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<本と映画の答え合わせ>第43回「ミセスハリス、パリへ行く」

【本】
〇タイトル:ミセスハリス、パリへ行く
〇作者:ポール・ギャリコ
〇感想:
 ・本書と作者のポール・ギャリコについて全く知らず、noteのコメントで映画化作品として教えていただいたことがきっかけで手に取る。ギャリコの幅広い経歴を知り、なぜロンドンの家政婦の心理や情景をこれほど巧みに描写できるのか、興味をかき立てられる
 ・題名からハッピーエンドで終わる単純な物語を想像していたが、特に終盤の展開は予想を大きく裏切るものである。愛情、自尊心、夢、勇気、優しさなど、様々なテーマが凝縮されており、ただの「おとぎ話」にとどまらない奥深さを感じる
 ・ハリスおばさんとバターフィールドおばさんの友情は特筆すべき点であり、お互いを助け合う姿が心温まる。家族以外でこのような信頼関係を築ける相手がいるのは素晴らしいことである。2人の気さくなやり取りは、日本の大阪のおばちゃんのような親近感を抱かせる
 ・ハリスおばさんの発言が時折妙な日本語で表記される点が印象的。原文の英語表現がどのようになっているのか、またその背景にある音韻や文化的ニュアンスも気になる
 ・「誘惑」という名のドレスは、何を表しているのか。きっかけは何でもよいが、それは、夢や目標を体現しているのであろう。たとえ結果にたどり着かないことがあるとしても、そこへ向かう努力、過程が人を成長させ、新たな出会いや気づきをもたらすのではないかと思う
 ・自分の経験からも夢、目標とは、叶えるために懸命に努力し、その結果、新しい出会い、何かに気づくきっかけであった。いくつになっても夢、目標を持ち、新しい道に1歩踏み出す自分でありたい
 ・ピンクの花飾りが付いた緑の麦わら帽子や、憧れのドレスがどのようなものなのか気になる。映像でどのように表現されているか確かめたい
〇評価:◎

【映画】
〇ミセスハリス、パリへ行く(2022年)
〇監督、主演:アンソニー・ファビアン監督、レスリー・マンヴィル、レスリー・マンヴィル
〇感想:
 ・本(原作)とは似て非なる作品。ハリスおばさんの帽子もドレスも想像していたものとは違う。また、燃えてしまうドレスが「誘惑」ではない点、時折り出てくる「透明人間」というワードそしてハッピーエンドと先に本(原作)を読んでいたために混乱してしまう
 ・映像からはドレスを手に入れるために努力するハリスおばさんの姿が伝わらず、まるで賭けや遺族年金でドレス費用を用立てできたように受け止められてしまわないか懸念する
 ・ファッション業界について知ることができる。サロンやオートクチュールとは何か、ドレスの製作過程にチームがいかに関わっているかなどを学ぶことができ、新鮮な体験となる
 ・ナターシャとフォーベルが語り合うサルトルについて関心を抱く。哲学は難しいイメージがあるがそろそろ挑戦してみたい
 ・エッフェル塔、オペラ座、ショーなど華やかな面ばかりでなく道路に散乱するゴミ、ストライキなどパリの両側面が映し出されることで本当のパリの姿、雰囲気すなわち多面的な魅力が伝わってくる
〇評価:〇

【総合】
〇感想:
 ・本作品については本(原作)と映画で内容が異なるが、それぞれ別の良さがあると言える。逆に両方に目を通すと混乱してしまうかもしれない
 ・本(原作)と映画の決定的な違いはハリスおばさんが「誘惑」という名のドレスを最後に着るか着ないかである。ハッピーエンドとはいかないまでもドレスを着ることなく終わる本(原作)のほうが、人間の愛情、心と心の繋がりが強調され好ましく思う
 ・本書と映画の両方に目を通したことで「誘惑」という名のドレスが何色なのか分からなくなる。しかし、そのドレスは各自の解釈でよいと思う。自分にとっての「誘惑」という名のドレスはタイトル図にあるような深みがあってエレガントなワインレッドのドレスをイメージする
 ・本作品を通じてパリの文化やファッション、街並みの美しさを知り、いつか訪れたいという思いがさらに強くなる。ロンドン、ニューヨークと並ぶ世界3大都市と勝手に考えているパリだが、未だ行ったことがなく、ぜひ足を運びたいと思う
 ・海外への旅から遠ざかって久しいが、この作品は挑戦や冒険の意欲を再びかき立ててくれる。文化が異なっても人々の温かさは変わらず普遍的であるということをもう1度体験したい
 ・余談になるがニューヨークでホームステイしていた時のエピソードを思い出す。ホストのバーバラさんに「家政婦さんの仕事がなくなるから掃除をしないで」と言われたことは、自分の価値観を揺さぶる体験で、自分のことは自分ですることが当然と思っていたが、そのような文化があることに気づく。近年パワーカップルが増えていることもあり、家政婦さんに対する需要が高まっているかもしれないが、長年にわたり染みついた美徳に対する観念から日本では欧米のように家政婦さんが浸透する、あらゆる家庭に根付くことは難しい気がする


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