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堕落論

こんにちは。皆さん、ヌメヌメしてますか?

2021年になってからというもの、やたらとBOOK OFFに通っては本や漫画、DVDを買っています。本は仕事の休憩中に、DVDは仕事から帰ってご飯を食べながら見る生活です。このご時世、人と関わらず、感情を動かすには、他人の作った世界観に没頭するのが一番です。

今日は坂口安吾作「堕落論」を読んでいました。いくつかの評論等が載っている本なのですが、難しいといけないので、目次を見てついていけそうなところから読みました。いくつか読んだ中で太宰治好きだなと思い、『太宰治情死考』という評論の感想を書いていきます。

「人間失格」等で知られる太宰治は38歳で愛人と玉川上水で入水自殺をしたのですが、そのことについて書いてあります。他人の自殺について考察するなど、わたしは野暮なことと考えていましたが、その文章の中にいくつか心に刺さるものがあったので、面白いと思って読むことができました。

小説を書く人間を芸道人とした上で、坂口安吾は、「芸道というものは、その道に殉ずるバカにならないと、大成しないものである。」とし、

一般の方々に於いて、戦争は非常時である。
ところが、芸道に於いては、常時に於いてその魂は闘い、
戦争と共にするのである。


然し、好き好んでの芸道であるから、
指名された特攻隊の如く悲痛な面相ではなく、
我々は平チャラに事もない顔をしているだけである。

と書いています。こうして作家である人たちの日常茶飯事な苦悩を示した上で、太宰の自殺を芸道人の身悶えの一様相であり一時的なメランコリであり悪あがきであると締めています。

確かに、わたしは創作が一番素晴らしい行為と思っていて自分も大成はしないながらもしている上で、常に心が非常時であることは理解できるし、わたしの創作意欲は今までの不遇な人生や絶望がきっかけなことから、「一時的なメランコリ」「それによる自殺」は理解できるように思います。勿論、誰かの自殺に考察を巡らせるのは野暮とした上で、この太宰以外の人間である者の文章から太宰の自殺の明確な理由等知ろうとは思っていないのですが。

太宰は口癖に、死ぬ死ぬ、と云い、作品の中で自殺し、
自殺を暗示していても、それだからホントに死ななければならぬ、
という絶体絶命のものは、どこにも在りはせぬ。
どうしても死ななければならぬ、
などという絶体絶命の思想はないのである。
作品の中で自殺していても、現実に自殺の必要はありませぬ。
泥酔して、何か怪しからぬことをやり、翌朝目がさめて、ヤヤ、
失敗、と赤面、冷や汗を流すのは我々はいつものことであるが、
自殺という奴は、こればかりは、翌朝目がさめないから
始末がわるい。


単純に、わたしはホルモンバランスが崩壊している時に酔っ払うと、「ああもう要らないこんな人生、死ぬしかない」と思うことは多々ありますが、その勢いで自殺を図ることはなくなるだろうと思える文章でした。こんなあっさり短い言葉で。どんなに「自殺は絶対ダメだ!」と言われても納得できなかった自分の腑に落ちてしまった。悔しい。

自分や周りにいる死たがりも含めて、「死ななきゃいけない」と思っている人が自分の環境には多い。わたしといえば、「こんなに親にも小さい頃から”お前だけがブス、気持ちわるい顔、死ねばいいのに”と言われ続けるなら」「成人式も”ブサイクが晴れ着なんて着てもね”と振袖は着れなかった」等の記憶から、「生まれてすぐ親に愛されるはずなのに愛されなかったわたしなど生まれるべきではなかった」と思うことが多く、小さい頃から堀北真希に似ている姉だけがちやほやされ、こけしと爬虫類のハーフ顔のわたしはよく蔑まれるのでありました。しかし、坂口安吾論でいけば、死ななければならないということはないとしている。才能ある太宰だけに向けられた言葉かもしれないと思いつつも、わたしの中に救いが生まれた言葉に出会えたのでした。そんな絶体絶命のものはどこにも在りはしないそうなのです。わたしも自殺がまたしたくなれば、作品の中で自殺してやろうと思い、またわたしの創作意欲は掻き立てられるのでした。

わたしが言葉を知らないだけとも思いつつ、坂口安吾の文章は、自分が思っているのに言葉にならず「なんだろうこの引っかかりは」と思っていることが言語になっていて感動しました。

『太宰治情死考』以外に、『FARCEに就て』と『文学のふるさと』を読んだのですが、自分の中の思考が言語化されていると感じる以外に、言葉選びにフフっとなることもありました。

『堕落論』について、戦後に於いてそんな感性を綴るなんて!という評価のされ方もあるようで、わたしも戦後や戦時を再度勉強して読むべきかとも考えつつ、当時よりは平和な昨今でも刺さる言葉の多い作品です。創作活動をしてなくとも、自分の受け止める感性を見直されるような。「全然そんなこと考えてなかったけどそれは一理以上あるわ」という評論がたくさん載っています。

現代の作品に於いて抱いた感想は共有できないけれど、創作活動をしている方にとてもお勧めしたい作品ですし、
死ななきゃいけない強迫観念と闘っている方にもお勧めしたい作品でした。言葉を知っている人にわたしもならなくては。

では、おやすみなさい。


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ちんちんむし
早くちょうちょになりたい