【読書感想文】羊と鋼の森 宮下奈都
読むきっかけ
Kindle Unlimitedのおすすめに出てきたので
あらすじ
ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
感想
とにかく、文章が流麗で美しい。この美しさは主人公外村の調律に対する純真たる熱意によるものであり、そしてその熱意の焦点である和音のピアノの音色を表現した文章なのではないかと思い耽ってしまった。
読後感はストーリーのこともあって美しいピアノの演奏を聞いたかのような清涼感に包まれた。
ASDのワタシなりの読み方
主人公、外村はASDの傾向が強く、とても親近感が湧く描写が多かった。
普通の人だと分かるようなことが分からず、森の木々の種類や匂いに関しては難しいこともさも常識のように答えていた。
柳さんが結婚指輪を渡すために早上がりした際に渡すだけなのに何故ここまで大事に扱っているのかピンと来ていなかったり、
ASDの外村と周りの優しい先輩たちのすれ違いの描写もかなりリアリティに描写されているのもとても嬉しかった。
我々のことを理解してくれている作家が書いているんだと思った。
また、小説の展開であれば女子高生の双子が現れてピアノの調律を重ねていくつれて恋心が芽生えてもおかしくないのだが、彼は人には興味が向かず、あくまで和音のピアノの音に対しての興味に留まっていた。
そこがまた、説得力のある文章だなと関心した。
ASDが社会に溶け込み、健常者と一緒に仕事をするためには興味を持った事柄を職に結びつけることが大事だと感じた。
興味のあることに対する熱意や集中力はASDは凄まじいものがある。
外村のようにピアノの調律に対して実直に努力をしてプライドを持たず向上心を持って先輩に接する健気な姿に心を打たれた。
わたしも彼のように実直に仕事に取り組もうと思えた本になりました。