W_007 校則はなんのために
こんばんは。このコンテンツは文章でお送りします。ますひこです。
各私学には、それぞれの建学の精神に基づいた教育方針を実現するため、様々な校則が決められています。
面倒に思えるこの校則に対して、僕の考えるところをお伝えします。
守るなら守ったほうが良い、というのが僕の基本的なスタンスです。
校則の歴史
そもそも、校則というものが作られるきっかけはなんだったのでしょうか。
武庫川女子大学学校教育センター大津准教授によると、1873年に文部省が出した「小学生徒心得」と考えるのが一般的だそうです。
当時は授業的思想も強く見られ、教師の権限が絶対だったとか。
その後1960年代以降の高校紛争を期に、管理教育を推し進めるためのルールとして定められたとするのが一般的なようです。
考えによっては、1960年頃を校則の起こりとする方もいるようでした。
どちらにせよ、校則というものが生まれた当時と今とでは、学校、高校生に社会が求めるものはかなり変わっているかと思います。
身だしなみに関する校則
数ある校則の中でも、よく生徒からブーイングを受けるのは、身だしなみに関する校則です。
聞いたことのあるものを列挙していきましょう。
・華美な頭髪は禁止する。
・男子の頭髪は前髪が眉にかからないようにすること。
・襟足が襟にかからないようにすること。
・側頭部の髪の毛は耳にかからないようにすること。
・女子の頭髪は三編みか二つ結び、ショートカットにすること。
・髪の毛が肩にかからないようにすること。
・一つ結びにする場合には肩よりも高い高さとなるようにすること。
髪の毛は疲れました…。制服について
・制服を着て登校すること。
・制服を着るときはシャツを入れること。
・Yシャツは校章の入ったものを着ること。
・シャツの下に着る肌着は白色または肌色のものとすること。
・シャツの下に色のついたものを着てはならない。
・肌着は柄のないものを着ること。
・靴下はハイソックスに限る。
・靴下は白のワンポイントに限る。
…書いてて嫌になってきました。コートやマフラー、化粧や整髪剤、アクセサリーまで含むと本当に大量のものが考えられるのですが、このあたりにしておきます。
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これらは、生徒からよく反発の意見が上がります。
生徒も「どこまでなら許されるのか」をあの手この手で試してきます。
最近は保護者も一緒に「なんでこんな校則があるのか」と質問されることもあります。
多様性の時代、生徒が個性を発揮したいと思うのならばそれを尊重すべきという意見もあります。
また、校則を守らせる法的根拠がどこにあるのか、ということもよく取り沙汰されます。
若手の先生の考え
こうした状況の中で、最近は比較的若い先生に「この校則なくしていいんじゃないですか」「この校則を守るように、という指導はしたくありません」と言われるようになってきました。
まさに多様性の時代、教員の考えも多様です。
それ自体はいいことだと思います。
また、校則を守るよう指導する教員の言い分も、理解できるものです。
彼女は常に黒いシャツを着ているのですが、自分が黒いシャツを着ているのに生徒に白いシャツを着なさいと指導できない、といいます。
では自分が白いシャツを着ればよいのでは、という僕に対して、こう返してきます。
「男性にはわからないかもしれませんが、白いシャツを着ると下着が透けます。それが嫌で黒いシャツを着るのです。」
これは僕にはわかりませんでした。たしかに合理的、というよりもう彼女に白いシャツを着るよう説得できません。
その後、彼女は黒いシャツを着続けています。そうすることが彼女にとって必要だからです。
ハラスメントのこの時代、まさか白の下着を着てこいなんて言えるわけもありません。
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結局、彼女の分も僕が指導していますが、いつ生徒から指導の妥当性を疑われてもおかしくないな、と思っています。
生徒から彼女への「なんで先生は白じゃないの」は今のところでていませんが、それが出ると彼女が指導しにくくなります。
そうなると、校則そのものを変えてくれ、という発案も理解ができます。
ますひこの意見
さきほどの先生は一年目です。まだ彼女は黒シャツを着るようになってから、保護者が参加する式典を経験していません。
そこでどのような服装となるか、その際に管理職が指導するかどうか、が大きな分水嶺になると思っています。
なぜか。これから記す状況を、想像してみてください。
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あなたのご子息の卒業式。人生に一度の晴れ舞台です。
小学校のときとは違う、立派な青年に成長したご子息が、人生の節目を迎えています。
今日はそのことを祝う式典です。
そのめでたい席で、担任の女性教員が、スーツにびしっと黒シャツを決めています。
他の教員がスーツを着て白無地のワイシャツを合わせ、校長や来賓がモーニングを着ている式典の中で、彼女だけ黒シャツです。
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この光景、違和感はないでしょうか?
僕にはあります。どうしても黒は、めでたい席で好んで身につける色ではないように思えてしまいます。
一人でもすごい光景だと思うのですが、これがより多様性の時代となり、「教員側に」様々な色のシャツ、ネクタイ、靴を合わせるようになると、どのように映るでしょうか。
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生徒が着ぐるみを着たり、髪を染めたりするのとはわけが違うと思います。
教員は、常識的な身だしなみで生徒の卒業を祝わなくてはならないのではないでしょうか。
身だしなみの意味とは、出会う相手に対して違和感を与えず、安心感を与えるというものだと僕は捉えています。
あなたも、例えば住宅購入などの一生にそう何度もない商談の相手が、シワだらけのシャツの裾はでているし、折り目だらけのスーツを着て無精髭が生えていたら、安心して話せないのではないでしょうか。
または、「ツーブロックゴリラ」と揶揄されるような住宅営業マンに出会ったら、「なにかすごい営業をされるのでは」という怖い印象を持つことはないですか?
このコンテンツのアイキャッチ画像のような人です。でも、こんな印象を持つのは僕だけでしたか。
身だしなみ、大きく捉えると外見は、良くも悪くも印象を左右します。
その際、自分の理屈で自分のしたい格好をしていると、ともすれば相手に不安感を与えます。
相手の立場に立つならば、相手に不安を与えない格好をすべきなのです。
それが出来ない大人は、「この人は配慮が出来ない人なのかな」と思われても仕方ない。
そう言い切ってしまうのは、よくないことでしょうか。
そして、教員は卒業式において黒子であると考えています。だからこそ、常識的な身だしなみが求められていると思うのです。
そうであれば、保護者のあなたは安心して我が子の卒業を祝する式典に集中できるものと思います。
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生徒は、まだ未熟です。自分のすることが相手にどんな印象を与えるか、想像すらしないことも多々あります。
授業中の指示に対して独り言のように文句を言ったり、純粋に舌打ちする生徒もいます。
悪く評価されても構わない、という生徒もいれば、そんなつもりではなかった、という生徒もいます。
これらのわかりやすく相手に不快感を与える行動は、どうすればいいか正解がすぐわかるのでいいのです。
問題は、身だしなみで相手を不快にする可能性がある場合です。
プライベートではどんな格好をしてもらっても構わないのですが、「大事な場面でどのような格好をすればいいのか」の正解は、難しくはないですか?
そのための正解、相手に不快感を与えない格好の模範解答を、生徒に伝えるという意味で、校則を守る指導には意味がある。
自分のためでなく、相手のためが本来なのです。
そしてそれは回り回って自分に信用として返ってきます。
僕はそう考えて、明日からも指導していきます。
まとめ
他者と出会うときの正解を教えるため。
それが身だしなみに関する校則の意義だと思っています。
正解さえわかってくれていれば、プライベートはどんなに適当でも構いません。
また、その日会う相手によってある程度崩すことも出来るでしょう。
僕も保護者の方と会うときはジャケットにネクタイまで合わせて会いますが、気心のしれた仲間との勉強会ではノータイにカーディガンだったりします。
TPOに合わせて格好を変えるには、正解の理解が必要です。
それを理解させる為に校則があるのであれば校則を守らせるし、理解できて自分で責任を取れる大人であれば黒いシャツを着ても構わないのです。
今から3月が楽しみであり、不安です。
彼女はいったいどうするのでしょうか。
そして管理職はどう対応するのでしょうか。
僕の勤務校は、校則を指導する大義名分を保てるのでしょうか。