眠る食器
家の中にたくさんの食器が眠っている。
毎日毎日、戸棚の中から様々な食器を取り出し引出物のお手紙やら誰々作の陶器を見ていると、価値というものの不可思議に思いを馳せる。高価だろうとそうでなかろうと、箱の中に入ってあれば分からない。
役目を果たぬまま、静かに箱の中で佇む食器の下で、毎日使われる食器の違いは使い勝手の良さや流石に銀食器でカレーを食べてもね。という遠慮もある。
だがしかし使われない食器は物悲しい。
その物悲しさは春の雨に混じれて落ちてきては、物に囲まれてどうしてか安心する性質を持つ人の不可思議と繋がる。
正しい使い方というものはどこにも存在しないのだ。戸棚で眠る食器を見て安心した時もあったのだ。
この食器たちは20年近く眠りまた日の当たる戸棚で誰かに使われるという過程もまた眠る食器の楽しみ方だ。