雨に濡れて飴にとける
「これ、なんか韓国に行った友達がくれたんだけど、食べてみる?」
シトシトと雨が降っていた午後の陽もおちてきて、
水たまりを飛び越えながら君と一緒に帰り道を歩いていた。
わたしは、キュッと両端を縛られただけの白い簡素な包み紙で覆われたキャンディを彼に差し出した。
「え~、俺いいよ。
なんか、そういうのちょっと怖くね?(笑)
だって、外国のでしょ?見るからに怪しいじゃん。」
「えー、なんでよ?普通においしいよ?
一回食べたら分かるって!」
「ん~俺、そういう訳わかんないやつ、あんま好きじゃないんだよね。
基本的に完全包装されてあるやつじゃないと、信用できないってゆーか、
大体それ何味なの?」
「んーとね、、、ハングルだからよくわかんないけど、お米味っぽいよ?
私も食べたけど、なんかね、ほのかに甘い味だったよ。」
「はぁ??米??いやいや、ありえないっしょ。米って飴にするやつじゃないって(笑)」
「もー、めんどくさいな。とりあえず1回食べてみればいいじゃん。
美味しいかもしんないよ?」
「え~、マジか。。。ん~そんなに言うんだったら、1回だけね。」
基本的に彼は初めてのものや新しいことに難色を示す。
いつだってそうだ。
たかが飴でここまで論争になるのだから、想像は容易だろう。
半ば無理矢理に包をひらいて四の五の言う彼の口の中に、
わたしは、そのお米味のキャンディを指でぎゅっと押し込んだ。
「んんっ。。」
「どう?意外と美味しいでしょ?」
・・・・・・。
君はニコっと笑ってみせた。
「あー良かった。」
なんて思っていたら、それは大きなわたしの勘違いだった。
君はジワジワと近づいてきてニコニコ、いやむしろ、ニヤニヤとした表情で見つめてくるから、「え、何?」なんて思っていると、
次の瞬間に、君の唇はわたしのものと重なっていた。
「俺、やっぱり好きじゃなかった。」
と無邪気に笑う君。
気付けば、君の口の中にあったはずのお米味の飴は
あっという間にわたしの口の中にあった。
水分を含むしっとりとした雨上がりの空気は、心なしかすでに私の身体を濡らしていたけど、
きみが不意打ちで放り込んできたその飴のせいで、
わたしの中の何かは、ほのかな優しい甘い味のキャンディとは裏腹に、
熱をもって一気にとけて、ぬれていった。
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