うちの母の溜め込みに溜め込んだ引出物の食器を片っ端から処分する。引き取ってくれる業者さんが見つかったのだ。納戸に寄木細工のように綺麗に収納された箱を出しても出しても、その合間からタオル、ティッシュ、纏め買いした電球、平成のジュース、等々。保険の外交員さんと仲が良いので、販促品のたくさんのメモ帳と絆創膏。 母と父が結婚式に使ったキャンドルが最奥から出てきて、これは捨てないから大丈夫!と姪と3人で眺める。丁度姪の背丈くらい。昔は高度成長期だったから全部デカいし、箱とかやたら豪華
今まで一軒家で自由気ままに過ごした山育ちの保護猫は、ただいま六畳二間に居を移したせいで、食欲が落ちてスリムに…。 一階で15年目の老猫は、ありとあらゆる場所にうんこ&ゲロ…そしてついにおしっこを! 元々うんこはさりげなくあらゆる場所に→時には来客の周りをうんこで円周したりと、うんこにはこだわりがある猫であったが。 保護猫は甘えん坊が激しくなり、姪と母に威嚇する。 でも姪の頭を膝に乗せて抱っこした保護猫に、この子は家族で1番大事な子だから、仲良くして!と毎日1時間くらい
自信のないまま料理をする事が多い 美味しく出来るか 食べるタイミングと自分のお風呂の時間なんかを 合間にどう埋め込むか 奇妙な深海を揺らぐように、自分の舌は安心しない 2階にはまだこの家に不慣れな猫が1匹 1階には初老の猫が1匹 出会うと大喧嘩になるのでそちらも悩んでしまう 自分の思い通りにならないのは 今に始まった事ではないのだけれど、 威嚇する猫を愛でる小さな姪の笑顔が まぁ人生こんなものよ。とお澄まし顔で告げた
春雷というのか 明日はカラリと晴れる予感のする雷鳴 光る夜空の逞しさ 雨を手のひらで撫で返し 窓から見える桜は 今宵の光が 全て撒き散らすのだろうかと 夢の中で問い質す
この映画面白いよ〜見てみようよ。 と、ロビンウィリアムズのジュマンジを姪に見せようとしても、彼女はスマホから目を離してはくれない。 何見てるの?と聞いても、分からないけど見ちゃうの。と同じフレーズを繰り返す歌を歌いっぱなしで画面を見ようとはしない。 6歳に2時間はキツイのかしら。その頃の私はグーニーズとかスターウォーズに夢中だったのだけれど…と少し悲しく感じた。短いスパンで知らない情報が断片的に入るのは、スナック菓子を食べているような物で、空っぽの満腹感というかまさにイン
移動をし続けて 沢山の物を消費し続けて 何かを得ようとしていたけれど 逃げ続けたその先には 当たり前の日々を 慎ましく送る自分の あさましかった激情が ゆるゆると溶けていくので まるまると太った猫が 夜中に爪を立てようが 寝床が多少カビ臭かろうが 少々の孤独に打ち勝つ 一筋の光となるのです
あっという間に髪に肌に心に あなたと過ごす時間は 無くしたはずの心地良さが甦る そうした瞬間、 その先に いつもと変わらない日々が淡々と広がる 不快なものに囲まれようが それを記憶と呼んでみようか 幸福は誰に委ねようか 目の前で微笑むあなたがいれば 明日のことはその微笑みに任せで 小さなあなたの幸せが いつまでも続きますようにと 夢見るように祈る
最近の小さな子は文字を打つよりもヴォイス、短文で意思を交流するのね。と、姪のライングループを見ながら学ぶ事が多い。 子供のグループラインの脅威に今更ながら驚かされる。遊びに来る予定があれよあれやという間に3人になって、ちょっと困ったな。と思っている内にその内のお子さん同士の仲が悪いとか、物を盗る子なので遊ばせない方が…とか。いろんな事情がふわふわ落ちてくる。 私の知らない世界が、多角的に存在している! 最終的にいい嘘をつこう!という流れに…いい嘘って何だろうとか話し合っ
トランプをしていると、手札に夢中になって順番が混乱してくる。この歳になってもジョーカーを引き抜くと身体がビクリとするのは、興味深い反応だ。 6歳相手でも勝ちたいというか、負けたくない!の反応なのか。 以前、姪は最後の2枚の内必ずジョーカーを引き当てるというほんのちょっとした能力をご披露してくれたけれど、最近はゲームに夢中になり過ぎてその感性を特段磨く事はない。 彼女とドライブ中に、考え事をしていたら、本当にそれでいいのか?と奇妙な口調で質問された覚えがあるのだけれど
夜の雨の音は落ち着く 自然の開花に乗せて 人の営みを寄せて 車の車輪が雨の中を泳ぎながら 雨の音を掻き消しながら 家路に主人を届ける飛沫に耳を澄ませる 一雨毎に桜を散らし 草を繁らすその一粒 夜の雨は失った物の重さを軽くする その悲しみは雨音に乗り またゆっくりと空へと帰る そして私の目の前には 生い茂る小さな若葉たち
家の中にたくさんの食器が眠っている。 毎日毎日、戸棚の中から様々な食器を取り出し引出物のお手紙やら誰々作の陶器を見ていると、価値というものの不可思議に思いを馳せる。高価だろうとそうでなかろうと、箱の中に入ってあれば分からない。 役目を果たぬまま、静かに箱の中で佇む食器の下で、毎日使われる食器の違いは使い勝手の良さや流石に銀食器でカレーを食べてもね。という遠慮もある。 だがしかし使われない食器は物悲しい。 その物悲しさは春の雨に混じれて落ちてきては、物に囲ま
心の静かさは夜の方が段違いだ。これからがショーなんだけどさ。 と、猛獣使いは呟く。首には見た目よりは軽いけれど、それでも周囲の人が心配したくなる程幾十の鎖を巻き付けている。 俺はこうしてないと落ち着かないんだよ。 獣に噛まれた時、首があいつらの口に入るのは嫌なんだよなぁ。でもあいつらの究極の愛情表現とも感じる。言葉を持たない生き物と共に仕事をするって事は自分を食べ物ではないと受け入れさせる事なんだ。 さて。と言い彼はいつものように舞台に立つ。 彼の周りには年老いた
郊外のデパートへ散歩がてら出掛けると、明らかに家族連れとか買い物目的ではないデパートで昼寝している人たちがいる。彼らはまるでオブジェのようにそれぞれの気に入りの場所で穏やかに休息を取っていて、寒くもなく暑くもない万能な場所で静かに佇んでいる。 昔見た映画で図書館で眠る天使たちのようだ。 駄菓子屋の店員さんは、髪の色がとても綺麗なピンクでお昼寝組と対照的だ。みんな歳を取る。その悲しみを小さい頃から見聞きして来たけれど、自分が段々とその方向へ向き始めて見えるようになる
今日も中々、指先からジンとするくらいの寒さだ。姪と一緒に10分くらい歩いた場所にある公園に行く。手袋は指先を守るけれど、帽子を忘れたので耳から頭蓋骨に痺れるような寒気に包まれ、 「あなたは寒くないの?」と聞くと、少し高いブロックを平均台のように器用に歩きながら 「じぇんじぇん!」と朗らかに言う。 コンクリートの壁に沿っていたブロックだったから、合皮のスマホケースは壁に削られてボロボロになった。アチャーとか言いながら何故か嬉しそうだ。 これ高かった?まぁまぁかな…。 「なん