!? 
あぁ、そうですか。はいはいはい!!

およそ考え得る、この世でもっとも理不尽なギャンブル。それが「治療ギャンブル」じゃ!


***


3つ目のギャンブル例は、夫のお義父さん(80代)

お義父さんは数年前に、肺がんになって一部を手術で切り取ったのち、半年ほど経って、肝転移が見つかりました。

お義父さんは、医者に抗がん剤治療を勧められ、抗がん剤をやらなければ「余命一年」と告げられます。

しかし、お義父さんは「抗がん剤はやらん」と言って断りました。抗がん剤が嫌すぎて「余命一年でもいい」と腹を決めたのでした。

そうして半年後、CT検査をしたところ、肝臓にあったはずのガンが消えていたのでした。

お義父さん、すげーギャンブラーだな!!

命捨てたら、命拾いすること、あんのね。


お義父さんが、もしも抗がん剤をやってたら、
「抗がん剤のおかげでガンが消えた」と思ったことでしょうね。


この話を友達にしたところ、
「亡くなった父も、抗がん剤やらなければよかったのかも……」などと言ったのですが、

いや、そういうことじゃーないんだよっ!

これはお義父さんのカラダに起きた、たまたまのオリジナルの話なんだよ。


***


以上、3人のギャンブル例を挙げてみましたよ。


これらのギャンブルから導き出される答えは


そうです!!


治療ギャンブルには、正解がない。
これが正解です。


「95%の人が助かる」と言われる治療をして、「5%の助からない方」に入るかもしれないし、その逆もある。

放置して自然治癒する奇跡もあれば、寿命が短くなるケースもある。治療がその人の命を長らえさせることもあれば、逆に縮めることもあるのが現実。

すべてのケースが、個別バラバラのため、
統計に頼っても、医者に頼っても、

本当の答えを知っているのは、あなたのカラダだけ

なるようにしか、ならない

その前提で、幾多の選択を迫られる


だから、自分の「命の長さ」と「質」を、どうバランスさせるのか。
今の自分の年齢と相談しながら、いつでも自分なりのこたえを持っておく。


「あのとき、これを選んでいれば」
「こうしていたら、よかったのかも」


治療ギャンブルは、すべてが終わったのちに、「たら・れば」にまとわりつかれることもまた、想定しておかねばならない悲しいゲームです。

だからこそ、わたし達にできることは、「できるだけ後悔しないだろうと思われる選択肢を選ぶ」ことはもちろんですが、

自分の命も、大切な誰かの命も、
いつ終わるか分からないから、
「今日という日を満喫する」

できることは、それだけです。

むずかしいギャンブルですが、
いつかあなたが選択を迫られたとき、あなたの納得できる道程が用意されていることを祈っています。

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