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1日4000本の記事と向き合う「Yahoo!ニュース トピックス編集部」のすべて

※こちらの記事は、2017年8月に公開された記事の転載です。

1996年のサービス開始から21年、月間約150億超のPVを誇るインターネットニュースサービス、Yahoo!ニュース。そして多くのユーザーの関心を集めているYahoo!ニュース トピックス。日々、トピックス編集部のメンバーが国内外から絶え間なく届けられるニュースに目を通し、「トピックス」という形でユーザーのみなさんに届けています。そんな編集部の1日の動きや仕事内容を、メンバーの思いとともに紹介します。

取材・文/中道 薫(ノオト)

4交代制で全時間帯の最新ニュースを網羅

Yahoo!ニュースに関わるスタッフはエンジニアやデザイナー、企画といったさまざまな職種を含めれば、約160人(2017年8月現在)。そのうちトピックス編集部には約25人が在籍しています。編集部は、1日に200社、300を超えるメディア(複数のメディアを持つ配信社あり)から配信される約4000本もの記事の中からトピックスとして選択・掲出するのが主な業務。この業務を滞りなく進めるために、編集部では4交代制を敷き、常に世の中の動きに目を光らせています。

〈編集部の勤務シフト〉
【朝番】 7時00分~15時45分
 ※【スーパー朝番】6時00分~14時45分
【通常】10時00分~18時45分
【昼番】14時15分~23時00分
【夜勤】22時30分~7時15分

編集機能を持つ拠点は、今回取材したヤフー本社のある東京のほか、北九州・大阪・八戸を含めて4カ所ありますが、国内4拠点が一体となっています。日中の各時間帯に4人前後の編集者がトピックス作成にあたり、一定以上の判断力のあるメンバーが必ず1人常駐し、適切な記事判断に努めているとのこと。

ちなみに、「スーパー朝番」と呼ばれるシフトは、2016年8月に新設されたシフト。以前は、朝の出勤時間帯がアクセスのピークタイムの一つでしたが、近年は早朝からアクセスが増加。スマホの普及に伴って、起きてすぐ枕元でYahoo!ニュース トピックスをチェックするユーザーが増えている傾向にあり、こういった状況に対応するために、編集部は昨年から早朝の時間帯のシフトを手厚くしています。

国内4拠点は、音声と映像で常につながっています

「こんなに早い時間から出社しているの?」と驚いた方もいるかもしれませんが、ヤフーは会社全体でリモートワークを推奨しているので、自宅から社内ネットワークとチャットシステムで編集作業にあたることも可能なのです。また、災害のような重大な事態が起きたときには、より速く・正確な情報を伝えるために、イレギュラーで夜勤や朝番のメンバーを増員して対応しています。

編集部の1日のスケジュール

さて、編集部の1日はどのような動きになっているのでしょうか。下記はその主な流れです。

そして、トピックス更新業務と並行して新聞や雑誌、配信各社から寄せられるメール、テレビの速報、Twitterなどで話題になっているものを把握します。そして、シフト間で引き継ぎが行われる時間帯にはメンバーが集まり、今日の動きやマークしておくべき話題など、顔を突き合わせながら確認。もちろん、地方拠点のメンバーもテレビ会議を通じて参加しています。

記事がトピックスに載るまで

1日にYahoo!ニュース トピックスに掲載されるのは、4000本超の記事からピックアップされた約100本。どんな手順で掲出されているのか、記事がトピックスとして掲載されるまで順を追って紹介しましょう。

Yahoo! JAPANのトップページに掲載されているYahoo!ニュース トピックス(赤枠内/PC/8月28日付)

1)トピックスに載せる記事の選出
Yahoo!ニュース トピックスは、国内・国際・経済・エンタメ・スポーツ・IT・科学・地域の8つのジャンルに掲出する各8本のトピックスで構成されています。配信された記事は専用のツールにリアルタイムで一覧表示され、これらをいち早くチェックするとともに、メンバー自らがアンテナを張って情報をキャッチすることで、自然と「まだトピックスに出ていない話題」にも気付けるのだとか。

トピックスに選ぶ記事は、続々と配信される記事にそれぞれが「これは」と思うものにツール上でチェックを入れたり、さらにチャット上で意見を出し合って選び抜きます。もし1人でも「取り上げるべきニュースではないのでは?」という意見が挙がったものは、候補から外すこともあります。

では、どんな記事がトピックスとして掲出されるのでしょうか。まず、「公共性」「社会的関心」を2つの大きな柱としています。

「公共性」と呼んでいるのは政治や経済、防災など社会に伝えるべき重要度の高いニュース、「社会的関心」と呼んでいるのはスポーツやエンタメのように多くの人々の関心が集まるニュースのことです。「社会的関心」に応えて多くのユーザーに日々使ってもらえる場を作りつつ、「公共性」の高いニュースを広く届けるというのが、Yahoo!ニュース トピックス編集部の方針です。

この2つを大きな柱とし、記事を選ぶ上でのポイントは次の7つとのことです。

1. 速報性・時事性・今日性(事実が起きてからの鮮度、タイムリーであるか)
2. 真実性・信頼性(虚偽が含まれていないか、信頼に足るか)
3. 新奇性(目新しいことか、珍しいことか)
4. 公益性(多くの人の利益につながるか)
5. 認知度(より多くの人が知っているか、関心があるか)
6. 表現力(内容が多くの人が理解できる表現か)
7. 品位(誰が見ても不快感を抱かないか、誰かを中傷していないか)

これらを総合的に判断してメンバー一人ひとりが記事を選び、トピックスとして掲出しています。

2)13文字の見出しをつける
記事を選んだら、Yahoo!ニュース トピックスの「顔」となる見出しをつける作業です。見出しは、たった13文字(半角スペース込みで13.5文字)。この見出しが記事の軸を明確にするとともに、ユーザーにクリックしてもらえるかどうかを大きく左右します(見出しについては、連載第2回で詳しくお伝えします)。

3)関連リンクの選定
次はそのニュースに対する理解を深めるために欠かせない、関連リンクを選び出します(下の画像の赤枠内/スマホウェブ)。

どのような関連リンクを置くかは、編集者の腕の見せどころでもあります。過去の記事や補足情報をはじめ、動画やデータ資料といったさまざまなリンクを複数選び出します。実は、この関連リンクこそが、ネットニュースならではの伝え方ができる重要なパートでもあるのです。

4)校正
編集者が専用ツール上で構成したトピックスの入稿を終えると、別の編集者が見出しや関連リンクなどの内容に不備がないか、校正します。誤字・脱字の有無だけでなく、そもそもその記事を取り上げるべきか、見出しに誤解はないか、関連リンクは適切かなどもチェック。メンバーが作成した見出しと記事の内容に落差があることでユーザーをがっかりさせてしまうのを防ぎ、個人の好みや考え方に偏った掲出はできない仕組みになっています。

突然、校正を担当していたメンバーが、何やらブツブツとつぶやき始めました。何かトラブルでしょうか? 実は、こうして声に出して読み上げながら、誤字・脱字はもちろん、読みやすさも確認しているとのこと。数々のテクノロジーを駆使して更新されるYahoo!ニュース トピックスも、最初から最後までしっかりと人の目を入れているのですね。

以上の工程を経て、トピックスが掲出されます。1つのトピックス作成にかける時間はおよそ10~20分ですが、緊急性の高いニュースの場合は1~2分で載せることも。この流れを繰り返し、1日で約100本の記事をトピックスとして掲載しています。

これでホッとひと息……つく間もなく、作成したトピックスのアクセス状況をチェックしたり、新しい記事に目を通したりして、すぐに次の更新に備えます。

また、トピックスに最適な見出しを届けるためのライブテストを同時進行したり、FacebookやTwitterといったSNSにも記事を投稿したり。さらには、アプリの機能を使ったプッシュ通知で重要ニュースを速報する際も編集部の判断によってユーザーに随時届けられています。

そして、もう一つ重要な業務が、各ジャンルをまたいで編成される「主要」のトピックス。Yahoo! JAPANのトップページに「ニュース」として掲載され、最も多くのユーザーの目に触れる部分でもあります。こちらに掲出するトピックスは、そのシフト帯の「トップ担当」と呼ばれるメンバーが編成を担い、15~30分ごとに随時更新。8ジャンル計64本のトピックスのPVがリアルタイムでわかる社内ツールを見ながら業務にあたり、何がどのぐらい読まれているのか、いないのかを把握してトップ編成に生かしています。

みなさんは、この「主要」8本の掲載順に一定のルールがあるのをご存じですか? 上には政治や行政、防災、経済といった「硬い」内容のトピックスが置かれ、下に行くにつれてスポーツやエンタメなどの「柔らかい」内容のトピックスが並ぶようになっているのです。

これは、トピックス編集における2つの柱「公共性」と「社会的関心」に基づいて決まっているルール。スポーツとエンタメのトピックスは、PVが高くなりやすい傾向にあります。つまり、「社会的関心」が高いジャンル。しかし、主要8本は「公共性」とのバランスを考えて構成しているので、PV優先でスポーツやエンタメばかり並ぶことはありません。一方で、国政選挙のような大きなの出来事の際には8本すべてを使って伝えることもあります。

Yahoo!ニュース トピックスでは、社会全体に関わる「公共性」が高いニュースを広める使命があると考えているのです。

個性豊かなメンバーとそれぞれが持つニュースへの思い

編集部のメンバーは、新卒でヤフーに入社した人から新聞社や出版社での経験を持つ人まで経歴はさまざま。みなさん、どのような思いで日々働いているのか、話を聞いてみました。

新卒でヤフーに入社してからYahoo!ニュース トピックス編集部で実績を積んだ佐橋史直さんは、西日本新聞社との人材交流の取り組みとして2年間を新聞記者として過ごし、今年4月に戻ってきたばかりです。

「トピックス編集部では、配信いただいた記事をピックアップする立場でしたが、実際に記者として働いて、どこに・どんなふうに取材をしているのか背景を知り、記事1本1本にかける手間暇を実感しました。私が配属されたのは地域情報の部署で、基本的に全国区のニュースは扱いませんでした。ただ、その中でも全国に届けるべき情報がまだまだ眠っているとわかったのは、自分にとって大きな発見です。今後、より広い視野を持ってニュースを届けていくことで、配信各社、その先にいる記者の方々にお返しをしていけたら」(佐橋さん)

一方、人材交流で神奈川新聞社から出向中の川島秀宜さんは、逆にウェブニュースの世界から大きな影響を受けています。

「新聞記者は政治や事件など、1つの事象を深く掘り下げていく仕事ですが、Yahoo!ニュース トピックスの編集者は多くの出来事に目を向けています。ユーザーがどんなことに関心を持っているのか、何がこれから話題になるのか、ジャンルを問わず見極めなければなりません。こうした視点は、これまでの記者人生にはなかったもの。メディアのあり方を考え直す経験になりそうです」(川島さん)

大手通信社に勤めていた中上芳子さんは記者として働くなかで、ジレンマを抱えていました。

「必死の思いで作り上げた記事が読者に届いているか、手応えが得られませんでした。次第に、『どうしたら記事が読まれるのか?』ということを考えるようになり、心機一転、転職しました。以前、私がトピックスでご紹介させていただきたいと考えた埼玉新聞さんの記事は、地方紙のさらに地域面に載っているものでした。実はこの記事のトピックス、トランプ大統領の当選と並ぶほどの反響を得たんです。地方の小さな出来事でも、Yahoo!ニュース トピックスに載ることで多くの人に『自分ごと』として感じてもらえる。これまでの記者経験では得られなかった読者の目線に気付かされました」(中上さん)

そして最後に、編集部歴最長の竹野雅人さんに、トピックス編集部が大切にしている思いを聞きました。

「ユーザーに『大事なことを伝えたい』『関心事を届ける』という姿勢は、Yahoo!ニュース開始当初から一貫していると感じています。変化したのは、たとえば関連リンク。ブログ全盛期はブログのエントリー、Twitterが出てきたらツイートに直リンク、動画ならその動画を。こうしたユーザーへの見せ方・届け方の部分だけですね」(竹野さん)

「読者へ大切なニュースを届けたい」。こうした強い思いのもと、Yahoo!ニュース トピックス編集部全員が一丸となって、日々さまざまなニュースを配信しているのです。

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