<本と映画の答え合わせ>第27回「君の名前で僕を呼んで」
【本】
〇タイトル:君の名前で僕を呼んで
〇作者:アンドレ・アシマン
〇感想:
・同性愛の作品を初めて読むことで未知の感覚と向き合うことになった。"Call me by your name" とは愛の究極の形とのことであるが、その意味を完全に受け入れるのは難しい
・作中の描写が繊細でリアルな分、文化的・感情的な隔たりを感じ、嫌悪感が先立つ場面もあった。このテーマに対する向き合い方を改めて考えさせられる
・特に作中に登場する果実のシーンは強烈であり、そのメタファーが意味するところを理解するほどに、生々しさが際立つ。愛と欲望がここまで露骨に表現されることに対して、受け止め方が分かれるのも無理はないだろう
・「嵐が丘」のヒースクリフとキャサリンも「私はあなた」と口にすることを思い出す。本タイトルの意味することも同じであり、自らの存在を相手に委ね、相互に溶け合うことで愛の本質に迫ろうとしている。同性・異性の区別を超えた、普遍的な「同一性」が、人間にとって究極の愛の形なのかもしれない
〇評価:△
【映画】
〇君の名前で僕を呼んで(2018年)
〇監督、主演:ルカ・グァダニーノ監督、ティモシー・シャラメ
〇感想:
・エリオはイメージ通りに映像化されており、非常に自然。オリバーについては、最初は少し違和感を感じたが、次第にそのキャラクターに惹かれていき、最終的には適役だと感じた
・同性間の恋愛にかかる映画のため引いてしまうシーンがちらほらあるので家族で観るのは避けるべき(もちろんのことであるが、この作品が持つ芸術性や美的感覚を否定することはできない)
・映画のロケーション、特にヨーロッパ南部の風景や歴史、文化は映像を通して美しく描かれている。これによって、舞台となるイタリアの街並みや風情に憧れを抱かせるのは、映画の大きな魅力の1つである
〇評価:△
【総合】
〇感想:
・本(原作)の方がラストが長く余韻を持たせているのに対し、映画はスッキリと区切りをつけて終わる。この違いから、映画監督や制作チームの意図や、原作者との視点の違いなど、背景にある創作過程を想像するのもまた興味深い
・作品を通して感じたヨーロッパ南部の文化や風景に触発され、ぜひ一度は現地を訪れてみたいという気持ちが強まった。特に夏のリラックスした空気感や、歴史ある街並みが目に浮かぶ
・続編 "Find Me"もすぐにということではないが、引き続きこの物語の世界に触れてみたいという気持ちはあり、いつか読んでみたい